冒険へ
ラドの指示で旅に必要な物を揃える。
「今回は探索や討伐じゃなくて、デールを目指すだけだ。準備が少なくて楽だな。」
ラドはそう言うが、僕とルーが思いつかなかった道具も次々と用意している。これで万端なのかは分からないが、少なくとも2人で準備するよりはよっぽど良い。
「まあ、持ちすぎるのも旅に支障がでる。後は道中で調達だな。」
「ねぇ、ゼスタ。どうしよう。兄さんが頼れる人間になっちゃった。」
「ラドは昔から頼りになってたじゃないか。ラド、本当に助かるよ。ありがとう。」
出発の日、家族や近所の人達に挨拶を済ませる。
町の出口には、シーナ、セア、ソランの3人が見送りに来ていた。
「次の冒険には、私も連れていって下さいね。」
「ラド。ゼスタとルーをよろしく。」
「…ラド。ルーがゼスタに手を出さないように気をつけて…」
「ちょっと!セア!逆でしょう!?」
ワイワイと一通り話したところで出発だ。
町が見えなくなった所で、ラドが立ち止まる。
「まず、確認しておこう。ゼスタ、ルー、今回のお前らの冒険の目的は何だ?」
「ねぇ、ゼスタ。どうしよう。兄さんがセアに殴られて記憶喪失になっちゃった。」
「ちげえよ。それにセアにやられたのは頭じゃねえ。」
「あはは。冒険の目的はデールの町に行って吟遊詩人に会うことだね。」
「そうだ。今回はデールにたどり着くことが目的だ。モンスターの討伐や探索じゃない。」
「それがどうかしたの?」
「いいか。このパーティーは僧侶の俺、魔法使いのルー、吟遊詩人のゼスタの3人だ。戦闘向きの構成じゃない。」
「でもラド、僕もラドも、それにルーも一応は剣も魔法も使えるだろう?」
「町の付近のモンスターならたとえルーの剣でも倒せる。だが、町から離れたモンスターは職業による強化がなければ倒せないほど強いやつも多い。職業に就くまでは町から離れるのが禁止されてる理由がこれだ。」
ラドは念を押す。
「ゼスタ、ルー。今回の目的はデールに無事に着くことだ。モンスターとの戦闘が目的じゃない。モンスターと戦う時に、少しでも不安があればすぐに退くこと、これだけは絶対守れ。」
「わかった。」
「わかったわ。兄さん。」
「まあ、逆にこのメンバーでも安心して倒せるモンスターは倒して行くようにしよう。ルーの魔力は伸ばすに越したことはないからな。」
ラドは任せておけと笑う。
初めての冒険で、僕とルーの両親があまり心配せずに送り出してくれたのは、ラドが付いてくると知ったからだろう。改めて、ラドが付いてきてくれたことにお礼を言う。
そうして、僕とルーの初めての冒険が始まった。