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世界を救う歌を探して  作者: でこっぱ
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ローグラン その4

 また朝が来た。


 隣に転がる2人の盗賊の死体は朽ち始めている。


 3日間何も口にしてないせいか、傷口が化膿したせいか。目が霞んできた。それよりも、熱にうなされていたはずの体が冷たくなってきている。


 寒い。体も心も凍っていく。この体が冷え切った瞬間、死体に変わるのだろう。階段を下りるように、意識が沈んで行く。死へのカウントダウンか。


 神よ、どうして父も母も駆けつけてくれないのですか。2人はギルドに依頼し、戻らない私を探させているのではないのですか。屋敷からそう遠くはないはずのこのアジトを見つけることもできないのですか。


 神よ、私を救ってはくれないのですか。



 救ってくれないのであれば



 いっその事



 魔王にでも祈ろうか。



 そう思った瞬間、私の目に光が差した。人の叫ぶ声がする。誰かの手が私に触れた気がした。



 誰かが来たのか。霞む目は、冷えた体は相手が何者かも認識できない。瞼は鉛のように重く、そのまま私は眠りに落ちた。






 


 目を覚ますと、暗い天井が見えた。3日間見続けていたボロ小屋の天井とは違う、しっかりとした作りだ。気づけば、体温は元に戻り、痛みは残っていない。

 

 私は状況を確認するため、起き上がろうとしたが、力が入らずにベッドから落ち、左頬を地面に強く打ち付けた。


 痛む頬を擦ろうとしたが、手が届かない。


 左手が数回空を切り、不思議に思い自分の左手を見ると、肘から上が見当たらない。左足、右足も、つい先日まであったはずの部分が無くなっている。


 自分の体を見まわしていると、視界にも違和感がある。左目の光を失っているようだ。


 盗賊にやられ、数日治療できず化膿するなか、3日間飲まず食わずの劣悪な環境で過ごしたことにより、体の大部分が回復魔法では治せないレベルの壊死を起こしたのだろうか。


 悲惨な現状にも関わらず、私は意外にも冷静に考えていた。あるいは、ショックが大きすぎて認識できていなかったのかもしれない。あるいは、この時既に、私は壊れていたのかもしれない。


 

 そして、自分が今いる場所を認識する。あそこに見えるのは鉄格子だ。ここはギルドの牢屋だろう。


 盗賊のアジトにいたため、私も死に損ねた盗賊と間違えられたのだろう。いや、富裕層である私と盗賊の身なりは大きく異なる。ましてや、私は子供だ。よほど勘が鈍くない限り、誘拐の可能性に辿りつくだろう。私の服が、盗賊たちの着ていたような服に着せ替えられている。おおかた、盗賊の懸賞金に目が眩んだ冒険者が、私を盗賊に仕立て上げて、ギルドへ突き出したのだろう。盗賊の懸賞金は、生死を問わず払われるが、生け捕りの方が芋づる式に盗賊たちを捕まえられる可能性がある分、いくらか高い。



 私が生き延びることができたのは、義勇でもなんでもなく、商品価値を落とさないための打算的な処理だったのだろう。賞金が変わらなければ、応急処置の回復魔法もかけられず死んでいたのだろう。





 私の意識が戻ったことに気づいた守衛が声をかけてくる。幸い、私が子供であったこと、何より、四肢のほとんどを失った私に同情的だった彼に、これまでの経緯を説明する。


 初めは私がローグランであることに懐疑的であった守衛も、ローグランしか知りえないことを知っている私の言葉を徐々に信じ始めた。



 そして、私の誘拐事件の顛末を知ったのである。

 


 

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