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世界を救う歌を探して  作者: でこっぱ
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ローグラン その2

 盗賊たちの目的は単純なものだった。


 金品目的。



 森の屋敷には腕のたつ警備を雇っているため、普段は盗賊たちも直接屋敷を襲うことはしなかった。


 しかし、その日は人質となりそうな子供たちが、護衛も付けずに屋敷の外で遊んでいた。

 これをたまたま見かけた盗賊の一人が、仲間を引き連れてきたのだ。


 私たちはなすすべもなく捕まり、目隠しをされ、盗賊のアジトらしきボロ小屋に連れてこられた。盗賊は私たちを人質に、両親から強請れるだけゆすろうとしたようだ。



 私は町の子供たちを連れてきたことを後悔した。大切な友達を、自分のせいで危険な目にあわせてしまったのだから。

 私は友達を守るため、私を誇らしいと言ってくれた父に応えるため、盗賊たちに立ち向かうことにした。


 見張りの盗賊は2人。他は屋敷に交渉に向かったらしい。


 こちらは子供ばかりとはいえ、人数はいる。加えて、相手は酒を飲みながら見張りをしている。拘束さえ解ければ、倒すことも可能だと思えた。


 しばらくして、機会が訪れた。


 1人がトイレをしに、小屋から出たのだ。そして、幸運なことに残った1人もうとうととし始めた。


 私は隙をみて、机にあった果物ナイフをとり、自分や友達の手を縛る縄を切っていった。そして、それぞれに小屋に無造作に置かれている武器を拾うように指示をした。


 私は拾った剣を、机に寄りかかって寝ている盗賊に突き立てた。これが初めて人間を殺した瞬間であった。


 残る見張りは後1人。トイレから戻ってきたところを、不意討ちで襲えば、後は安全に逃げられる。


私たちは小屋のドアの前で、息を潜め機会を伺った。


 盗賊がドアに手をかけた。ゆっくりと扉が開く。拡がる隙間をめがけて、一斉に剣を突き立てた。


 しかし、盗賊は酔いのためか、ドアを開けるときに少しよろけたらしく、剣はわき腹を掠めただけだった。

 盗賊は、その一撃で酔いも吹き飛び、状況を把握して烈火のごとく怒りだした。


 盗賊は腰に携えた剣を抜き、子供の中の1人に斬りかかった。


 友達を守らねば。その一心で、私は盗賊と子供の間に飛び込んだ。

 左手に鋭い痛みが走る。剣が腕の中に入り込み、骨で止まっているのが見えた。


 盗賊は、私の骨に食い込んだ剣を抜けないでいる。


 痛みの中、私は安堵した。勝利を確信した。後は武器を失った盗賊に、だれかが攻撃を加えれば終わる。



 その時、私は背中に衝撃を受けた。



 地面に転がり、盗賊の足下で顔を上げて、ようやく、私は先ほど庇った相手に突き飛ばされたのだと理解した。



 あの屋敷の子供はそいつだ。俺たちは関係ない。人質にとるのはそいつだけでいいだろう。

 私を突き飛ばした子供はそう言っていた。見回すと、彼を非難する子供はおらず、皆、同意するような顔をしていた。



 そして、蜘蛛の子を散らすように、子供たちは逃げ出した。



 私ひとりを残して。



 そこから先の記憶は曖昧だ。



 気がつくと、私は小屋の中で、盗賊2人の死体の横に倒れていた。トイレに行っていた盗賊はどうやって倒したのかも覚えていない。ただ、結果を見れば、私は両足を犠牲に辛くも勝利をしたようだった。左足にはまだ、盗賊の剣が刺さっている。



 既に感覚のなくなった左手と、両足にあいた剣による穴に、右手と口を使い止血をする。



 とても動けそうになかった。

 私は小屋のドアを見つめ、ボーッとしていた。


 次にあのドアが開くとき、私の命はどうなるのだろうか。



 子供たちの誰かが思い直して帰ってきてくれるだろうか。

 あり得ない。あの目は、誰も私の心配などしていなかった。



 全ては、交渉から戻った盗賊たち次第か。


 この状況を見て、激怒して殺されるか。人質として生かされるか。



 私は恐怖で涙し、父に、母に、神に、天使に祈り続けた。

 母の言っていた、神の加護を信じて。

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