捨て身の反撃
盗賊たちはローグランの登場に萎縮してしまっている。
像へ誤って攻撃し、ローグランの怒りを買うことを恐れてか、像を背にした僕たちに攻めこんでこない。
しかし、グローブの男と槍の男は別だ。
この二人は躊躇なく、攻撃を仕掛けてくる。
自分たちが像を傷つける可能性は微塵もないと考えているんだろう。
自然と、グローブの男は僕とルーが、槍の男はソランとセアが対峙する形になった。
「ルー、オルタ!発動しなくてもいい。魔法を唱え続けてくれ。」
「わかったわ!」
「うん!」
僕がグローブの男に攻撃を続ける間、ルーとオルタはグローブの男に向かって魔法を唱える。
魔法を唱える度に、槍の男が間髪いれずに『魔力妨害』を使うので、もちろん魔法は発動しない。
ただし、牽制としては十分だ。
槍の男は、ソランとセアの攻撃を避けながら、ルーとオルタの魔法を妨害しなければならない。
グローブの男は、槍の男が『魔力妨害』のタイミングを間違えた場合、ルーとオルタの魔法が飛んでくる可能性があるため、注意しながら、僕と戦っている。
しかし、ここまで条件を整えても、僕たちはじりじりと圧されていた。
グローブの男の体術は、人間離れしている。
ルーとオルタの魔法が放たれかねない軌道の直線上には決して立ち止まらないように立ち回りながらも僕の剣を避ける。
それどころか、こちらの攻撃の隙を縫い、鋭い反撃まで繰り出してくる。
槍の男もソランとセアから槍で間合いをとりながら、『魔力妨害』を使う。こちらは、グローブの男が僕たちを倒すまで、無理をせずにやり過ごすつもりらしい。セアはやられた時のダメージが残っているとはいえ、槍の男も余裕をもって立ち回っているように見える。
「……やっぱり、魔法が使えないのはきつい。」
「そうだ……みんなが魔法が使えない今、僕がやらなきゃいけないんだ……」
ソランがぽつりと呟き、道具袋から液体を取り出した。
「……ソラン、何するつもり?」
「セア、僕はみんなの中で一番弱い。みんながピンチの時くらい、役に立ちたいんだ。少し、僕に任せてくれないか?」
そう言うと、ソランは液体を飲みほす。
「うあぁあー!くらえ!」
ソランは槍の男に向かい駆け出した。
槍の男は、突っ込むソランをいなしながら間合いを保つ。
「なんだ?破れかぶれで来ても無駄だぞ。」
槍の切っ先で、ソランの頬や腕が傷ついていくが、ソランの前進は止まらない。
「馬鹿め、動きが荒すぎて隙だらけだ。くらえ!」
ソランが大きく踏み出したところを槍の男が踏み出す。
男の槍はソランの左腕を貫いた。
「どうだ?痛えだろう?」
「ぐぅ、ぐ。痛い、痛いよ。……でも、みんながやられるのは痛いのより嫌なんだ!」
ソランは痛みに顔を歪めながら、左手で槍を掴み、右手を道具袋に突っ込んだ。
男は警戒し、槍を抜いて距離をとろうとした。
しかし、ソランは槍を離さない。
「な、槍が抜けねえ!お前、どこにそんな力が!」
男はソランの腕から槍を抜こうと、ソランに蹴りをいれるが、槍はびくともしない。
「さっき飲んだのは回復薬だ。回復薬の傷を塞ごうとする力で刺さった槍を絞めつけてるからね。けっこう凄い力だろう?」
ソランがにやりと笑い右手を振るう。
道具袋から取り出した薬品が槍の男の顔に当たり爆ぜた。
槍の男は顔から煙を出しながら声もあげる間もなく倒れた。




