再戦
どのくらい走り続けただろうか。
足が嫌な音をたてている。
筋肉が断裂したか、関節を痛めたか。
『アイオの歌』で体を強化しながら無理に動かし続けている。
ソランの持つ回復薬には限りがある。これから、僕たちは盗賊たちと戦わなければならない。
ぎりぎりまで使うわけにはいかない。
「ゼスタ!セアの魔力の跡が消えそう!」
「はぁっ、はぁっ!くそう!間に合え!間に合えぇ!」
深い森の中は、霧が少しずつ濃くなっている。
僕たちの追跡を拒むかのようだ。
「あ、あ、あぁ……。」
オルタが悲痛な声をあげた。
「ん、ごめん……ごめんね、ゼスタぁ、ソラン……。セアの魔力の跡……消えちゃった。私、これ以上わからない……。」
オルタは僕の肩ですすり泣き始める。
僕とソランは走る速度を少しずつ落とし、やがて止まる。
僕はそっとオルタの頭を撫でる。
「はぁっ、はぁっ……ありがとうっ、オルタ……大丈夫だよ。」
僕はそう言って、霧を越えた先にくっきりと浮かぶ建物を見た。
「オルタのおかげで、追い付けたみたいだ。」
門の向こう側、盗賊たちの馬車。
馬車から連れ出される、大きな花飾りを付けたブロンドの髪の少女と、小柄な青い髪の少女。
あぁ、間に合ったんだ。
ルー、セア。無事で良かった。
「ソラン……回復薬を。」
「あぁ、ゼスタ。」
気づけば足は血まみれだ。
僕とソランは回復薬で、走り続けてぼろぼろになった体を回復させ、臨戦体勢を整える。
「行こう!ルーとセアを取り戻すんだ!」
僕は再び、『アイオの歌』を使った。
槍の男が魔力妨害を使えば、直ぐに効果を失うだろう。
でも、これは奇襲のためだ。
最初に一撃でも入れれば御の字だ。
目標は、槍の男の魔力妨害の無効化、ルーとソランの解放、『アイオの歌』で全員を強化して逃走。
今の僕たちには、それが精一杯だろう。
僕とソランは互いに目で合図し、門の付近まで近づく。
グローブの男が、気味の悪い像を指差しながら、ルーに何かを話している。
ルーとセアは逃げる隙を探っているようだけど、グローブの男と槍の男は何気なく話しながら阻止をしている。
やっぱり、あの二人がやっかいだ。
少しすると、グローブの男は館のドアまで進んだ。
どうやら、館の住人を呼ぶようだ。
今だ。
ソランもこちらを見て頷いている。
僕たちは魔力操作で、最大まで強化した魔法を撃ち込み、同時に門の中へと飛び込んだ。




