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世界を救う歌を探して  作者: でこっぱ
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森の中の屋敷

どれくらい時間がたったんだろう。


揺れる馬車の中、私とセアに向かいグローブをつけた男が話しかけてくる。


ゼスタやセアを倒した相手だ。


「もうすぐで到着する。抵抗するなよ。」



この男は私たちを売ると言っていた。

どんなヤツが人間をお金を出してまで手にいれてるんだろう。

グローブの男はしきりに、これから私たちを売る相手のことを気持ちわりぃと言っていた。

そもそも盗賊たちから素性もわからない人間を買ってるんだもの、ろくな人間なわけないじゃない。



がたん、と馬車が大きく揺れて止まった。



「降りろ。」


私とセアはロープを繋ぎ直され、無理矢理立たされた。

逃げ出す隙を探っていても、グローブの男と槍の男がそれを許さなかった。

私たちは馬車の外に引きずり出された。


馬車から降りて目に入ったのは、暗い森の中に不気味に佇む大きなお屋敷。

ツェグの町では見たこともないほど、立派な建物だ。

でも、気持ち悪いほどに、人の気配は感じない。


大きな門を越えた先には、金の飾りを施した豪華な像がいくつも見えた。

像はみんな首から上が見当たらない。

一際大きな、一体の像を除いて。


「気持ち悪ぃだろ?」


グローブの男はニタニタ笑いながら、私に聞いてくる。



気持ち悪い……と言うよりも恐い。


庭にいくつもある像は、首から上を破壊されていた。

ある像は火の魔法で焼かれたのか、焦げた形跡がある。

ある像は鉄でできた大きな槍のような物がいくつも突き刺さっている。

ある像は何か大きな力で握り潰されたかのように。

壊された像は天使か何かを型どっていたのかもしれない。



そして、ただ一体は、完璧な姿を保っていた。

手入れもされていない屋敷の中、その像だけは丁寧に磨きあげられている。

その像は、私の目には異形の怪物にしか見えなかった。

像の左目から伸びた触手のようなモノが左半身を覆って、地面まで突き刺さっている。

左半身を覆う触手は、様々な人やモンスターの首をぶら下げている。

触手は背中側にも伸びて、大きな翼のようなものを形成している。

触手に蝕まれ痛々しくも見える像の顔は恍惚の表情を浮かべている。

その像に対してのみ、一目見てわかるほど注がれている異常な愛情。



「こいつが、ここの屋敷の主人が崇拝する神なんだとよ。他にも『魔王様』とか呼んだりしてやがったな。」



あぁ、おかあさんに聞いたことがある。

世の中には、魔王崇拝をする人間がいることを。

勇者に倒された、悪いヤツをどうして崇拝なんかするんだろう。



「おい、お前。『冒険者殺し』って知ってるか?」


グローブの男は、つい先日、行商から聞いた言葉を口にする。



「この屋敷の主人が『冒険者殺し』だ。正確に言えば、冒険者を捕まえてくれば、あいつに金を貰えることを知った俺たちのような盗賊やゴロツキや町の悪党、全てが『冒険者殺し』とも言えるな。」


つまり、『冒険者殺し』とは、この屋敷の主人のお金に目が眩んだ不特定多数の犯罪者たちだったってこと?

だから、ギルドは正体を掴み損ねていたんだ。

実行犯が特定の人間かモンスターと勘違いしていたから。


冒険者を襲う犯罪者を捕まえても、それは枝葉でしかない。

根っこにいたのは、誰にでもお金を払うこの屋敷の主人。


黒幕……と言うよりも、屋敷の主人が異常な信仰を満たすために行動した結果、世間が『冒険者殺し』というものを造り出してしまったのかもしれない。



「まぁ、『冒険者殺し』と呼ばれるからには、つまりお前らの行く末はそう言うこった。残念だったなぁ。」


グローブの男は、私たちにそう言い捨て、屋敷のドアノッカーを鳴らした。

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