決意
ルーが目を覚ますと、ガタガタと揺れる視界に見知らぬ男女が写った。
体を起こそうとするけど、動かない。
喋ることもできない。
ぼーっとする頭で、自分の状況を整理する。
そうだ、たしか盗賊団と戦闘になって、魔法を封じられて、お腹を殴られて……。
そこから意識はない。
捕まったのかな?
考えているうちに、頭がはっきりとしてくる。
そこでようやく、自分が馬車の中で縛られ、口に布を詰められていることに気づく。
魔法も使えない。
待って、私が捕まったってことは他のみんなは?
私は縛られた体をくねらせて、馬車の中を見回した。
人相の悪い男女の中に、一人だけ、見慣れた青髪の小さな少女が私と同じように縛られていた。
セア!と呼ぼうとしたけど、口に詰められた布が邪魔で、上手く発声できなかった。でも、漏れたうめき声に、セアが気づいたみたい。
セアは縛られているにも拘わらず、器用にジャンプして私の隣に来た。
盗賊たちは、突然動いたセアに一瞬警戒したみたいだけど、そのままセアが大人しく座ったのを確認すると、また自分の持ち場に落ち着いた。
セアがいたことで、一瞬ほっとしたけれども、他のみんなの姿が見えないことに気づいた。
ゼスタは?ソランは?オルタは?
記憶を必死に辿っていると、さっきの戦闘で、盗賊たちに魔法を撃ち込んだことを思い出した。
おとうさんやおかあさんには、盗賊たちと戦わなければならない状況になったら躊躇わず攻撃しなさいと教えられてきた。
町のみんなも、それが当然だと教えられている。
そうしないと、盗賊たちに略奪のために殺されてしまうから。
でも、改めて馬車の中で一人一人の顔を見ていると、今更ながら、私は人間と戦ったんだと理解した。
モンスターとの戦闘とは違う感覚。
私は、次第に恐くなってきた。
盗賊たちと戦うことは仕方ないことだと思う。
倒さないと殺されるのが当たり前なんだから。
でも、盗賊たちは自業自得とは考えないと思う。
逆恨みや復讐でゼスタたちが酷い目に、もしかしたら殺されたかもしれない。
いや!
私とセアはこれからどうなるんだろう。
いや!
私の考えは悪循環を重ねて、体が震えてきた。
自然と涙が溢れてきた。
こわい。こわい。こわい。ゼスタ、兄さん助けて!
ぶるぶると震えていると、ふわりと優しい匂いがして、肩に青い髪がかかった。
顔をあげると、セアが私の目を真っ直ぐに見てる。
セアの口は塞がれているのに、「大丈夫。」と言われた気がした。
セアは私と変わらない年齢で、背はこんなに小さいのに、いつも前を見つめて、自分の信念を持って行動してる。
盗賊たちに捕まった今も、何も諦めたりなんかしていない。
ゼスタたちの無事を微塵も疑ってもいない。
セアの目を見て、私は気づいた。
小さい頃から、弱い私は、セアに憧れていた。
ただ、憧れていただけだった。
でも、冒険に出て、オルタと出会って、魔力操作を覚えて、どんどん強くなっていくなかでふと思った。
もしかしたら、セアに勝てるかも。
そして、自分の本心がわかった。
私は本当は、セアに負けたくないんだ。
セアみたいになりたい。セアよりも強い人間になりたい。
大事な親友だけど、ライバルにもなりたいんだ。
強くなろう。
魔力妨害なんかに負けないほどの魔力操作を身に付けるんだ。
みんなを守れる、強い魔法使いに。
待っててね、セア。
すぐにあなたに追い付くから。
待っててね、セア。
あなたの親友として恥ずかしくないくらい強くなってみせるから。
ありがとう、セア。
意思を固め、真っ直ぐとセアを見ると、セアはゆっくりと頷いて、にっこりと笑った。
セアに勇気づけられ、私もゼスタたちの無事を信じてみることにした。
それなら今は、私たちのことに集中しよう。
まずは、無事に盗賊たちから逃れないと。




