待ち伏せ
行商たちと出会ってから数日、モンスターたちには大して苦戦をすることもなくエーカへの道を進んでいた。
「んー?ゼスタ。何かあの辺り変な感じがする。」
空から周辺を偵察していたオルタがそんなことを言いながら降りてきた。
「変ってどんな感じ?」
「道を挟むようにして、草むらに魔力がいっぱい見えるの。多分、人間だと思う。」
モンスターではないらしい。
ということは、ギルドからのモンスター討伐依頼を受けた冒険者たちかもしれない。
「どう思う?ソラン。」
「普通に考えれば冒険者かな。でも、道を挟んでってのが気になる。モンスターは人間の作った道を通るとは限らない。つまり…」
待ち伏せしている対象は、確実に道を使うであろう相手、人間ということか。
「…盗賊?倒す?」
「ちょっと、セア、まだわからないじゃない。この前、行商さんが言ってた『冒険者殺し』を討伐しにきた冒険者かもしれないわよ。」
人間を狙っているなら、セアの言う通り盗賊の可能性が高い。しかし、ルーの主張通り、ギルドの依頼を受けた冒険者の可能性もある。
盗賊であれば、戦闘経験や人数の差でこちらに部が悪い。不意討ちでもすれば、有利になるかもしれないが、相手が冒険者である可能性も捨てきれないまま攻撃はできない。
冒険者であれば、待ち伏せの邪魔をしてしまうかもしれないし、最悪、勘違いで攻撃されるかもしれない。
どちらにせよ、相手が気づいていない今、迂回するのが吉だろう。
迂回するため、再度オルタに上空から見渡してもらいながら、安全に迂回できそうなルートを確認する。
街道から離れれば、モンスターと遭遇する可能性も上がるが、背に腹はかえられない。
僕を先頭に草むらに割って入ろうとしたところで、オルタがあっと声をあげる。
「ゼスタ!馬車が来たよ。私たちが来た方向から!」
しまった。タイミング悪く行商が来たようだ。
このまま進めば、盗賊が待ち構えているかもしれない道へ突っ込んで行ってしまう。
馬車を引いた一行に危険を報せるべく、慌てて街道へ引き返した。
「すみませーん!」
馬車は僕たちの姿を発見すると、慌てて止まる。
馬車からは男2人が顔を覗かせており、奥には大量の荷物が見える。やはり行商だったか。
「どうした?」
馬に跨がったいぶかしみながら男性がこちらに訊ねてくる。
「この街道を少し進んだところ、人が隠れてるみたいなんです。もしかしたら、盗賊かもしれない。」
馬に跨がった男は、馬車の中の男2人を見やり、合図を送った。
「なるほど。この馬車の積み荷を狙って襲ってくるかもしれないってことだな。だが、あそこにいる連中は大丈夫だ。」
「あそこにいる人たちが誰か知ってるの?」
「ああ、お嬢ちゃん。あいつらはこの馬車を襲ったりなんかしない。」
馬上の男は馬からすっと降りると、ルーに近づく。
馬車の中にいた男が大きな音で笛を吹いた。
「でも、お前らは襲われちまうかもなぁ。」
男たちはそれぞれ武器をとり出す。
「なんで待ち伏せがバレたんだ。」
「しるか。どいつかヘマしやがったんだろ?」
「とりあえず、こいつらを黙らせるぞ。せっかく行商から荷物を奪ったところなのに、まーた仕事だ。面倒くせえ。」
馬車の男たちは、行商などではなく、略奪し終えた荷物を運んでいた盗賊だった。
待ち伏せしていた奴等も、笛の音で続々とこちらに向かってくる。
仲間が別にいるとは考えてなかった。
僕の判断ミスだ。
避けれたはずの盗賊との戦闘が無情にも始まってしまった。




