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世界を救う歌を探して  作者: でこっぱ
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水車小屋にて

「ほほ、それではお二人は駆け出しの冒険者さんですかな。」


老人は外套を脱ぎながら聞いてくる。

外套の下からは見事な筋肉が露になった。


「えぇ、わかりますか。」

「いや失敬。見た感じ齢15くらいに見えもうしたので。」


老人はかかっ、と笑いながら腰をどかんとおろす。


「よかったらどうぞ。」

ソランはいれたばかりの薬草茶を老人に勧める。


「うむ、ありがたくいただこう。」

老人は懐から銀の細工が施された食器を取り出す。


「高級そうな食器ですね。」

「ああ、これは私のお気に入りでしてな。やや、失敬。自己紹介もまだでしたな。」


老人は髭をさすりながら、僕とソランを見やる。

たき火の明かりでハッキリとしたその顔見ると、左目は傷を受けて光を失っているようだ。


「私の名はディーブラウ。両替商をしておりますぞ。」

「僕はゼスタ。ツェグの町出身でついこの間吟遊詩人になったところです。」

「僕はソラン。ゼスタと同じくツェグで薬師になりました。」


それぞれ自己紹介を終えると、2階から声が聞こえてくる。


「ねぇ、ゼスター?誰かいるのー?」

「ああ、ディーブラウさんという人が、僕らと同じように雨宿りをしにきたんだ。」


「おや、他にもお連れの方がおられるのかな?」

「えぇ、あと女の子が3人、2階で服を乾かしています。」


「では、上まで挨拶に行くのは無粋ですかな。お嬢様方、雨があがるまで下で失礼しますぞ。」

「私たちの小屋というわけでもないですし、お構い無く。」


ディーブラウはかかっ、と笑い僕らとの会話を続ける。

「上におられるお嬢様たちも、ゼスタ殿とソラン殿と同じくらいの年なのですかな?」

「ええ。15才になったところです、年齢がわからないやつもいますが。みんな冒険者になりたてです。」


「ふむ、そんな若い面々で冒険というのも珍しい。」

「ディーブラウさんこそ、一人旅ですか?」


「いや、私は長いこと様々な町を回っておりますゆえ、一人の方が動き易いのです。」

「長いこと?」

「50年を越えてから数えるのはやめてしまいましたな。」


両替商に似つかわしくないあの筋骨隆々とした姿は歴戦の証なのだろう。


「して、ゼスタ殿、吟遊詩人とはまた珍しい職業ですな。ツェグの町には吟遊詩人はいないと思っておりましたが。」

「えぇ、実は勇者の物語を読んで、吟遊詩人を希望したはいいんですが、肝心のスキルが覚えられなくて。」


「ふむ、親が吟遊詩人だったり、先祖から代々受け継いだ歌があるわけではないのですな。」

「えぇ、スキルを教えてもらうためにみんなに手伝ってもらって冒険してるんです。」


「ほう、しかし15になってすぐに旅とは、まさに冒険ですな。私は無茶な人間は好きですがな。ソラン殿はどうして薬師を選んだんですかの。」

「僕はそうした方が、みんなの役に立てると思ったから。」


「ソラン殿は自分を抑えておりませんかの。いや、これは立ち入りすぎですかな。しかし、老婆心ながら言わせて貰いますと、自分の地位は消極的に得るものでなく、勝ち取るものですぞ。」


ディーブラウはそう言うと、鞄の中から種子を取り出す。


「ソラン殿、これは薬草茶のお礼ですぞ。お受け取り下され。」

「えっ、あ、ありがとうございます。」


「それはアースシードと言いましてな。薬師として知識をつけていれば、使用方法はいずれわかるでしょう。知った上で、必用を感じればお使いくだされ。」


ディーブラウはまた、かかっ、と笑う。


「実は、私はある貴いお方に使えておりましてな。その方の不安の芽を摘んで東奔西走しているわけですな。謂わば努力で今の地位を勝ち取っているのですぞ。ソラン殿にも、自分の気持ちに素直に、居場所を勝ち取る気概を持ってほしいものです。」

「はい。」


ディーブラウの言葉に、ソランも思うところがあるのだろうか。

うつむいたまま、小さく相槌をうっている。


「やや、また出過ぎたまねを。年をとると話が長くなっていけませぬな。老人の戯れ言と思って聞き流してくだされ。」


ディーブラウはそう言って立ち上がると、外套を手にとる。


「え、もう行くんですか?雨はまだ降ってますよ?」

「先を急ぎますのでな。それに、この雨はもうあがるでしょう。長いこと生きているとわかるものですぞ。久し振りに若い方とじっくり話ができて楽しかったですぞ。ソラン殿、薬草茶をどうも。」


ディーブラウはドアに手をかける。


「また、会う機会があれば、ゆっくり話ましょうぞ。その時は上にいるお嬢様方も是非に。」

「ええ。ディーブラウさん。また、是非。」

「アースシード、ありがとうございました。これのこと調べてみます。」


ディーブラウはかかっ、と笑うと、雨の中を走りだした。

ディーブラウの言った通り、数分後には雨が上がり始めた。


「何か、嵐のようなおじいさんだったね。」

「うん。」


ディーブラウが去ってしばらくして、ようやく、服の乾いたルーたちも降りてきた。

ルーたちに、薬草茶を渡しながらディーブラウがどんな人物だったかを話したが、そんなムキムキなおじいさんいるわけないと一蹴されてしまった。

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