自分にできることを
セアとソランはシーナに報告に来ていた。
「…シーナ。そういう訳でセアとソランは15才になった。」
「わっかんないですよ?セア。」
ソランがセアに代わり経緯を説明する。
「えぇー。じゃあ私が職業に就くの一番最後になっちゃったってことですか?」
「…そう、セアの方がシーナよりお姉さん。」
頭を抱えるシーナの肩にセアがぽんと手を置く。
「まぁ、やっちゃったものは仕方ないです。それに、私が職業に就く時期が変わるわけじゃないですしね。納得はしてないですけど。」
「まぁまぁ。セアは焦ってたんだよ。シーナみたいに僧侶希望だったら、戦闘経験の差があっても回復に徹すればいいけど、セアはバリバリの戦闘職希望だからね。」
シーナはラドと同じ僧侶希望だ。後方に徹すれば、回復といった役割を持てるシーナは、置いていかれる心配は少ないだろう。
セアの希望する前衛は別だ、実力が違えば、前に出ても足手まといになりかねない。
「ソランがそういうなら、まぁ、わかりました。それで、お二人はなんの職業に決めたんですか?」
「えっと、僕は薬師になろうと思う。」
ソランはいつも、一歩引いたところで行動する。
勇者ごっこでは、いつも誰も選らばなかった役をやっていた。
何よりもみんなのバランスを重視しているのだろう。
薬師もあまり目立つ職業ではないが、僧侶では対応できない病気の治療や、魔法や剣が効きにくい相手への薬品での攻撃もできる。
パーティーの不得意な部分を潰す役目を買ってでてくれているのだろう。
「セアは戦士ってことでいいんですよね?」
シーナの問いにセアは首を横に振る。
「…ゼスタに剣で勝てず、最後の勝負も結局負けた。それで、セアは思った。セアは小さいから、戦士になっても体格で負ける相手には力押しで勝てないかもしれない。セアはセアに合った方法を選らばないとだめ。」
「…孤児院の院長が昔言ってたのを聞いたことがある。エンチャンターっていう職業があるらしい…」
「エンチャンター?」
聞いたことがない職業に、シーナは首を傾げる。
「エンチャンターは、物に魔力を付加することができるみたいです。商人が商品に付加価値をつけるためになることがあるみたいですが…」
冒険者志望の人間は、大抵が戦士か魔法使いになる。
そうして、自分が戦士になれば魔法使いと、自分が魔法使いになれば戦士とパーティーを組み、不得意分野を補う。
エンチャンターは、戦闘職とするには中途半端と見られがちだ。
しかし、セアは敢えてエンチャンターを選ぶ。
セアの小柄な体格では、戦士として大成できない。
セアの魔力量では魔法使いとしての延びしろも見込めない。
自分独自のやり方を見つけて強くならなくてはいけない。
もともとトリッキーな戦い方をするセアは、エンチャンターで魔力を乗せた武器で攻撃の決定力をあげる方法を選んだ。
「セアでも色々考えるんですねぇ。」
「…シーナ。その発言は失礼だと思う。」
セアは、シーナの物言いにむくれる。
「じゃあ、シーナ。僕たちは職業登録所に向かうよ。」
「えぇ、そうだ。ゼスタたちが帰ってきたらセアとソランのお祝いも開かないといけませんね。」
シーナがそう言うと、ガタンと音がした。
3人が音のした方を見ると、隣の席の女性が椅子を倒して立ち上がっている。
「ゼスタ?あなた今ゼスタって言った?」
どこかで見たことのある、長身の女性がこちらに声をかけてきた。




