証拠捏造
「…ソラン。起きて…」
セアに揺り起こされて、ソランは目を覚ます。
「あれ、セア?どうしたの?」
ソランはセアにしょっちゅう振り回されているので、明け方に起こされても動じない。
「…ソラン。セアはゼスタやルー達と同じパーティーがいい。ソランはどう?」
セアは前置きなどをすっ飛ばして話を始める癖がある。
悲しいかな、ソランは付き合いが長いため、セアが何を言いたいかわかってしまう。
孤児院に来た時期がほぼ同じ、年頃も近いため、一緒にいる期間が長く、自然とソランはセアの保護者とみなされていた。
ソランは溜め息をついて答える。
「ゼスタ達は一緒に冒険したいって言えば、待っててくれると思うよ?」
セアは首を横に振る。
「…それはそうだと思う。でも、2人の足を引っ張ったり、冒険を遅らせたりするのは嫌…」
セアは負けず嫌いだ。仲間達へ後ろめたい気持ちを持っていたくないのだろう。
かといって、2人のためにパーティーへの参加を諦めることも嫌なのだ。
「気持ちはわかるよ、セア。でも、職員の人達が認めてくれるまで、町の外には出れない。僕も一緒に行きたいとは思うけど、すぐに15才にはなれないんだよ。」
「…ソランも同じ気持ちってことでいい?」
「そりゃあ、ゼスタ達と一緒にやっていけるならそれが一番だと思う。」
「…わかった。じゃあ、すぐに15才になろう。」
「え?」
さすがのソランでも、セアが何を言っているのかわからなかった。
「ごめん、セア。どういうことかわからないよ。」
セアの考えはこうだ。
セアもソランも、はっきりとした年齢がわからない。わからないから、職員に適当に見た目で年齢を決められてしまう。
それなら、年齢をはっきりとさせればいい。
嘘でもなんでも、既に15才になっていることにしてしまえばいいのだ。
どうせ誰もわからないんだから、問題ないだろう。
ソランは呆れたが、全て職員に言われるがままだった自分が、職員を欺いて大人になることを想像すると、少しわくわくした。
「しょうがないな、セアは。」
ソランは共犯になることを決めた。
明け方、セアは早速行動を起こした。
職員の控え室に飛び込み、記憶が戻ったと騒ぎたてた。
もともと記憶を失ってなどいなかったのだが。
粗筋はこうだ。
セアの村がモンスターに襲われた日、セアはちょうど誕生日だった。
しかし、両親が目の前で襲われたことで、記憶を閉ざしてしまった。
そのせいで、今まで自分の年齢はわからなかったが、昨日の晩に突然記憶が戻った。
昨日は村が襲われたのと同じ日。
村が襲われた日から年を数えると、昨日、自分はちょうど15才になったのだ。
冷静に聞いていれば、穴だらけの話かもしれない。
しかし、明け方に乗り込み、混乱させた上でセアは職員を勢いだけで納得させ、15才を認める書面まで手に入れた。
次いで、ソランの番だ。
ソランはセアのように、勢いで乗り切る自信はないので、数日かけて準備した。
まずは、市場で適当なプレートを購入した。
そのプレートに自分の名前と、ちょうど15年前のその日の日付を掘る。
プレートを火で炙り酸化させて、砂利で引っ掻き傷をつけた。
煤けたプレートを握りしめ、職員に相談する。
「僕がこの町に来る時に持っていた荷物にあった、このプレート。汚れていてずっと気づかなかったんですが、ここに文字が…」
汚れたプレートに書いてあるのは、ソランの名前と日付。
職員の一人が、これはソランの生まれた日じゃないか?と言い出した。
その職員も、自分の子供の名前と誕生日の入ったアクセサリーを子供にプレゼントしたことがある。
それを知っていたソランが、プレートを用意したのだが、その職員は自分が生まれた日だと見抜いたんだと他の職員に言いながら、15才を認める書面を用意してくれた。
こうして、セアとソランは15才になった。




