帰還
1週間ほどギルドでの依頼をこなしていくと、そこそこ資金が貯まったので、ツェグの町に戻ることにした。
「ありがとう。オルタちゃん、皆さん!またデールの町に来てくださいね。絶対ですよ。」
見送りに来てくれた、アーノとアイオに別れを告げ、デールの町を後にする。
帰りは順調に進むことができた。
2週間ほどかけてツェグの町の近くまできている。
「ねぇ、兄さん。ツェグに帰ったら兄さんのパーティーに戻るの?」
「あぁ。戻る頃には俺のパーティーの戦士も里帰りを終えて戻ってるだろうしな。」
「ん?どういうこと?」
「オルタには言ってなかったっけ? ラドは本当は別のパーティーに所属してるんだけど、僕たちが心配でついてきてくれたんだ。」
「えー?じゃあツェグに着いたらラドとお別れなの?」
「まぁな。けど、パーティーは別々だが、同じ町に住んでるんだからしょっちゅう会えるだろう。」
「うー…」
オルタはラドとせっかく仲良くなれたのに、別行動になるのが寂しいようだ。
僕たちもラドを頼れなくなるのは大変だなと考えていると、ルーが突然叫ぶ。
「ねぇ、ゼスタ!あれ!」
ルーが指差す方を見ると、少女が巨大な猪に襲われているところだった。
猪は少女に正面から突進を仕掛ける。
「あぶないっ!」
思わずそう叫んだが、少女は横に半身をずらして猪の攻撃を軽く避けた。
猪はすぐに踵を返して、再度、少女に襲いかかる。
少女はトンっと小柄な体を宙返りさせ、青い髪を揺らしながら猪を飛び越えた。
「ねぇ、あれ、セアじゃない?」
確かにセアだ。
よく見れば、セアから少しはなれた場所にソランと、もう一人、長身の女性がいる。
セアも僕たちに気づいたようだ。
くるりと猪に背を向けて、こっちに手を振ってくる。
「あ、馬鹿っ!あいつ!」
猪はセアの背後から突進をしてきている。
僕たちは慌ててセアの元へ駆けつけようとする。
猪の牙がセアに届くきかけた時、セアがゆらりと振り向き片手剣に手を添えた。
セアが剣を振るうと、猪は首を地面に落とし数歩走った後、崩れ落ちた。
「す、すごい。」
「セアのやつ、めちゃくちゃ強くなってねえか?」
セアはビッと剣についた血を払うと、こっちに向かって走ってきた。
「…ゼスタ、ルーお帰り。…ついでにラドも」
「おい、ついでってなんだよ!」
セアに遅れてソランと長身の女性もやって来た。
「お帰り、3人とも。」
「お帰り。ラド、早速だけど説教しなくちゃね。」
長身の女性はラドの耳を引っ張って連れていく。
思い出した。女性はラドのパーティーの戦士をやっている人だ。
「なんかね、ラドがパーティーの戦士が里帰りしているから、ゼスタとルーに付いていくって言ってたでしょ?あの人、生まれも育ちもツェグだから、里帰りもなにもないんだって。」
ソランが説明してくれる。
どうやら、僕とルーだけで冒険させるのは危険だと判断したラドが、その場で適当な理由を作ってついてきてくれたようだ。
「…ラドは重度のシスコン…」
「ゼスタに対してもだから、ブラコンの気もあるんじゃない?」
セアとソランは、ラドが説教されている様を見て笑う。
しばらく、戦士の女性と行動していたらしく、女性寄りの意見なようだ。
ともかく、初めの冒険を終えて、無事にツェグまで戻ることができたみたいだ。




