次の目的地
ギルドから報酬を受け取った後、食事をとることにした。
「思いの外成果があげれたから、今日は良いものを食おう。」
ラドに促され、僕とルーは各々食事をとる。
ちなみに、オルタは水を飲むだけで、食事をしているのを見たことがない。
ルーの頭にくくりつけている花の中で寝るだけで元気が出るそうだ。
「ルーは魔力操作にずいぶん慣れてきたみたいだね。」
「まだ何となくだけどね。」
ルーが言うには、今までは魔法を使うと魔力がすっと流れ出る感覚だったのが、魔力操作によって水鉄砲で発射しているような感覚になるらしい。
同じ魔力量を使用しても、射出する圧力が違うようだ。
それが魔法の効果に反映されている。
「んー、ラドは戦闘中は魔力操作できるのに、何で普段はできないの?」
「それはあれだ、本番に強いヒーロータイプだってことだ。」
「ヒーロー?なにそれ?」
ラドは鞄の中に隠れているオルタと話している。端から見れば、鞄に喋りかけている危ない人に見えなくもない。
サラダを運んできたお姉さんがその光景をみて眉をひそめている。
「ねぇ、ゼスタ。『アイオの歌』の効果もすごかったね。」
「ルーの魔力操作と合わせると火の魔法がかなりパワーアップしてたよね。」
吟遊詩人のスキルはいくつか調べたことがあるが、『アイオの歌』というのは聞いたことがなかった。吟遊詩人は、酒場で稼ぐ人間が多いため、支援系とはいえ戦闘向けのスキルは珍しい。
注文したメイン料理がテーブルに並び、各々かぶりついていると、小さい男の子が近づいてきた。
「あ、頭にお花を付けたお姉さん達いたー。」
「ん?私たちに何か用?」
「アイオのお姉ちゃんが探してたよー。」
「アイオさんが?」
何か用事があるのだろうか?
食事が終わったらアイオの家を訪ねることにしよう。
男の子にお礼をしておく。
食堂を後にした僕たちは、小鳥の表札のかかったアーノとアイオの家に来た。
「すみません。アイオさんいますか?」
ノックすると、家の中からアイオが出てきた。
「食堂で男の子にアイオさんが僕たちを探しているって聞いて…」
「あ、あの子が伝えてくれたんですね。わざわざごめんなさい。ちょっと父が伝えたいことがあるみたいで。」
アイオがアーノを呼びにいく。
アーノは手に紙とペンを持っている。
紙は高級品だ。
地図や本にも紙が使われているが、これらは品質は粗悪でもそこそこの値段がついている。
声を出せないアーノは、僕たちに何かを教えるために、わざわざ紙を買ってきてくれたようだ。
アーノが筆談で教えてくれたのは、アーノの知り合いの吟遊詩人の情報だった。
僕が他にスキルを覚えたいのであれば、その人達を訪ねれば良いとのことだ。
エーカの町にいる、アーノの兄弟子のベン
エフトの町にいる、アーノの師匠のロゼ
地図にそれぞれの町の場所に印をつけ、二人に当てた手紙もしたためてくれた。
筆談用の紙と、手紙に使われた紙で、それなりの出費もあっただろう。
費用を払おうとしたが、やんわりと断られた。
「ありがとう。アーノさん、アイオさん。」
「どういたしまして。その代わり、ゼスタさん、私が吟遊詩人になったときは覚えたスキルを教えてくださいね。」
「えぇ。デールに寄った時に、必ず。」
こうして、次の冒険の目処がたった。
一度、ツェグの町に帰還した後、どちらに向かうかを決めることにしよう。




