討伐依頼
ギルドでモンスター討伐依頼を受けた僕たちは、町から少し離れた山のふもとで、ヤマオオカミの群れと戦っている。
ヤマオオカミはそれほど強くないが、よく家畜を襲いに町の近くまでやってくるので、討伐依頼は定期的に出されている。冒険初心者御用達のモンスターだ。
「燃えちゃえっ!ルメ・ペケノ!」
ルーが呪文を唱えると、人の頭ほどの大きさの火の玉が飛び出し、ヤマオオカミの群れを散らす。
以前の火の玉はこぶしの大きさ程度だったはずだ。魔力操作の訓練の効果は、僕たちの中ではルーが一人抜きん出ている。
ルーの攻撃で数匹は怯んだが、後方から駆けつけた別のヤマオオカミがルーに向かう。
「ルー!危ない!メノス・アウガ!」
ラドが水球を放ち、ルーに飛びかかった個体を弾き飛ばした。
僕はラドの水魔法で体勢を崩したヤマオオカミに剣で止めをさした。
「ルー、大丈夫?」
「大丈夫。なんともないわ。」
そう答えると、ルーは火の魔法でヤマオオカミを一匹ずつ仕留めていく。
ラドも火の魔法と水魔法を織り混ぜてヤマオオカミを牽制する。
ラドは戦闘中は集中力が高まっているせいか、普段より魔力操作の精度が上がっているようだ。いつもより、魔法の威力が高い。
僕は二人の魔法で連携が乱れた個体を狙い剣で切り捨てていく。
しかし、徐々に群れを削られてきたヤマオオカミは狂暴さが増してきた。
そろそろ使ってみようか。
2週間練習してきた魔力操作を行う。
全身の魔力を体の中心に集め、肺から送り出すイメージを浮かべた。
上がってきた魔力は喉で声と融合させる。
声は次から次に魔力を乗せて口を通り、そうして詞となり、歌となる。
「僕たちに力を与えてくれ!はじまりの歌『アイオの歌』!」
吟遊詩人のスキルが発動し、全員の攻撃力と魔力が上がる。
「ありがとう!ゼスタ!」
ルーは支援を受けると、更に魔力操作に集中する。
僕とラドは、ルーとヤマオオカミの間に入り牽制して時間を稼ぐ。
すぅっと息を吸い、ルーが呪文を唱える。
「ルメ・ペケノ!」
辺りの気温がぐっと上がり、ヤマオオカミの群れの真ん中に火柱が上がった。
火の初級魔法を使っただけなのに、魔力操作と『アイオの歌』の効果が合わさって威力が格段に上がった。
使った張本人のルーが、驚いて尻餅をついている。
ヤマオオカミの群れは、ぎゃんっと悲鳴をあげて転びながら撤退していく。
一定数は討伐できたので、しばらくは町に近づくことはないだろう。
完全討伐とはいかなかったが、初めての討伐にしてはなかなかのできだろう。
そう考えていると、戦闘中、空中に避難していたオルタがヤマオオカミの群れに向かって手をかざす。
「ベント・モデラド!」
上空から放たれた風魔法で、ヤマオオカミの群れは見えない何かに踏み潰されたように、地面にめり込んでしまった。
逃走を図ったヤマオオカミの群れは悲鳴を上げる間もなく全滅してしまった。
「オ、オルタ。容赦ないな。」
ラドはヤマオオカミの惨状を見て少し引いているようだ。
結局、オルタの活躍により、ヤマオオカミの群れは完全討伐できた。
報酬も、ラドが計画していたよりは多く貰えそうだ。
完全討伐のボーナスも出る。
大量に倒したヤマオオカミの死体は、信号魔法を空に打ち上げ、ギルド職員に引き取ってもらう。
今回の討伐では
僕が6匹
ルーが9匹
ラドが5匹
オルタが28匹
合計48匹の群れオオカミを倒すことができた。
一匹の単価は低いが、それなりに資金は稼げた。
「ん、私が一番ね。すごい?すごい?」
最も戦果をあげたオルタは、少し自慢気に僕の肩に止まる。
「すごいね。オルタの魔力操作は本当にすごいよ。」
誉められたオルタは喜んでいる。僕も、上々の結果に自然と笑顔がこぼれる。
魔力操作とスキルが戦闘に十分有用であることを確認できたので、討伐結果も合わせて大満足だった。




