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世界を救う歌を探して  作者: でこっぱ
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家族の絆

私の父は吟遊詩人です。


物心ついた頃から、母に連れられて


酒場で父の仕事を見に行くのが日課でした。


友達は、今時、吟遊詩人になるなんて変な父親だと言いました。


でも、これは馬鹿にされているわけではないとわかっています。


私は知っていました。


その友達の両親も、その子を連れて、よく酒場に来ては、


父に歌をリクエストしていたことを。


近所のみんなが、落ち込んだり、嫌なことがあったりした時、


酒場に来て、美味しいものを食べて、父の歌を聞き、


笑顔になって帰っていく。


そんな様子を見るのが、私も母も大好きでした。


父がとても誇らしかった。


仕事のない日は、父と母と3人で散歩に行き、


町の近くの森の入り口でお弁当を食べました。


父はそこで、母が一番好きだという歌をいつも歌いました。


すると、森の奥から小鳥達も集まって来ます。


不思議な光景でした。


酒場で歌う父も好きでしたが、森の入り口で歌う父親は、


母と自分だけが知る特別な父親に思え、もっと好きでした。


……私が12才になった冬、母の咳が止まらない日が続きました。


ずっと寝ているのに、いっこうに良くなりません。


徐々に衰弱していく母が、ぽつりと私に


森に散歩に行けなくてごめんね、と言いました。


母がもう永くないというのは、私にもわかりました。


それで、自分のおこづかい全てを使い、


鍛冶屋に依頼をしました。


いつも森で見ていた小鳥の印がついた表札です。


私達には、森の入り口で過ごす時間が一番特別だったからです。


完成し、父と母に見せると、久しぶりに二人の笑顔を見ました。


その数日後、母は眠るように息を引き取りました。


枕元には、小鳥の絵が添えられた遺書がありました。


父に出会った時のこと、初めて聞いた歌のこと、


私が生まれたこと、酒場に行ったこと、森に行ったこと、


全てが楽しかったこと。


私達ともっと一緒にいたかったこと……


私が15になるまで生きたかったこと……


私が結婚するまで生きたかったこと……


……母がいなくなって、私は塞ぎこみました。


何日も何日も泣いていました。


ある日、ふと、母がいるような気がして、


森にやってきました。


森では、父が一人で歌っていました。


父も、母が待っている気がして森に来たそうです。


私が父の横に座ると、小鳥達が集まってきました。


母はもういない。でも、私達家族の絆は、


母の大好きだった歌と共に残っている。


そう母が伝えてくれた気がしました。


それから、私はまた、酒場に顔を出すようになりました。


母と私が大好きだった父の仕事を見るために。


父は相変わらず、人を笑顔に変えていきます。


父の歌で、ようやく、私も前を向けました。



でも、モンスターが襲来し、毒にやられた父は声を失いました。父の歩んできた道が、私達家族の絆が……



「父が吟遊詩人として生きられなくなっても、私は父が大好きです。この先も父を支えていきます。」


「ゼスタさん、申し訳ございませんが、声の出せない父は、スキル継承ができません。どうか、他の町の吟遊詩人を当たってください。お願いします。」

少女は涙をながらにそう言ってくれた。

アーノも涙を浮かべて、頭を下げている。


辛いのはこの二人の方だろうに。


「こちらこそ、事情も知らず申し訳ございませんでした。」


僕らは礼をし、立ち去ろうとしたところ、

アーノと少女が目を見開いている。


視線をたどると、オルタが鞄から顔を出していた。


「あ、ちょっと。オルタ!」

「よ、妖精……?」


オルタを注意しようとしたが、オルタは顔を真っ直ぐとアーノに向けていい放つ。


「私、あなたの伝えたいこと、わかるよ。」

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