吟遊詩人アーノ
「アーノの住む家は道具屋の裏手にあるよ。表札に鳥の印があるからすぐわかると思う。」
酒場の常連客から、吟遊詩人の名前と家の場所を教えてもらう。
「訪ねる用事があるなら、アイツにもたまには顔をだせって言ってくれよ。落ち込んでるのはわかるが、引きこもってたらどんどん悪くなっちまう。」
「そんな状況で、私たちに会ってもらえるかもわかりませんが、話すことができたら伝えてみます。」
酒場を出る時に、客からそう頼まれる。
「モンスターに襲われたって、大丈夫かな?」
「わからん。1ヶ月も酒場に顔を出さないってことは、酷い怪我なんだろう。」
「あ、鳥の印、ここだね。」
デールの町の吟遊詩人、アーノの家に着いた。
日がちょうど沈み、灯りがついている。
家にはいるようだ。
「あの、家に何か用ですか?」
声をかけられ振り向くと、一人の少女が立っていた。
僕達と同じ年くらいだろうか?少し疲れた顔をしている。
「すみません。ここ、吟遊詩人をされているアーノさんて方の家ですか?」
「えぇ、この家で間違いないですけど、あなたたちは?」
僕達はそれぞれ自己紹介し、デールの町にいるという吟遊詩人を探してツェグの町から来たことを説明する。
「アーノは私の父です。遠い町からようこそおいでくださいました。」
「酒場で、アーノさんが怪我をしたと聞きました。」
「えぇ。モンスターに襲われて、今は歩けるようにはなったのですが……立ち話ではなんですので、どうぞお入り下さい。」
僕達は少女に招き入れられ、家に入った。
「ただいま。父さん、お客様がいらしたわよ。」
「おじゃまします。」
家の奥から、足を引きずるようにして、杖をついた男性が出てきた。
「お父さん、この方たちはツェグの町から、お父さんに会いに来られたみたいなの。」
「はじめまして。ツェグの町のゼスタと言います。こちらは、ラドにルー、同じ町の友達です。」
ぺこりと、アーノはこちらにお辞儀をする。
少女の案内で客間に招き入れられた。
「それで、父にどのようなご用件で来られたのですか?」
「実は、僕はつい先日、吟遊詩人になりました。でも、ツェグには吟遊詩人がいません。それで、スキルを教えてくれる吟遊詩人を探していまして。デールに吟遊詩人が一人いると聞き、やってきました。」
僕の言葉にアーノも少女も難しい顔をしている。
少女が口を開いた。
「あの、酒場で聞いていませんか?」
僕達が顔を見合わせると、少女は溜め息をつく。
「スキルをお教えすることはできません。」
「えぇ?どうしてですか?」
ルーが身を乗り出すのを、袖を引き抑える。
「父を襲ったのは植物型のモンスターでした。モンスターの攻撃で、デールの町で一番の僧侶でも回復できないほどのダメージを足に負いました。」
「後遺症が残りましたが、命が助かっただけで、私は嬉しかったです。」
「ただ、問題は、モンスターが出した毒性の花粉です。それを、父は吸い込んでしまいました。」
「父は、もう歌えません。喉が毒にやられ、声さえだせないのですから……」
少女はうつ向くと、ぽつりと涙をこぼした。




