デールの町
デールの町
ゼスタ達の住む町に比べると、比較的小さい。
中規模のギルドがあり、それを目当てに行商も集まる、活気のある町。
「着いたぁ!」
ルーが町の入り口でピョンと跳ねる。
3人並んで、町を見渡す。オルタは目立つので、申し訳ないがカバンの中に隠れてもらっている。
「まずは、宿を探そうぜ。」
町の入り口にある、案内所の女性の元へ向かう。
「冒険者向けの宿はどこ?」
「それなら、この通りを真っ直ぐ行ったところにあります。大きく宿の看板が出てるので、すぐわかりますよ。」
「真っ直ぐね。ありがとう。」
町の入り口から続く大通りを歩くと、すぐに宿屋が見えた。
冒険者向けなので、お世辞にも綺麗とは言えないが、値段は手頃だ。
3人用の部屋に入り、荷物を置く。
「はー。狭かった。」
オルタがカバンから飛び出す。
僕達はそれぞれ、適当な場所に腰を下ろし、明日以降の予定を立てる。
「まずは、吟遊詩人がどこにいるかよね。宿の受付の人は知らなかったみたいだし。」
「それなんだけど、この町の職業登録所に行けばわかるんじゃないかな?」
「そこで分からなければ、酒場かギルドで聞こう。」
「吟遊詩人が見つかって、ゼスタがめでたくスキルを覚えたら、帰るための準備だ。来る途中で消費した道具を補充したい。そのためには少し金がいる。ギルドでいくつか依頼をこなすぞ。」
必要な道具と、現在の手持ち金を確認する。
「宿に泊まれる資金は4日分かな。早く見つかるといいね。」
大雑把に予定を決めると、その日は旅の疲れを癒すため、早めに休むことに決めた。
寝る前に、魔力操作の練習だけは欠かせない。
「ん、じゃあやってみて。」
オルタの合図で僕達はそれぞれ、魔力を一点に集中する。
「どうだ!?」
「ラドはだめね、全然だめ。集まるというよりは引っ掻き回しててるわ。ルーは手に少しだけ集まってる。ゼスタは少し集まるけど、すぐにバラける感じね。」
魔力操作の練習を始めてから2週間で、少しずつ魔力を移動させる感覚がついてはきたが、思い通りとは程遠い。
「ルー、何かコツとかある?」
習熟度はルーが一番高い。
「オルタが魔力がどう動いてるか教えてくれるでしょ?それに合わせて、自分の体を光が移動しているのを想像するの。」
「見えない魔力をイメージするってことか?」
僕とラドはルーのアドバイスに従い、何度か魔力操作を行う。
「ん、ラド、いい感じよ。ゼスタも少しキープできてきてる。」
「やっぱり、なかなか難しいな。」
だが、前進はしている。
もう少しだけ練習した後、床に就いた。
翌朝、デールの町の職業登録所にやってきた。
「吟遊詩人の方ですか?この町にはお一人おられます。」
「居場所はわかりますか?」
「お住まいはわかりませんが、酒場でよく歌っておられたというのは聞いています。」
「酒場ですね。ありがとう。」
この町の吟遊詩人は、酒場で日銭を稼いでいるのだろう。
活動場所さえわかれば、すぐ見つかりそうだ。
酒場が開くまでは、まだ時間があったためギルドに寄る。
明日以降の資金稼ぎのため、期日指定のない、簡単なモンスター討伐をいくつかピックアップしておいた。
その後、町を散策し道具屋の場所等を把握しておいた。
そうこうしている内に、酒場が開いた。
酒場の中に入ると、既に活気の溢れる人達で盛り上がっている。
「わぁ、楽しそう!」
オルタがカバンから顔を覗かせる。
「あんまり顔を出したら見つかるぞ。妖精なんて、みんな見たことないんだからパニックが起きちまう。」
ラドは一応の注意はするが、嬉しそうにあたりを見回しているオルタを引っ込めさせることはしなかった。
僕らは一通り酒場を見渡したが、吟遊詩人らしき人は見つからない。
「まだ来てないのかしら?」
「そうかもしれない。店主に聞いてみよう。」
カウンターでは、人の良さそうな女店主がニコニコと酒を振る舞っている。
「いらっしゃい。何にする?」
「すみません。この酒場に吟遊詩人の方が出入りしていると聞いたんですが。」
話を切り出した途端、店主は暗い顔をする。
「あぁ、確かに出入りしていたよ。ただ……」
「1ヶ月ほど前にモンスターに襲われて怪我をしたんだ。それ以来、塞ぎこんでしまってね。もうずっと顔を出してくれないんだ。」




