妖精の目と魔力操作
「~~♪……こうかな?」
「んー、もう少しお腹に魔力を集めてみて?」
オルタに歌への魔力の乗せ方を教わる。
しかし、感覚がわからない。
僕も初級の魔法は使えるので、魔力を使う感覚はわかる。
でも、魔法を使う時は呪文を唱えれば体から必要分、魔力が減る感じがする程度だ。
そもそも、呪文も唱えずに魔力を体の中で集めるというのがわからない。そんなことできるのか?
「~~♪」
「ん、さっきより悪いよ。もっと、ゼスタの体中に散らばっているオレンジっぽい光を中心に集めるの。」
「オレンジ?」
「そう、ゼスタのオレンジ色の魔力。」
「ねぇ、オルタ。あなた魔力が見えるの?」
「ん?見えるのって、目を開けてるんだもん。見えるに決まってるよ。」
どうやら、オルタと僕らでは認識にずれがあるらしい。
「えっと、オルタは目を開けてれば魔力が見えるってことよね?」
「そうみたいだね、妖精の能力かな?」
首を傾げるオルタにラドが説明する。
「なぁ、オルタ。人間には魔力は目に見えねえんだ。」
「えぇ?そうなの?」
「そうだよ。音が目に見えないのと同じ感覚だね。」
「ん?音も目に見えるでしょ?」
「待って待って、つまり、オルタは魔力も音も目で見えるってこと?」
オルタが、僕が吟遊詩人だと気づいたのはこの能力のおかげらしい。
「なんか、音が見えるなんてごちゃごちゃして大変そうね。」
「ん、音が見えない方が不便じゃない?」
自分にとっての普通が、相手にとって普通ではない。感覚を完全に理解するのは無理だろう。
「んー、じゃあゼスタ達にとっては魔力を集めるのは、目を閉じてお花を集めるようなもの?それって難しそう。」
オルタが分かるように大雑把に言ってしまえばそんなところだろうか。
人間は、目に見えないが故に体内の魔力を操作するという発想がない。
でも、魔力操作ができる事実を知り、オルタの手を借りて練習すればいずれ可能となるだろう。
「魔法を使う時も体内の魔力操作をした方が良いの?」
「ん、同じ魔法でも強さが全然違うよ。魔力消費量は変わらないけど。」
オルタは初級風魔法を披露する。
「まず、魔力操作のない場合ね。ベント・モデラド!」
僕やルーが使う風魔法とほぼ変わらない突風が吹く。
「次に、魔力を手に集めてから、ベント・モデラド!」
呪文を唱えた瞬間。
ふと景色が歪んだかと思うと、オルタが手を向けた先の木が轟音を立てて砕ける。
「……すごい。」
「本当に初級魔法かよ。上級魔法並の威力だぞ。」
面を食らう僕らに、オルタは嬉しそうにしている。
魔力操作は、時間をかけても習得する価値がある。
僕達3人はオルタに魔力操作を教えてもらうことになった。
「オルタには手間をかけてしまうけど、よろしくね。」
「んーん。初めてできた仲間だもの。役にたてるなら嬉しい。」
オルタはくるんと1回転して、ルーの頭に乗った。
昼はモンスターを倒しつつ少しずつ進み、夜はオルタから魔力操作を教わった。
そうして2週間も経った頃、ようやくデールの町が見えた。




