花の根
森を抜けて街道を進む。既に日は傾いている。
そこでようやく、モンスター避けの魔方陣を見つける。
「やった!これでゆっくり休めるわね。」
「ラドも、今日は早めに休んでよ。まだあんまり疲れがとれてないだろ?」
「ありがとな。あ、そういえば…」
ラドは立ち止まり、頭の上に乗っているオルタに聞く。
「オルタ、お前、モンスター避けの魔方陣は大丈夫か?」
「だから、私はモンスターじゃないってば!」
「痛えっ!」
オルタはラドの鼻を蹴り、怒って魔方陣の中に飛んでいく。
「もう、兄さんたら。ねぇ、オルタ。あなたのお花どうしたらいい?」
ルーもオルタを追いかけて魔方陣に入る。
「すっかり仲良くなっちゃったね。やっぱりラドはすごいや。」
うずくまるラドに言う。
オルタがラドの鼻を蹴ったように、セアや、大人しいシーナも、ラドに対しては遠慮なしに接する。
みんな、面倒見の良いラドに甘えているんだろう。
「お、ゼスタ。やっと俺の魅力に気づいたか?今ならラド様教の入信料安くしとくぜ?なんなら幸せになれるパワーストーンも安く売ってやる。」
「考えとくよ。」
軽口を叩くラドを起こして魔方陣に入る。
腰を下ろし、火を起こしていると、オルタが花を地面に置いた。
「うーん、えい!」
オルタが掛け声を出すと、花が地面に根を張る。花は地面から栄養を吸い、大きく開く。
その様子を見て驚いていると、ラドがハッと思い出して叫ぶ。
「お、お前、まさかそれを俺の頭の上でやろうとしたんじゃないだろうな?俺から養分を?」
ラドの言葉に、今日ずっとオルタの花を頭に付けていたルーがビクッとして、青い顔で震える。
「に、兄さん、何言ってるの。そんなわけないじゃない。え?ないよね?オルタ?」
「ちょ、ちょっと何てこと言うのよぉ!するわけないじゃない!」
オルタはラドをポカポカと叩く。
オルタが加わってずいぶん賑やかになった。
一騒動終えて、今後の予定を確認する。
「地図を見る限り、元の道に戻れたみたいだね。」
「オルタのいた森が思いのほかすんなり抜けれたから、あまりロスしなかったわね。」
「明日からは、当初の予定通り、モンスターを倒して経験を積みつつ進むぞ。」
「それと、オルタにお願いがあるんだ。」
「ん、なぁに?」
「僕は吟遊詩人として、まだスキルも手に入れてない。でも、デールに着くまでに出来ることはやりたいんだ。」
「私はゼスタのパートナーよ。手伝えることは何でも言って。」
オルタは胸をとんっと叩く。
「歌に魔力を乗せる練習をしたい。」
よく分からないけど、役に立つかもしれない。
オルタを目覚めさせた時、歌に魔力が乗っていることが条件だと言って。
それはつまり、この世界のどこかでは歌に魔力を乗せる方法を利用した魔法なり戦術なりがあるということではないだろうか?
習得しておくに越したことはない。
「それなら手伝えるわ。任せて、ゼスタ。」
「よろしくお願いするよ、オルタ。」
オルタと出会えたことで、僕の吟遊詩人としての修行も始まった。




