ツボミの妖精
「ねぇ、ゼスタ。なにこれ、なにこれ?可愛い。」
ルーがオルタと名乗った少女を食い入るように見つめる。
「ちょっ、ちょっと近い、近いってばぁ。」
オルタは腕を一杯に伸ばしてルーの顔を押しやる。
「ほんとに、なんだコイツ。さっきの蔦から出てきたとこを見ると、蔦のモンスターか?」
「ちょっと、あなたもひどくない?こんな可憐なモンスターがいるわけないでしょ?あ、突っつくなぁ。」
オルタは触ろうとするルーの手を叩いて逃げると、僕の元まで飛んで来た。
「あなたもパートナーになったんだから助けてよぅ。」
「えと、オルタ?さん?パートナーって何のこと?」
「オルタでいいわ。えっと、私はねぇ、目覚めの唄で起こしてくれる人を待ってたの。その人のパートナーになるために。」
「どうして?」
「ん、わかんない。そういう決まりなの。」
理由はわからないが、僕がうっかり口ずさんだあの唄が原因で起こしてしまったらしい。
「それよりも、パートナーさん?あなた達のお名前も教えて?」
「あぁ、ごめん。僕はゼスタ。こっちはラド、こっちはルー。」
「よろしくね。」
オルタは僕、ラド、ルーの前に順番に飛び握手を求める。
「それで、オルタ。悪いんだけど、僕は何も知らないでこの唄を歌ってしまったんだ。もちろんオルタが寝ていることも知らなかった。」
「ねぇ、オルタ。オルタは誰かを待ってたんじゃないの?ゼスタは手違いで起こしちゃったの。だからオルタが待ってたパートナーじゃないの。」
ルーは諭すように伝えるが、オルタは首を傾げる。
「ん、私は起こしてくれる人を待ってたのよ。ゼスタが起こしてくれたんだから、私はゼスタを待ってたってこと。何も間違ってないじゃない?」
オルタはそう言うと楽しそうに僕の周りを羽ばたく。
「何かややこしい話になっちまったなぁ。」
ラドはため息をつく。
「オルタ、君の仲間はどこかにいるの?」
「んー、寝てたからわかんない。ここでずっと一人で寝てたもの。」
「こんな、誰もいない森で一人で?ずっと?」
「うん。」
人気のない森で、彼女は誰を待っていたのだろう?
決まりと言っていた。
誰かに命じられて?
僕が考えに耽っていると、ルーが袖を引っ張る。
「ねぇ、ゼスタ。兄さん。こんなところにオルタを一人にしとくなんて可哀想よ。パートナーって言ってるんだし、連れていってあげよう?」
「ルー、お前なぁ。」
「いいか?まず、コイツが何なのかわからねえ。見た目は妖精っぽいが、そんなのおとぎ話の世界だろ?新種のモンスターだったらどうする?」
「モ、モンスターなんかじゃないわよぅ!」
「そうよ!きちんと話もできるし、いい子じゃない!」
「仮に良い奴だったとしてもだ。
そもそも何を食うんだ?連れて行って環境が変わっても大丈夫か?最後まで責任もって面倒みれるか?
だいたい、お前が昔飼うって言って持って帰ってきたカブトムシもクワガタも、結局俺が面倒見たじゃねえか。」
「わ、私を虫みたいに言わないでぇ!」
「痛えっ!」
怒ったオルタがラドの鼻っ柱をひっぱたいた。
しばらく、大騒ぎし揉めていたが、最終的にはオルタの鼻への噛みつき攻撃に耐えられなくなったラドが折れる形になった。
「じゃあ、改めてよろしくね。みんな。」
オルタがぺこりとお辞儀をする。
「よろしく。」
「よろしくね。オルタ。」
「まぁ、その、よろしくな。」
「荷物あるなら持つぞ?」
ラドはもう世話を焼き初めている。
「ん、うん。これ……持っていきたい。」
オルタは恥ずかしそうに、自分が寝ていたツボミを抱き寄せる。
「それか?何を照れてんだ?」
「あの、ずっとこのツボミで寝てたから……外でお布団変わると寝れるか心配で………」
旅先で枕が変わると寝れないタイプなのだろうか?
こうしてオルタが仲間に加わった。




