森の中の邂逅
グンタイウサギから逃げ回ったため、街道から少しそれてしまったようだ。
地図を見て、現在地を確認する。
「逃げた時間と川の大きさから判断すると、この中洲が今いる場所かな?」
「たぶんな。こりゃ元の道を引き返すより、向こう側の森を抜けた方が早そうだな。」
「ええ、元の道はまだグンタイウサギがいるかもだし、森の方が良いわ。」
装備を点検し、出発の支度をしていると、
……………………ィーーン…………
また、耳の奥に違和感が走る。
「ゼスタ!行くぞ!」
「え、うん。」
……直ぐに治まったようだ。
森の前に立つと、ラドが地図を取り出す。
「それほど大きくなさそうだ。すぐに抜けられそうだな。」
「ねぇ、兄さん。大丈夫?怖いモンスターとかいない?」
「さぁな。出るかもしれねえし、出ねえかもしれねえ。それは、街道も森も一緒だろ。」
「それもそうだね。」
「それに、モンスター討伐の依頼は森の中に入ることが多いから、むしろ街道よりも対策が立て易いかもな。」
僕らはラドを先頭に森へと進む。
「何か、拍子抜けするくらい静かねぇ。」
ルーの心配は杞憂に終わったらしい。
森の中は、穏やかな木漏れ日と、鳥のさえずりがあるだけだ。
「モンスター避けの魔方陣の中にいるみたいな魔力を感じるわ。誰かが森に結界を張ってるのかしら」
「馬鹿言うな。森全体に結界を張るなんて聞いたことないぞ。」
僕も、そんな規模の魔方陣は聞いたことがない。
おとぎ話か何かでしかあり得ないじゃないか。
「たまたま、モンスターに会わなかったか、冒険者の一斉討伐があったんだろ?」
実際はそんなとこだろう。気を抜いてはいけない。
森を半分ほど進んだところだろうか。開けた場所に出た。
「何ここ?きれい。」
ルーが息を呑む。
一際明るい日が差し、透き通った湖が広がる。
湖の中心には苔の生えた建造物が見え、そこに向かい、橋が延びている。
「祠?」
「みたいだな……」
僕らは引き寄せられるように、橋を渡り祠へ向かう。
「何でこんなところに祠が?」
「ずいぶん古そうだけど、昔に作って忘れられたのかな?」
祠を覗きこむ。
「花?」
祠の中では、蔦のような植物に白い大きなツボミが膨らんでいた。
「花を祀ってるのかしら?」
「時間が経って勝手に生えてきたんだろ?見ろ、ここに文字がある。」
我らの……な………………眠る。封印…………力を……………………ば、…………目覚め…………げ。
祠の内壁が崩れて文字が読めない。
「蔦の後ろにも何か書いてあるぞ。」
ラドが蔦を引き下ろす。
「楽譜?何かを祀る…………祈りの唄とかかしら?」
蔦が遮っていたからか苔も生えず、傷みもない。
ここははっきりと読める。
「~♪」
僕は書かれている楽譜指でなぞりながら小さく口ずさむ。
「…………んー、もう時間?まだ寝てちゃだめ?」
「何だよルー。いきなり、訳わかんねえよ。」
「わ、私じゃないわよ!ツボミ!ツボミが喋ったのよ!」
祠の蔦が大きくうねると、白いツボミがゆっくりと開く。
中から小さい女の子が出てきた。耳当てのような物をして、背中には羽が生えている。
「よ、妖精?」
意味のわからない状況に3人とも混乱する。
「ん、起こしてくれたのは誰?唄、まだあんまり上手くないね。でも優しそうな歌い方は好き。」
ツボミの少女が伸びをしながら聞いてくる。
「歌ったのは僕だよ。蔦を揺らしたのはこっちのラドだけど。」
「ん、そう。」
そう呟くと、少女は羽ばたいて僕の顔まで来る。
「じゃあ、貴方が私のパートナーね。私はオルタ、よろしくね。」




