葛藤と決意
公園で偶然出会った女の子「早乙女 愛」が入院している病院に通うようになり、日に日に仲を深めていく二人。
しかし幸せな日々も束の間、彼女の口から俊が想定していない事が話される・・・
そして俊の決断は!?
浮かれていた僕を地面に叩き落としたその言葉とは
「実は私の病気はね・・・治る事はないの。私はずっとこの病室に居る事になるの。」
この彼女の言葉は僕を絶望の淵へと追いやった。僕は彼女の病気はどんなものなのか、あとどれくらいで治るのかずっと気になっていた。治るまで病院に通って、彼女が退院したら色んな所に連れて行ってあげようと思っていたから余計ショックだった。
「・・・・・・・・・・」
僕は黙り込んでしまった。情けない話しだが、彼女にかけていい言葉が見つからなかったんだ。
「なんで俊くんがそんな顔をするの!(笑)病気なのは私だよ?」
彼女が言った事は正論だ。でも、そういう問題じゃないのは皆んなには理解してもらえるだろうか。
「そうだけどさ。それでも、悲しいもんは悲しいだろ。」
僕は理由のない悲しみの中でもがいていた。
「なんか、ありがとう。私、今まで話し相手が少なくて自分の本音も言えなかったの。でも、俊んくんに会ってから心が楽になったよ。」
彼女は結構自分の思った事を素直に言うタイプだ。こういうところ、本当にずるい。
「そっか。ならよかった。」
前にも言ったがそっけない返事をしてしまうのは僕の悪い癖だ。でも、今のは恥ずかしいのとは別の理由がある。まだ、ショックが消えてないんだ。僕の思考回路は完全に停止してしまった。
結局、この日は微妙な雰囲気のまま病院をあとにした。その日の夜、僕はなかなか寝付けなかった。彼女の話を信じきれていない自分に何度もこれは現実なんだと言い聞かせた。
その日から数日後、まだ僕は心の整理がついていなかった。そのせいか、最近ずっと会話がぎこちない。
「ねえ、まだこの前の事気にしてるの?」
と彼女が聞いてきた。おそらく、ずっと何かうわの空の状態だった僕に痺れを切らしたんだろう。
「んー、まあね。そりゃ、気にするさ。」
僕にしては素直に言えたと思う。これは僕が成長したんじゃなく、ただ何も考えずに喋っているからだ。
「そっか・・・。なんか余計な事言っちゃたね。ごめん・・・」
ふと、彼女は悲しげな表情を浮かべる。この表情を見て僕は目覚めた。
僕は何を悩んでいたんだ。病気が治らないのは紛れもない事実だ。そんなことで悩んでも彼女まで悲しくなるだけじゃないか。突然、僕の中でモヤモヤしてた気持ちがスッキリした。
そう、今僕がやるべきことは彼女のために何ができるか考えることだ。
「愛ちゃんさ・・・」
僕は自分が気づいた頃には質問を始めていた。
「今、何がしたい?」
うん。これこそが僕のやるべきことなんだ。
つづく
いかがでしたでしょうか。今回、お互いの呼び方が「俊くん」や「愛ちゃん」に変わったのはお気づきでしょうか(笑)
今後もこのような変化なども注目しながら読んでいただけるとありがたいです。
それでは、また明日。