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チェンジリング  作者: 美羽
エルヴィスト魔術学院
12/16

11:リラがマジで女神に見えた

<魔法歴1327年 新春月の十>

【グロウ・ガルウィス】




「やっぱり魔術学院の人ですかぁ?」


「今まで見たことないし、新入生よね?私今二年目のAクラスなのよ!」


「やだカッコイー!ねね、一人で来たの?」


「私この辺に住んでるんです、よかったら案内しましょうか?」


「え゛っ、いや、あの、なんつーか……」


何だこれ勘弁してくれ。何でこんなことになってんだ俺。何で囲まれてんだ??

囲んでくる女子達を困って見たら、何でかキャーッ、とか言われた。何でだ。


そもそもあれだ、俺は何でここにいるかっていうと家具を見たいからで、折角店に来たからには全部見ないと損って思ったから色んなトコ見てたわけで。……って、もう半分時間経ってるじゃねーか!!まだ俺半分も見てねーんだぞ、店の中!


「あのな、俺そろそろ他のトコ見に……」


「あら、じゃあご一緒しますよ」


「私も!」


「ずるーい!私の方がこのお店詳しいんだから、私に任せて?」


女子達はわいわい盛り上がってるけど……えっ、ついてくるとか冗談だろ?今俺全然何も商品の棚見れてねぇんだけど。(完全に囲まれてるから)

やべぇよくわかんねぇけどこれ完全に詰んだっぽい。てかそもそも何で俺囲まれてんだよ何かしたか?ホント勘弁しれくれ。誰か助けてくれ……


「グロウ?待たせてごめんなさい」


相変わらずキャイキャイしてる中に、落ち着いてて聞きなれた声がした。

バッとそっちを見たらリラがにっこり笑ってこっちに小走りに近づいてきてるとこだった。あれ、なんか後光が差して見える。リラがすげー輝いて見えるぞこれ。

女子達はなんか圧倒されたみたいだった。まああれだもんな、こいつビックリ人間だもんな。

難なく女の子達の囲いを突破してこっちに来てくれたリラは困った顔で小首を傾げた。確かあれだ、こういうのをあざとい、って言うんだって前に地元の幼馴染が言ってた。


「あっちに見たいものがあるので、一緒に来てもらってもいいですか?」


「お、おう任せろ!」


やっと抜け出せる!!!!!


「よかった。じゃあこっちです」


自然な動作でリラが俺の腕に絡んだ。そのまま腕を組んでる状態で引っ張られる。


「お、おいリラ?」


「しーっ。いいからグロウ、こっちに」


いやいやいやいや。これ歩きにくいっつーか緊張するっつーかくっつくから俺の身体でリラの事押しちゃわねぇか心配だし足とか踏んじまったら大変だしリラの髪長いから腕くすぐったくてうずうずするし(俺は基本半袖か袖なし着てる)。


「……この辺でいいでしょうか」


キョロ、と背後とか周辺とかを確認したリラはそう呟いて手を離した。

あーなんかスゲー緊張した。よかったリラに怪我させたりとかしなくて。つい安心してふぅ、って息を吐いてたら、リラは呆れ混じりの顔でこっちをみている。


「一体何をしてたんです?すごく囲まれて困っていそうだったので一応助けてみましたが…」


「おう、ほんと助かったわ。なんかよくわかんねぇんだけど気づいたら囲まれてたんだよ」


「まあグロウは格好良いですからね。と言うかSクラスの男子全員がそうです」


「いや、お前が言ってもあんまり……」


「あら、折角助けてあげたのに。今から彼女達を呼んできましょうか?」


「それはマジで勘弁!」


ホントにありがとうございました!って言いながら勢いよく頭を下げたら、リラはちょっとびっくりした顔をして仕方なさそうに笑った。うん、あざとくない笑顔だ。


「グロウはもう欲しい物は選べましたか?」


「一応はな…。だけど折角だし色々見てみたいだろ?だから店内一周しようかと思ってんだ。お前は?」


「グロウらしいですね。私も買いたい物は見られたので、これからレジに行こうと思っていたところです。そうしたら貴方が女の子達に囲まれていた所に遭遇してしまって」


最初はそのままにして道を避けて通ろうかな、と思ったんですが、あまりにもグロウが困っていたので。とか、俺からしたら恐ろしいことを言いながらリラは店内の時計を見た。約束の時間まで何だかんだあと十分しかない。こりゃさっさと回らねぇとな。


「じゃあグロウ、いいもの見られるといいですね。また女の子達に囲まれないように気を付け――

「ちょっと待った!!!」


さらっと手を振ってレジの方に進もうとするリラの手を掴む。不思議そうに首を傾げられたけど、今はマジで一人にしないで欲しい。


「一緒に回ってくんねぇ?」


「グロウ……」


また囲まれることへの恐怖を見抜かれたっぽくて、憐れみの目を向けられたけど仕方ない。背に腹は代えられない、ってやつだな。


「頼む。後でジュースおごる!」


「ふふっ、別にそんなに気を遣わなくても大丈夫です。どうせただレジに向かうだけだったので、グロウさえいいのならご一緒させてもらいます」


「ホントか!?ありがとな、リラ!」


「どういたしまして」


よっしゃ、これでさっきみたいにならなくなった!ガッツポーズをとった俺を見るリラは、相変わらず可哀そうなものを見るような感じがすごいけどもう気にしねぇ!


「それで、グロウはあとどこをみたいんですか?」


「んーそうだな……つってもあと十分だし、お互い買いたいモンはそろってるし。

やっぱちょっと遠回りしながらレジの方行かねぇか?気になるやつあったら見たいけど」


「じゃあ……こっちから行ってみます?」


そう言ってリラが指差したのはレジとは違う方向で、ついでに言うとさっき囲まれてた場所とは逆方向の商品棚のレーンだった。確かにまた遭遇しても困るしその方がよさそうかもな。二人で並んで歩きつつ、俺はリラの手元を覗き込んだ。


「ところでリラは何買ったんだ?」


クッション、とか店に入る前は言ってたけど、その割には持ってる札の枚数が多いと思う。四枚くらいあるだろ、それ。


「私は予定通りクッションだけです。セールになっていてたくさん買うとその分安くなるので四人分買いました。談話室にある暖炉のところの椅子にそれぞれ置こうかと思っているのですが、グロウはどれを使いたいです?」


「は!?いやいやお前気前良すぎだろ。もったいなくないか?」


にっこり満足げなリラから四枚の札を渡されてつい受け取ったけど、安いから全員分買うとかお人よしすぎねぇか?まあ札にも四つ買ったら半額って書いてあるけど、絶対そんなに買うやつなかなかいねぇから書いたんだろうし。


「そんなことないと思いますが。四つ買っても二つ分の値段ですし、他に欲しい物もありませんし。ちなみにクッションの材質もそれぞれ違うので、よく選んでくださいね。それとも商品が届いてからの方が触り心地がわかっていいでしょうか?」


「あー、まあ、そう、かもな……?」


だめだ、俺にはなんも言えねぇ。つっても多分セルスとかクラウスも同じような反応しそうだけど。


「じゃあそうしましょうか。グロウは何を?」


「俺はちっちゃいテーブルと枕とラグマット!寮の枕ってふかふかすぎて何か落ち着かない感じするんだよな」


「ラグマット?」


「俺んちの部屋って靴脱いでマットでゴロゴロするスペースあるから、学院でもそれやりてぇなって思って買ったんだ。結構感触とかこだわったから選ぶのに時間かかっちまったけど」


やっぱベッドだけじゃなくて床でもごろごろしてぇんだよな、俺としては。

ただこういう習慣、みたいなのは俺の出身地の森の国でも珍しいらしい。確か海の国と砂の国の風習だったか?俺の場合はお袋が砂の国の出身だったから知ってるけど、リラなんかは光の国出身だって前に言ってたし知らねぇかもな。


「部屋にそういうマットレスをしいて寛ぐのは……海の国と砂の国でしたか?

何度か話に聞いたことはありますが、実際にやっている人を見るのは初めてです。クラウスは海の国出身でしたよね。彼もやっているのでしょうか」


「なんだ、知ってたのか?」


「本で読んだ程度です。やっぱり居心地がいいものなのですか?」


さすがリラ。しかも情報源が本って、一体どんな本読んだんだこいつ?


「おう!めちゃめちゃ快適だぞ。お前も今度やるか?」


「ふふ、じゃあ商品が届いたらグロウのお部屋に遊びに行かせてもらいます。でも二人も居られるほど広いものなのですか?」


んー………リラはちょっと心配そうだけど、俺達の寮の部屋ってそもそもめちゃめちゃ広いしな。

普通に過ごすリビング?的なのと風呂、トイレ洗面所、あとは別で寝室もついてるし。

リビングなんかは今のとこ勉強用っぽい机しか置いてねぇし、俺が自分で買ったテーブルはラグでゴロゴロするときに飲み物とか置いとくだけの目的で買ったからホントにちっちぇーし、折りたためるから部屋の端の方にも置けるつくりになってる。勉強用机はさすがに移動できねえけど、それだって部屋の角に置いてあるからスペースをとってるわけでもない。それを考えて俺が買ったラグマットは、だからかなりの大きさだった。


「全然平気だと思うぞ。つか四人くらい普通に過ごせるんじゃねぇか?

まあ寝っ転がるとかなったら流石に狭いだろうけど、座って過ごすくらいならな。あ、じゃあその時リラが買ったクッションも持って四人でゴロゴロしようぜ」


「あら、それは良い案です。やっぱり四つ買ってよかった」


「確かに。ありがとな、リラ」


「こちらこそありがとうございます。商品が届くの、楽しみですね」


確かに。ただでさえ楽しみだったけど更に楽しみが増えた感じだ。やっぱ持つべきものはいい友達だよな。ほんと一緒のクラスがこいつらでよかった。

さっき囲んできたみたいな連中が一緒だったらと思うと………いや、怖いから考えるのはやめとこ。


「お、何だかんだでもうレジに着いちゃったな」


「結局話に夢中であまり商品は見られませんでしたね…」


まあそれはそれだな。そもそも話するの楽しかったし、リラは申し訳なさそうな顔をしてるけど俺は気にしてない。


「皆でまわるのも楽しそうだから別にいいんじゃねぇか?これはこれで楽しいけどな。つかもうすぐちょうど時間だけどセルスとクラウスは………って」


「え?」


「ちょ、ちょっとリラこっちこい」


慌ててリラの手を掴んで近くの棚に隠れる。ちょうど向こうからは死角になることを確認してから、そろっとバレない様にそっちを覗き込んだ。


「うわぁ……」


「グロウ?どうしたのですか?」


「あー……まあ、見ればわかる。いいか?絶対バレない様にしろよ?そっとだぞ?」


リラを俺の前に移動させつつ、棚の向こうを覗き込むリラの上から俺ももう一回あっちを盗み見た。


「やだー、二人ともすごくかっこいい!」


「一緒にお茶しませんかぁ?」


「ちょっと抜け駆けしないでよ!」


「私、おしゃれなカフェ知ってるんですよー」


………うん。あいつら間違いなく囲まれてる。こういうのあれだ、デジャヴっていうんだろ?

気づかれる前にまた顔を引っ込めてお互いに目を見わせた。リラは相変わらず可哀そうなものを見る目を棚の向こうに向けてるけど、その目はやめてやれって。


「リラ、助けに行ってやれよ…」


「えっ。流石に私も二回目は厳しいと言うか…。あそこにいる人達、グロウを囲んでいた人も入ってるでしょう?」


「え、そうなのか?」


「あんなに至近距離にいたのに覚えていないのですか?」


いや、だって目を合わせたらやられそうだったし。

そう言ったらリラの目線が更に憐れみを含んだものになった。


「あ、じゃあグロウが二人をこっちに呼ぶとか……」


「無理だって!絶対ついてくるじゃねぇか!リラがさっきみたいに行った方がいいに決まってるじゃねぇか!」


「それこそ無理です……それに学院の人もいるみたいなので、後々面倒なことになりそうな…」


何か想像したらしく、リラが遠い目になった。何かしらを悟った目だ、これ。


「でも俺の事助けてくれた時点でそれは変わんなくねぇか?」


「大違いです。グロウだけ助けたなら私達が付き合っていて、と彼女達も勝手に想像してくれるでしょうが、ここでセルスとクラウスのことまで助けたら私がただの男好きみたいになってしまうでしょう?」


「そうかぁ?」


「女性からしてみたら異性、それも顔がいい何人もの男性に囲まれて過ごしている女は一番嫌われるのですよ?」


「お、おう…」


なんか説得力あるな…。過去にそういうことあったのか?

まあでもリラの顔じゃ男が寄ってくるのも想像できるっつーか。


「てか逆にお前はよく男に囲まれなかったな、店内で」


「私?」


リラは不思議そうにしてるけど、実際のとこ俺達のなかで一番モテそうなのはリラだ。

銀髪は珍しいし、いつでもにこにこしてて優しそうだし、背も小さくて華奢だし、何よりビックリするくらい顔が可愛い。俺だって初めて見たときは人形が動いてるってビックリしたくらいだし。

普通に考えたら俺達の比じゃないくらい男が群がるもんなんじゃねぇか?


「私は近寄りがたい感じなので、そんなに囲まれたりはしませんよ?

まあ遠くからじろじろ見られることはありますが、それくらいは無視していれば実害はないですし。それにこうしてグロウといれば、変に声をかけてこようとする人はなかなかいないです」


「近寄りがたいって、リラがか?」


全然的外れじゃねぇか、その考え。

そう思ってるのが顔に出たんだか、リラは苦笑して――一瞬で無表情になった。

何か怒らせたのか、それとも嫌なことを言っちまったのか。何にせよ背筋がぞくっとして体が硬直する。


「……ね?近寄りがたいでしょう?」


俺の状況がわかったのか、リラはすぐに笑顔に戻った。……つまり実演してくれたらしい。


「お前そうやるとめっちゃ怖いんだな」


「グロウ、私以外にそれを言うと失礼ですよ……?」


「や、ホントびびった。ぜってー怒らせたと思った。怒ってるとこ見たことねぇけど」


でも今まで怒ったりしてるとこ想像すらつかねぇと思ってたけど、さっきので想像ならできるようになったな。同時に絶対に怒らせないようにしようとも思ったけど。


「急すぎました?すみません」


「そんな気にすんなって。俺が信じなかったのが悪いし。あ、そうだ。このままここでじっとしてるのもあれだし、先に会計だけ済ませちまわねぇか?

んで配送先とかの手続きだけしておいて最後の最後で二人でセルス達呼びに行けばまあ……変についてこられたりとか恨まれる前に店から出られるだろ?」


あまりにも申し訳なさそうにされて居心地悪いのとこっちも申し訳なく思ってきたのでそう言ったけど、案外悪くない案かもしれねぇ。要は色々とパパっと済ませちまえば被害が最小限で済むんだよな、うん。

リラもそれでいいと思う、って言ってくれてるし、まずはどうにかしてバレない様にこっそり、レジに近づくか……


「んじゃ、救出作戦開始だな」


「なんですか、それ」


「どっからどう見てもあれは救出だろ?」


実際リラに助けられたときホントに神様だと思ったし。

そう言ったらリラはおかしそうに、でもバレない様に小さく声を殺してしばらく笑ってた。

そんなに笑うことか?俺結構本気でそう思ってんのに。




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