ふたつ
優しくされない方が良かった
このまま不幸で良かった
このまま寂しくてもよかった
ずっと下を向いていてよかった
だけど知ってしまったから
覚えてしまったから
理解してしまったから
怖くなった
君が優しくしてくれるたびに
君が笑ってくれるたびに
いつかその優しさが
いつかその笑顔が
黒く濁るんじゃないかと
そう思って
ぼくは君から離れた
君に会うのが怖かった
いつか君はぼくに似てきて
ぼくはほっとして
安心した
それなのに
やっぱりダメだった
きみはぬけがらに、なった
ぼくの目の前でまた笑って
きみがきみに戻った時
きみは、ぬけがらに、なった
優しくされない方が良かった
目の前のものは
なんでもなくなった
ぼくはそれを見て
動かなかった
知ってしまったから
理解してしまったから
ぼくは
目の前のものと同じものになろうとした
目の前のものを追いかけなければならないと
自分の体が感じたから