撃たれた@の世界は?
またもや、日付が1日進んでいる。
しかも、朝だ。死んで世界線を移動するのはいいのだが、痛みは残っているのでキツイ。つか、死んだほうがはるかに楽だろう。
そういえば、最後に『マリアン』がいたような記憶が残っている。
結局、会えたのだろうか?
「会えてたら良いなぁ・・・」
と独り言をもらす。
そういって、身体を起こす。
???
なんか身体が軽い。
あれ?
自分の身体を見るが特に変わりはない。
・・・気のせいか?
そう言い聞かせながら、制服に着替えて登校する。
「おはよー。善」
瞳だ。
「あぁ、はいはい。おはよ」
「なによ、素っ気無い挨拶ね?」
「そんなことはないよ?あはははは」
そりゃぁ、事実を言っても理解出来ないだろうし、言うつもりもない。
今日の俺は昨日の俺とは違う世界にいる。つまり、今の瞳が知る俺ではないのだから。
「そういえば『マリアン』見付かったんだってー」
「ん?」
「愛ちゃんの猫だよ」
あれれ?物語が続いているのか?
「おぉ、それは良かった」
「みんなで必死に探した甲斐があったねー」
と嬉しそうだ。
まぁ、俺は、全然違う過去を辿ってきた訳だが。
「お・・おう」
まずは、どういう風に世界が変わっているかを確かめないといけないのか?
左腕に絡み付いてくる。
その数分後、どこからともなく『五月」が現れて俺の右腕に絡み付いてくる。
普通なら、両手に花で『わーい』なのだろうが、今の俺にはそんな余裕すらない。
そして、学校に遠くない交差点の横断歩道を渡ろうとした時
「あーーーーー!アンタら私の善になにしてんのよ?」
とパンを片手に『師走』が現れた。
俺の頭の上にクシュクシュという表現が正しいような螺旋が走る。
なんじゃ、こりゃ?
パンを咥えて当たる前に、こうなったのだろうか?
-チリン-
鈴の音が鳴った。
「あ、マリアンお見送りにきてくれたの?」
師走が、その猫を見て言った。
「にゃーん」
師走の足にまとわりついている。
そして、俺に向き直り器用に俺の肩まで登ってきた。
(善さん、私ですよ。ソフィーです)
それは周りには「にゃーん」としか聞こえなかったであろう。
しかし俺には、ハッキリと聞こえたのだ。いや、頭に響いたのだ。
「おっ。さすがはマリアンだねぇ。良く私の気持ちを分かってる」
と師走。笑えん。
(いくら、頭の回転が速くても状況は理解できるはずがないので、お助けしにきました。今回だけのサービスですからね)
???
(んー?マリアンがいて、その身体にソフィー?)
(あぁ、マリアンさんは善さんのことが好きらしいので、お願いしたら身体を貸してくれました)
ますますワカンネ。
(あはは、私はこういうことも出来るって覚えていてくれればいいですよ。特別です。まぁ、合意がないと無理なんですけどね)
(お前は、一体何者なの?)
当たり前な質問をぶつけてみる。
(全てを統べる神の僕ですかね?)
(前に、俺が現人神になるみたいなことを言ってたよな?それとも違うのかい?)
(私のマスター>現人神>私>人間(今のアナタ)といえば分かりますかね?)
(じゃぁ、今の俺は最下層か?w)
(それも少し違いますねー)
???
(段々、理解出来ますよ。すでに軽くは自覚してるはずなんですけどね・・・)
?????
(まず、この世界の善さんが、どういう影響を及ぼしたか?だけ話しておきますね。これはこの世界にくるまでにしてきたことです)
その話によると
茜は、高校入学早々にその容姿から先輩に目を付けられていて(この場合は好かれていた)しつこく付きまとわれていた。
それを俺が「嫌がってるから勘弁してあげてください」といったことから始まったらしい。
結果的には、俺は一方的に殴られたみたいだが。
瞳は、中学時代人気が有り、瞳に告ってフラレタ男子たちから、卒業式の日に陵辱の標的になったらしい。レイプ寸前だったが、そこに俺が偶然通りすがり、上半身裸同然の茜を助けた。
その時の俺は悪鬼のように1人の鼻を折り、違う1人のフトモモの骨を折り、最後の1人の肋骨を肘で折ったということだ。
高校が別になるということも原因の一つだったのだろう。
師走は、前述のままらしい。
(んで、それがどうしてこうなった?)
(皆さん、好意をもってるっぽいですねー)
アホか、なんで、そんなことで好意を抱くんだよ・・・。
(あれれ?なんか納得いかないようですね?生殖適齢期だと強いオスに惹かれるんですよ?)
(俺は、強くなんかない・・・当たり前のことをしただけだ)
(女心がわかってないですねー)
そして、耳元で「にゃーん」と鳴くと消え去った。
「あら?家に戻ったのかな?」
師走が不思議そうな顔をしながら言った。
校門のまえにつくと生徒会長の『秋月』が立っていた。
「なんで、いつも『ハーレム』状態なんだろうねぇ・・君は」
キラーンとメガネが光る。
「お、俺に言うなっ!」
「そのうち、きっと殺されちゃうよ?君の周りの女性は親衛隊すらいるほどの人気者なんだから・・・」
あ・・・そういえばそうだ。
大体、なんでこんなに可愛いのに俺なんだ?
「我、愛しの『バービー』!」
と言って山成が師走に走り寄る。
ホルスターから、『92』を取り出し、スライドさせる。
乾いた『シャカッ』と言う音が響く。
「殺されたいの?」
見るまでもない。背中から殺気が漂っている。
「ひぇーーーーー。なんでーーーー」
と山成が逃げていく。
「相変わらずだねぇ・・・」
と秋月が言った。
(ねぇねぇ?それって実銃で実弾装填してるよね?それも生徒会長はスルーなの?)
頭痛い。