少しだけの理解
目の前に光がある。
(う~ん、これは死んだんだろうな)
「やあやぁ、ソフィーですよー」
あまり聞きたくない声だ。しかも楽しそうだ。
「俺は、死んだんだよな?」
「そうでーす!またしても・・ですね」
いつの間にか白い柱が表れ、ソフィーがそこに背中をもたれかけている。
「痛みと死んだ時の記憶が残ってるんだが?」
「そりゃそうだ」
嬉しそうに笑う。
「それがなければ、自分を認識出来ないでしょう?」
???
「アナタにシュレディンガーの猫の話をしたのをおぼえていますか?」
「ああ」
「日本語でいうならば『蓋を開けなければ分からない』ということですが、分かりますか?」
「蓋を開けて結果は出るが『あくまで結果で見るまでは両方の可能性がある』でいいのかな?」
「あはは、正解です。では、アナタが世界線を渡るときに、元々いたアナタはどうなるでしょう?」
う~ん。考えたことなかったな。
「ですよねー」
とソフィは俺が何を考えているか理解したようだ。
「えーとですね。同じ世界線の同じ時間に、同じ人間は存在出来ないのです。それは神と呼ばれる存在でも無理です」
「良く分からないのだが?」
「さっき、『蓋を開けるまでは分からない』と言ったでしょう?まぁ、回りくどい言い方はやめましょう。アナタが世界線を移動したときには『蓋を開けてない1:1』の状態になります」
その言葉で理解した。
「じゃぁ、俺は死ぬけど・・・元の世界線の俺は生きてるってことか?」
「正解でーす!」
ソフィーが続ける。
「それが、アナタを受け入れる世界なのです。そして、アナタの力でもあるんですけどね?たいきょく図は、アナタを簡単にしめしたもの」
「難しいことばかりだな」
「そうですね。私は分かっていても伝えることは禁じられているのです」
そして、彼女?は言った。
「新しい世界へ、ようこそ」
と。