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その頃、屋上では

 師走が、夕日を背に受け立っていた。

部活やら、なんやらで一番安全なのが屋上だからだ。

目の前に『山成』が膝をついて、手を頭の後ろで組んでいる。

「アンタは、毎回毎回私を傷つけないと気が済まないの?」

「違う!今回は猫が勝手に俺の後ろをついてきたんだ!」

「アンタが私にしたことは一生忘れないからね?」

「だから、誤解だってば・・・」

「アンタは小学生の頃から、私をイヂめてきた」

「それも誤解だって」

師走の目は血走っていた。

「私に『バービー』というあだ名を付けたのもアナタでしょう?」

そう。『バービー』という隠語で今でも呼ばれているのだ。

もちろん、キレイな上にボン、キュッ、ボンなのだが。

日本人離れはしている。

問題があるというなら身長だろう。

(小さいからなぁ・・・)


 俺は自分の直感を信じて屋上に行った。

そして、その光景を目にしたのだ。

拳銃を手にしている師走の姿を・・・。

「おい。何してるんだ?」

師走に問う。

「善ちゃんには関係ないことよ」

「これを見て、3猿は無理だろう」

「見ざる、聞かざる、言わざる・・・か」

師走は悲しそうに微笑んだ。

「でも、これは私のせいじゃない!」

「じゃぁ、誰のせいなんだ?」

「全部、コイツが悪いのよ!」

「バービー?」

「それだけじゃないわ」

表情が見る見る曇っていく。

「ねぇ?善ちゃん。私がコイツのせいでどんな扱いを受けたか知っているでしょう?」

「・・・。」

知っている。

本来ならば『天才』と呼ばれるほどのIQを持ち、しかも、それを社会に反映させてきた。いわゆる『世界の頭脳』である。

特許も数多く取得している。


 だが、彼女は世にその姿を晒すことはなかった。

彼女は『紛れもない天才』で

俺は『たまたまIQの測定値が良かった』だけである。

天才にはほど遠い。

「知ってるよ」

「じゃぁ、私がすることを見逃して」

「残念だが、見てしまった以上・・・無理」

「アナタだって、同じような経験をしてきたでしょう?」

返す言葉もない。

確かに経験してきたのだから。


 影になっていて良くは見えなかったのだが、彼女が手にしているのは『92A1』ベレッタ製の一番コスパに優れている銃だ。

女性でも撃てる上に殺傷能力の高い銃。

噂は、噂ではなかったのだ。

どうみても、モデルガンには見えない。

自動拳銃でありながら、17発を装填出来る銃。

それを、山成の額に当てている。

「それを置いてくれないか?」

銃口が俺に向いた。

それは俺が望んだ状況でもあった。

いくら反動が少ないといえ、0距離では的ははずれない。

それが10m先の標的に変わったのだ。

女性でも撃てるのが拳銃だが、反動は少なくない。


 しかも、片手で標的を狙っている。

(まぁ、俺が標的なのだが)

「ワンハンドグリップで人を撃てるのかい?」

10m離れれば、HEADSHOTは片手じゃ『ほぼ』無理だ。

的の大きい体を狙っても片手じゃはずすこともある。女性の腕力じゃかなり無理がある。

とたんに、両手で握り直そうとする。

その隙をついて、俺は師走にタックルする。


パン。


聞こえた時には、お腹が熱い。そして、熱いのに寒かった。

「違う。こうじゃない・・・」

師走の声が聞こえた時には、俺はすでに意識を失う寸前だった。

猫の『マリアン』がどこからともなく現れ、師走が銃を握る手を両前足でパシっと挟んだ。

師走の手から銃が、落ちた。


 そして、再びソフィーに逢う事になる。


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