お星さまつかまえた
それは夜も長くなり始めてきた秋の晩の事でした。男の子が一人、ガラスでできた小瓶をもって窓辺から星空を眺めていました。流星群の降る夜にガラスの小瓶を空に向けると、流れ星を捕まえられるという噂が本当かどうか確かめてみたかったのです。
「本当に捕まえられるのかな」男の子は疑いつつも、小瓶を窓辺に置いたり持ち上げたりして流れ星が降ってくるのを待っていました。
やがて夜も更け眠くなってうつらうつらしていると、キランと空を流れ星が横切っていきました。ひとつが流れると、後を追うように次々星が空に線を描いて消えて行きました。男の子が夢中で小瓶を掲げていると、カランと何かが当たる音がしました。見てみると、小瓶の中にキラキラ光り輝く小さな星が一つ入っていました。
捕まえることに成功した男の子は喜びました。しっかりコルク栓をして、明日学校へ行ってみんなに見せびらかしてやろうと小瓶を机の上に置いて、ベッドに入り眠り始めました。
「おい」と声をかけられて男の子は目を覚ましました。目の前に黒いフードを着たいきものが宙に浮いていました。びっくりして起き上がると、いきものは「その星を返してほしい」と言ってきました。
「それはとても大切なものなんだ。返しておくれよ」といきものは何度も頼みましたが、突然やってきて星を返せと言ういきものをよく思わない男の子は「これは僕のだから」と意地悪を言って返しませんでした。
「わかった、わかったよ。君のお願いを一つだけ叶えてあげるから、お願いその星を返しておくれよ」と頭を下げたので、しぶしぶ小瓶を渡しました。コルク栓を取ると、星は空へ向かって勢いよく飛び出し、流れ星となって消えていきました。
「ああよかった。約束通り、君のお願いを一つだけ叶えてあげるよ」星を見送ったいきものが言いました。
「じゃあ空を飛びたい」と男の子が答えると「それならお安い御用さ」といきものがキラキラ光る粉をふりかけて、男の子の体はふわっと浮き上がり、そのまま窓を開けて二人は空を昇っていきました。いきものの後に続いて、男の子は夜空を自由に飛びまわりました。
最初はすごいすごいと嬉しそうにしていましたが、ふと急に心配になりました。気が付けば二人は高層マンションも、東京タワーも超えたような高いところを飛んでいました。ちゃんと降りられるか不安になったのです。
「ねぇ、そろそろおろしてよ」と男の子が言いましたが、いきものは無視して昇り続けました。男の子はそれに引っ張られてグングン昇って、家も町も豆粒のように小さく遠ざかっていきます。
「おろしてってば。もうお家に帰りたいよ」怖くなって男の子はとうとう泣きだしてしまいました。すると、いきものは止まって言いました。
「叶えられるお願いは一つだけだよ。そう約束したじゃないか」