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こいつです。こいつがアレです

久しぶりだな。俺だよ。俺俺。

 冒険者ギルド ペスカトーネ東支部、俺は上機嫌でその扉を蹴り開けた。

「オラァクソども! しけた面晒しやがってぶっ殺すぞ!」

「嬢ちゃん、頭がおかしいのは大いに結構だが、もう少し静かに入ってくれねえか?」

「テヘペロリンチョ★」

 初めて見る冒険者に怒られた。

 今まで甘やかされて育ってきた俺は怒られた事が無かったので悲しみが鬼なった。

 そんな俺に、受付嬢が声をかけてくる。

「リンさん、リンさん」

「なんだよコノヤロー! 俺が何したってんだよぉおお! ち、違う、コレはただのビタミン剤じゃ!」

 地面のタイルをナイフでめくろうとしている俺を引っ張って個室に押し込める受付嬢。

「お、俺をこんな所に連れ込んで何のつもりだ! エッツィ! 痴女! 変態!」

「・・・・・・依頼はどうなりましたか?」

 氷点下の視線で聞いてくる受付嬢。興奮しちゃう。ビクンビクン!

「なんだよ依頼って? 俺はそんなのしらねーよ。マジで。しらねーから」

「いやいや、困りますって。だいたい、リンさんの信用にも関わってきますよ」

「俺に信用なんかねぇよ! 知ってんだぞ、お前らが俺のことを影で絶世の美少女とか女神光臨とか今世紀最高の奇跡とか呼んでるの」

「呼んでません。いいですか、リンさんほどの実力者がずっとFランクなのは、低ランク冒険者からすれば迷惑極まりないんですよ。強いんだから相応の依頼を受けてくれなきゃ困るんです」

「そんなん言われても、俺、身分証明書が欲しいから登録しただけで、別に仕事なんかしたくないんだけど。良い迷惑なのはこっちなんだけど」

「じゃあ辞めろよぉ! あ、ウソです。いや、もっとランクアップ試験とか受けて実力相応の、討伐依頼とか受けて欲しいんですよ。『もったいぶって実力者を囲ってるんだろ』って、これ何か分かります?」

「知るか」

「本部からのうちへの指令はそればっかり! 分かりますか? あなたの事ですよ!」

 タバコに火を点けて深く吸い込んだ。

「すーーー・・・・・・ぱーゲホゲホゴッホ! フィンセント! ファン! ゴッホ!」

「何をふざけてるんですか!」

「うるせー! この『アルルの女(ジヌー婦人)』は1890年にゴッホに描かれた人物画で、フランス・アルルのカフェの経営者だったとされています(ウィキペディア出典)」

「だから何の話なんですか! いいですか! 期限は明日までなんですよ! それまでに成果を持ってこないと・・・・・・どうなるかわかりますか?」

「はい、わかりません」

「殺します」

「は? 俺を?」

「いえ、本部の人間を。一人残らず。その後捕まる前に自殺します」

「俺が言えた事じゃないけど、アンタ最低だね」

「そう思うんならさっさと成果を持ってきてください」

「はい」

 俺は採取してあったトリカブトをポケットから出した。

「ちょぉおおおお! 何でポケットから猛毒素手で出してんですか! 殺す気ですか!」

「だってビンとか持ってないんだもん」

「そういう事を言ってんじゃねぇよ! もうランクアップさせたから明日また来てください! いいですね! あ! ちょっとコレ、ビンに詰めてください! 死にますよ! 私が!」

 うっさいなぁ。と思いながら、俺は部屋に置いてあった空瓶にトリカブトを詰め込んで、部屋を出た。

「明日も来ないと殺しますよー!」

「おおこわ。リン、お前また何かやらかしたのか?」

「何もやらかさなかったから怒られてんだよ」

 ギルドバーにいたおっさんのハゲた頭を叩きながら言った。

「お前も魔法使いなんだし、討伐に出りゃいいのによ。稼ぎもいいぜ」

「そんな事せんだかて俺ぁ充分金持ちだよ」

「そりゃ羨ましい話だね。ってかお前俺の頭で遊ぶなよ」

「ケチな事言うなよ」

 俺はギルドを後にした。


「ただいま皆!!!!!!111!!1!1」

「ここはあんたの家じゃないよ」

 in宿屋

「俺が居ない間に来客は?」

「知らないよそんなの」

 クソ宿屋が。

「部屋にいるから食事は届けておいてくれ」

「はいよ」

 払いはいいからそこは素直だ。

 俺は部屋に戻ってパソコンを開く。

「はぁ。皆何してっかなぁ」

 デスクトップには家族写真。俺を中心に五人で写った写真だ。最後に家族全員が揃った三年前に撮ったもので、今の俺には、数少ない家族との繋がりでもある。

「うっひゃぁああああエヴァちゃんはかぁいいねぇ~~ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ」

 叫びながら妹の顔(の部分のモニタ)をレロンレロンと舐めていたら背後の扉が開いた。

「…………置いとくよ」

 振り返ると机の上に湯気の立ったシチューとパン、肉を焼いたものが乗ったトレイが置いてあった。

「この俺に気配を悟らせないとは……プロの殺し屋か?」

 俺は殺し屋の料理を食べた。おいC☆

俺だってばあちゃん!

そう!

息子の!

息子のぉ、そう息子の息子、孫のぉ!

孫のぉ、健二!

違ぇよ! 誰だよ健二って! え? お前の孫か!

すいません、間違えました。

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