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ドワーフ達は仲間を守るために亡くなった戦士の埋葬が済むと、フンベルトを中心に今後の事を話し合っていた。
その間、クラン達もまた、これからの事を相談する。
「この後どうするといっても、ルイザの街に帰るしかする事無いのよね~」
仲間の救出が成功した後に、フンベルトにヴィルヘルムが散った時の戦いの事を尋ねたが、役に立ちそうな帝国の情報は得られず、多少態度が軟化したドワーフの少女に黒骸騎士団が襲って来た時の事をクランが尋ねても、『突然攻め込まれて逃げ出したが捕まって拘束された』としか彼女も答えられなかった。
元々必ず有益な情報を入手できると期待していた訳ではないが、大した情報を得られなかった事に気落ちしていると思われたクリスがそれを感じさせず軽く言う。
「じゃあ、それでいいわね」
他の意見を口にする者がいないためクリスが締めの言葉を言うと、この場に集まった時から抱いていた疑問をクランが慌てて口に出す。
「グレックさんがいないようなんですが?」
「ああ、グレックは黒骸騎士団の後を追っているから」
あっさり答えたクリスの言葉に皆の視線が集まる。
確信犯とも言うべき彼女の態度に、レナが呆れながら皆の意見を代弁した。
「まったく聞いていないな」
「あら? 言ってなかったかしら?」
クラン達が黒骸騎士団から捕虜になったドワーフ達を救出して脱出する時、グレックだけその場に潜み撤退する彼等の後を追跡するように指示したと、クリスがまったく悪びれた様子も無く説明する。
「今頃言う? そういう事」
イヴが不満そうに呟くと、付き合いの長いレナの反応に物足りなさを感じていたクリスが、悪趣味な事に嬉しそうな表情で答える。
「ごめんなさいね~。皆忙しそうだったから言いそびれちゃって」
「連絡の手段は有るんですか?」
むくれるイヴを置いて冷静にクランがクリスに尋ねると、レナと同じく付き合いの長いクランの応えにも非難の色が含まれない事に若干不満そうにクリスが尋ね返す。
「有ると思う?」
「いえ、無いと思います。じゃあルイザの街に戻らないと、グレックさんの報告も受けられないって事ですね」
先回りしたクランの答えに、クリスがつまらなそうな表情を浮かべるとユリが両手を合わせる。
「ルイザの街に戻って、いつでもグレックさんの連絡を受けられるようにするのが今の目的ですね」
「そうだな。だが、それほど急ぐ必要は無いだろう。どんなに急いでもグレックの掴んだ情報の方が、私達より先にルイザの街に届くとは考えられない」
レナがユリに答える。
グレックが単独で黒骸騎士団の追跡を行う事は、レナも諸手を挙げて賛成する事は出来ない。
だが、クリスがそれを指示したという事は、彼一人でも問題が無いと判断したのだろう。
もちろん、クリスも一緒の方が危険度と言う意味では低くなる。
しかし、いつまでもルイザの街から幹部が二人も離れる訳にはいかない。
あの状況では仕方の無い判断だったのだ。
「じゃあ、ドワーフの人達の話し合いの結果を待ってから、ルイザの街に帰るのでも平気ですか?」
「ああ、問題ないだろう。ユリは彼らがどうするか知りたいのかい?」
「はい。もしかしたら、私でも手伝える事が有るかも知りませんから」
はにかみながら答えたユリを見て、レナはクリスに言う。
「それでいいか、クリス?」
「好きにすれば、ドワーフ達の答えもすぐ出るだろうしね」
クリスは興味無さそうに答えると、一人その場を後にする。
「私、我儘を言ってクリスさんを怒らせてしまいましたか?」
ユリが不安を滲ませながら聞くと、レナが頭を振る。
「自分の悪巧みの反応が薄かったんですねただけだ、気にするな」
そう言いながらレナは、クリスの後姿に視線を向けた。
「この場所を破棄して、我らの集落に皆で移動する」
ドワーフ達の話し合いは半日程度で終わり、フンベルトの言葉が告げられると皆出立の準備を始める。
一度黒骸騎士団に襲われた場所に止まる事は考えられず、それは妥当な判断だった。
「クリスさんの言った通り、皆さんが決めるまで時間は掛かりませんでしたね。私は何か出来る事があるか聞いてきます」
ユリはそう告げると、慌しく動き回るドワーフ達の所へ向かう。
「じゃあ、あたしも手伝ってくる」
イヴも後を追うと、その場にはレナとクラン、そしてクリスが残された。
「しょうがないな、ユリとイヴにだけ手伝わせるわけにはいかないだろう。私達も手伝うとするか」
だが、レナの言葉に頷いたクランとは対照的に、クリスはユリ達とは反対方向に歩を進める。
「この分だと出発は明日の朝になるでしょ。あなた達は手伝ってなさい、わたしは明日まで休ませて貰うから」と言い残して




