表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界での過ごし方  作者: 太郎
願い(仮)
94/130

92

「なるほど、ドワーフの暗視能力を活用するのか……」


クランの作戦を聞き終えたレナが感心する。


松明を持った数名のドワーフが一度黒骸騎士団の注意を引き彼らを誘き出す。

ある程度離れた所に隠れていた残りのドワーフの所で、自分達の持っていた松明を破棄すると同時に、イヴの精霊魔法で敵の松明を狙い彼等の明かりを奪う。

突然襲い掛かって来た暗闇に光に慣れていた彼等の目がなれる前に、伏兵と一緒に襲い掛かる。


「そんなに上手くいくでしょうか?」


グレックの懸念にクランが答える。


「自分達の力を過信している彼らは必ず掛かります。特に亜人と呼び、ドワーフやエルフを見下す人間なら余計に。でも、これだけで黒骸騎士団を殲滅できるとは思っていません。クリスさんの言ったとおり、‘死神’と呼ばれる人物の確保と、連れ去られたドワーフの奪還が目的ですから。ここまでは陽動です」


「陽動?」


彼の真意が読めなかったクリスが聞き返す。


「はい。ドワーフ達が敵を引きつけている間に別の人間が忍び込んで捕虜を解放し、それと同時に‘死神’と呼ばれる人物の確保を行います」


「同時に? ‘死神’の確保に戦力を集中した方が良いじゃないのかな?」


クランの言葉に、作戦の内容に疑問を感じたレナが口を開く。


「今回、僕達はフンベルトさん達の手伝いに来ていますから、あくまで捕らえられたドワーフ達の奪還が最優先です。そして次に‘死神’の確保です。でないと、フンベルトさん達が納得しないと思います。一時的にでも敵に背を見せる事を彼らは良しとしないと思いますから。なにせ、自分達の名誉のため、玉砕覚悟で王の遺児を救出しようとする人達ですからね」


「……しょうがないわね」


クランの言う事を考慮し、クリスが不承不承といった様子で答える。

今後のドワーフ達との付き合いにも必要な事だと自分に言い聞かせながら。


クランは彼女の返事に満足そうに頷くと続きを話し始める。


「では次に人員配置です。ドワーフの戦士達に同行するのはレナさん、イヴさん、ユリさんです。捕虜の救出に向かうのは、クリスさんとグレックさん。最後に、‘死神’の確保は僕が向かいます」


「何でわたしが捕虜の救出でクランさんが‘死神’の確保なの!? 逆にしなさい!」


目を見開き反対するクリスに、クランが淡々と答える。


「今回の作戦でもう一つ重要な事があります。クリスさんとグレックさんの関与を隠蔽する事です。二人の姿を見られたら、グランデル公国がかなり帝国の実験体の施設に近づいている事を知られてしまいます。ですから、二人の姿は帝国の人間に見られる訳には行きません。そして、名の知れているレナさんが関与している事を知られるのも得策では有りません。何処からクリスさんの関与が察知されるか分かりませんから。今回が最後のチャンスならまだしも、今回失敗しても捕虜になったドワーフ達から情報を得られるかもしれません。この間みたいに帝国が施設を破棄したらまた振出しです」


クランがクリスの瞳を見つめ、お互い譲れない思いを視線に乗せ主張しあう。

しばらく無言の二人だったが、最後にはクリスが諦めたようにため息を吐く。


「……分かったわ。だけどいいのね? 相手は‘死神’よ。伊達に二つ名持ちじゃないわ。わたしやレナだって相手が後の事を考えないで精霊魔法を使って来たら、一対一で倒せるか分からないわよ」


「分かってます。精霊魔法と剣を使える人の怖さはレムリアース王国で思い知りましたから」


若干表情を和らげたクリスが怪訝そうにクランを見る。


「レムリアース? あなた失踪してた時に誰と戦ったの? ジャックとか言う馬鹿は精霊魔法使えなかったはずだけど?」


「馬鹿って、こんなこと言う義理は無いですけど酷いですね…… 僕が戦ったのはミシェルさんです」


「ミシェル? レムリアースのミシェル!? ‘女王の懐剣’と戦ったの!?」


驚きを露にしたクリスに、彼女の言った言葉の意味を理解したクランも驚く。


「はい、っていうか。ミシェルさん二つ名持ちなんですか!?」


「知らないで戦ったの? よく生きてたわね……。エルフだから誰でも知ってるって訳じゃないけど、それなりに有名よ。亜人じゃなくて人間だったら、そうとう有名になってるわよ」


感心したような、呆れたような表情でクリスがクランを見る。


「そうなんですか…… 最初に戦った時は肩をざっくりやられて気絶しちゃいましたけど、そんなに腕の立つ人だったんですね。でも、次に手を合わせた時には何とか一本取れましたから、相手が‘死神’でも何とかなりますよ。剣の腕も立つ精霊使いと戦うのは初めてじゃないですから」


「バカって本当に怖いわね、怖い物知らずって言うか、無知って言うか…… ああ、無知だからバカなのか……」


納得したように頷くクリスにクランは若干引きつりながら確認する。


「バカでも何でもいいですけど、配置は僕の言ったとおりでいいんですね?」


「……いいわよ。知らずに‘女王の懐剣’とやりあってまぐれでも勝った事あるんでしょ。だけど何で‘女王の懐剣’と戦う事になったか帰ってきたら教えなさい。あなたの鎧、肩の所補修してあるの彼女のせいでしょ。ウォーベアーの鎧が切り裂かれるなんて不思議だったのよ」


「分かりました。すべて終わった後、きちんと話します」


「約束よ、必ず説明しなさい」


そういったクリスの瞳には、クランの身を案ずる光があった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ