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異世界での過ごし方  作者: 太郎
願い(仮)
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辺りが暗くなる頃にルイザの街に辿り着いたクラン達は、街の門を潜って早々クリスのアジトに向かった。


そこは決して治安の良いと言えない場所に立てられた建物だった。

歩くと大きく床が鳴る入り口を通り、明り取りの窓からの光でかろうじで中の様子が伺える部屋に入ると、クリスがランプに火を灯す。

ほぼ真っ暗だった部屋から、薄暗い汚い部屋と変わった室内に置かれた椅子にクリスが腰を下ろす。


「あなた達も立ってないで座ったら?」


全員が思い思いの椅子に座ると、クリスが改めて皆に話しかける。


「ここを立つ時にはこんな大所帯になるとは思ってなかったけど、まあいいわ。さてと、村で詳しい話が出来なかったから改めてわたし達の事を話すわね」


クリスに視線を向けられたユリとイヴは緊張した面持ちで頷く。


「わたし達の仕事はヘリオン帝国の謀略を阻止する事。工作員を捕まえたり殺害するのが仕事ね。それと、帝国は子供を使うから、怪しそうな子供や、そんな子供達が集まる場所を突き止めて皆殺しにするだけ。簡単でしょ?」


なんでも無い事の様に説明するクリスに対して、ユリとイヴの表情はみるみる間に強張ったものに変わる。


「子供を、殺すの?」


小さく呟いたイヴの言葉にクリスが答える。


「そう、『お父さん、お母さん、助けて!』って叫ぶ子供を殺すの。工作員かどうかなんて関係ないわ。怪しい子供を見つけたら殺す、それがわたし達の仕事。子供を殺してお金を貰うなんて、最高の仕事だと思わない?」


口元を歪めるクリスを、まるで悪魔を見るような目で見たイヴが信じたくないという気持ちで尋ねる。


「……クランも ……子供を?」


「殺しました」


クリスではなく、本人の口から語られた返事にイヴは思わずつぶやく。


「うそ……」


イヴは突然目の前の少年が別人になった様な恐怖に、震えそうになる手を握りしめる。

しかし、彼が目を伏せ自分の視線から逃れた事に、それは本当の事なんだと悟ると、イヴは頭を殴られたような衝撃を受け、それ以上口を開くことが出来なかった。


「あら? あまりにも魅力的な仕事で思わず言葉を失った? それとも…… もしかして子供を殺すのが嫌だった? 万が一そうなんだったら、わたし達の事を黙ってるって約束するなら帰ってもいいわよ。本当なら話を聞いた人間はここで殺すんだけど、レナの仲間なんだもの、特別よ」


クリスは自分の言葉に反応を示さないイヴに笑いかけるが、彼女はただ俯く事しかできずにいた。


だが、ユリはクランをまっすぐ見つめ問いかける。


「クランさんは自分で望んで殺したんですか?」


その問いに彼は首を振り否定する。


「僕に力が足りなかったんです。僕にもっと力が有れば、サラさんを殺さずにすんだんです……」


ユリは彼の口にした名が、自分も会った事のある少女のものだと気付いたが、ここで自分が動揺すればクランを傷付けると、表情に出るのを堪える。

そして、クランの悲痛な思いにユリは迷う事無くクリスに告げる。


「私は最初の通りお手伝いさせていただきたいと思います」


一寸驚いたような表情を浮かべたクリスが、ユリの意思を確めるかのように再度口を開く。


「そう、じゃあ子供を殺してもらう事になるけどいいのね?」


「私はクランさんが望んで人を殺めたとは思えません。きっとどうしようもなく悩んで、苦しんで、仕方がなく手を掛けたのだと思います。だから私も、最後まで子供達を助けるために悩んで、苦しもうと思います」


「……答えになってないけど、好きにしなさい。それでイヴさんはどうするの?」


クリスに問われたイヴは、答えを口にする前にユリに尋ねる。


「ユリはクランが子供を殺したと聞いてショックじゃなかったの?」


「私はクランさんが進んで人を傷つけたりしない人だと信じています。イヴさんはクランさんの事をどう思っているんですか?」


「あたしだってそう思っていたよ。だけど、クランの口からそうだと言われたら、誰だってショックを受けるでしょ」


「そうですね、きっとイヴさんはクランさんの事を信じていたんだと思います。だから、彼が子供を殺したと聞いた時に受け入れられなかった」


「あなたは平気なの?」


「起きた事と、真実は違う事も有るから……」


ほんの少し悲しそうに微笑みながらユリが答える。

その表情にうかがい知ることの出来ないものを感じたイヴは、ただユリを見つめる。


「それでどうするか決まった?」


二人の会話が途切れた所で、再度クリスが問いかける。


「……あたしもここに残ります」


しばらく悩んだ上で答えを出したイヴと、クランを信じ答えたユリを見てクリスがクランに言う。


「あなたを信じるんだって。二人を裏切らないように頑張んなさいよ」


「はい」


珍しく優しげな顔をしていたクリスにクランが答えた。


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