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お読みいただきありがとうございます。
今後の更新の件で、ご連絡させていただきたいと思います。
私事なのですが、9月10月とレポート提出がありまして、更新頻度が見通せません。
そのため、現在書いている章を今月中に終わらせたいと考えています。
この章も今回で折り返し地点になるので、今後2,3日に一度投稿していく所存です。
愚作ですが、今後ともよろしくお願いいたします。
ドワーフの集落から数週間ぶりに戻ったクリスが、アジトの座り慣れた椅子に腰掛け一息ついていると、ドアがノックされる。
「どうぞ」
クリスが返事をすると、グレックがドアを開けクリスの前までやって来た。
「久しぶりの現場、お疲れさまでした」
「はあ、本当に疲れたわ」
グレックの言葉に、イスに深く腰掛けたクリスが答える。
クリスの滅多に見ない姿にグレックの顔に苦笑が浮かぶ。
「ドワーフ達との交渉はどうでしたか?」
「まあ、上々の結果かしら。本命は期待外れだったけど、元々それほど期待してなかったしね。お土産にわたしとレナの剣がそれぞれ二本ずつ、ダガーが三本、それと……」
話しながら床に置いていたショートソードとダガーをグレックに投げる。
咄嗟に受け止めたグレックが怪訝そうな表情をすると、
「旅行のお土産、あなたの使ってた剣そのぐらいの長さでしょ? 微妙な違いは慣れなさい」
「いいんですか?」
グレックが驚いて聞き返すと、クリスが手を振りながら答える。
「いいのいいの、どうせタダなんだから」
ドワーフの作った剣だ。交渉の材料にも使えるような物を簡単に渡したクリスに、疲労による影響があると考えたグレックが再度話しかける。
「有りがたいんですが、本当にお疲れのようですね」
「精神的にかなり疲れたわね。わたしの気が変らないうちにさっさと退出しなさい」
クリスの言葉にグレックは、かなり大変な交渉だったのだなと推測した。
実際は、クランが料理と酒の話をしたときに受けたダメージだったが。
「わかりましたと言いたい所なのですが、いくつか報告したいことがありまして……」
「早く休みたいから要点だけお願い」
クリスの了解を得たところでグレックが事務的な口調で話し出す。
「まず最初に、フォーク様から首都に来てくれないかとの打診がありました」
「しつこいわね、あの人も。もう何回断ったか覚えてないわよ。適当に断っといて」
クリスは自分の所属する組織のトップの顔を思い浮かべながらため息をつく。
「では次の件ですが、帝国の例の施設の所在に関する情報が入手できました」
グレックの言葉にクリスは表情を引き締め椅子に座り直すと口を開く。
「詳しく報告しろ」
「は、帝国に潜入している密偵から昨日伝えられました。帝国の南の森の入り口付近に例の施設が在るという事です。詳しい位置に関してはまだ確認できていません。」
「奥には迷いの森があるな……、貴様はどう思う?」
クリスの問いかけにグレックは少し考えた後答える。
「……まったく考えられない場所ではないと思います。迷いの森に入る人間に対してエルフ達は容赦しませんが、逆に言えば迷いの森の中に入らなければ攻撃されないという事です。そして、帝国の南にある森の何処からが迷いの森になっているか把握している者は少なく、そのため森に近づく者自体がまれです。知られたくない物を隠すには絶好の場所だと考えます」
「そうだな、わたしもそう考えた」
クリスはグレックの答えに満足そうに頷いた後、指示を出す。
「では明日の朝までに施設の攻略作戦を立案しろ」
「了解しました」
グレックはクリスに一礼すると部屋を後にする。
「あ~、明日の朝まで八時間しかないじゃない」
クリスは荷物を整理して体を拭いた後に残る睡眠時間を考えてため息をつく。
「でもクランさんもいないし、その分疲れないからいいか……」
そう自分に言い聞かせると、荷物の整理を始めた。
翌日。
野生の雌鹿亭でクランとレナが遅い朝食-一般的には昼食と呼ばれる時間だが-を食べていると、突然クリスが現れた。
「こんにちは、レナ、クランさん」
「ああ」
「こんにちは、クリスさん」
挨拶もほどほどにクリスが席に着く。
「……エールちょうだい」
一瞬躊躇した後、クリスが給仕の少女に注文する。
エールの来るまでの時間、レナとクリスの間に微妙な緊張感が漂う。
「お待ちどうさま」
テーブルの上に置かれたエールに手を伸ばして口を付ける。
一旦口を離してテーブルにカップを戻した後、クリスはレナを見る。
視線を受けたレナはクランを見た後、クリスに小さく頷く。
そして二人の間の緊張が解けた。
すっかりリラックスしたクリスが笑みを浮かべて口を開く。
「仕事持ってきたわよ、あなた達」
「は?」
「え?」
口にフォークを運んでいた二人が同時に口を開いた。
「で、街に帰ってきて早々どんな仕事の依頼だ?」
食事を終えたレナが若干不機嫌そうにクリスに聞く。
「なによ、感じ悪いわね依頼者に向かって」
「当たり前だ、昨日帰ってきたばかりだぞ」
「わたしもそうよ」
クリスの言葉にレナが不機嫌そうに眉をしかめる。
「あら、自分の剣を探すのを手伝ってくれた友達に随分な態度ね」
「まあレナさん、せっかくクリスさんが来てくれたんですから話だけでも聞きましょう?」
クランが苦笑しながら二人をとりなす。
「さすがクランさん、どっかの頑固者より話が分かるわね」
「さっさと話せ」
旗色が悪くなったレナがクリスに催促する。
先ほどまで浮かべていた笑みを消したクリスが、口元を手で隠し小さな声で二人に告げる。
「サラとリズ、二人を生み出した施設の調査って聞いたらあなた達は来るかしら?」
「「っ!」」
二人が息を呑むのを見ると、クリスは席を立つ。
「ついてらっしゃい」
クリスの言葉に二人は頷いた。




