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すごく短いです。すみません。
少年がバスタードソードを見つけた日の夕食の席での事だった。
「グレン、狩人になる前は何をやっていたの?」
なんの気なしに聞いてきた少年の言葉に、怪訝そうな顔をしながらグレンが問い返す。
「なぜそんなことを聞く?」
「小屋を片付けていたら、剣や盾を見つけたから。」
裏の小屋で剣の他に、盾も見つけた少年が答えると、厳しい表情をしたカルラが聞いた。
「奥の部屋に入ったのですか?」
「奥の部屋には入ってないよ。入ってすぐの所の部屋の隅に置いてあったんだ」
カルラの口調に一寸びっくりしながら少年が答えると、彼女の顔には剣を見られてしまった後悔が浮かぶ。
「昔、傭兵みたいなことをしていたからな」
グレンが言葉少なに少年に言う。
「そうなんだ。だったらグレン、僕に剣の使い方を教えてくれないかな?」
少し考えてから少年がグレンに話しかける。
だが、グレンが返事をするより早くカルラが答える。
「私は反対です。剣の練習なんかして怪我でもしたらどうするんですか」
少年の願いを拒絶するカルラにグレンが言う。
「いまはいつ戦争が起きてもおかしくない状況だ。そうなったら、こいつも自分の身を守るため、剣を使わなければならない時もあるだろう。俺はこいつが本気なら剣の使い方を教えてやろうと思う」
「でも……」
少年を見たカルラは途中で口を閉ざす。
「おまえが剣を本気で学びたいなら、明日から俺が狩りに行く前に教えてやる」
「ありがとう」
少年はグレンに礼を言うと、カルラに心配させない様に努めて明るく言う。
「心配させてごめん。でも僕、怪我しないように気をつけるから。おやすみなさい」
そう就寝の挨拶をすると少年は自室に戻った。
「剣を教えるなんて、私は反対です。この家にいれば、私もグレンもいます。あの子が剣を覚えなくても危険なことなんてありません」
カルラはグレンを見て、改めて反対であることを伝える。
「あいつの薪を割っているところを見たか? 手にできているタコや、鍛えられている体を見たか?、あいつはただの旅人や村人じゃない。剣士だ。カルラもわかっているだろう。剣を持つうちに記憶も戻るかもしれない」
グレンに、自分の両肩を抱きながら震える声でカルラが言い返す。
「はい、だから剣を取ってほしくないんです。薪を割っているあの子の目は、本人も気づいていないかもしれませんが、憎しみに満ちていました。たとえ記憶が戻らなくても、その方があの子にとって幸せなんじゃないですか……」
「あいつも男だ。自分の進む道は自分で決める。」
そう言うと、俯いたままのカルラを残してグレンも席を立つのだった。