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異世界での過ごし方  作者: 太郎
目覚め
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初投稿です。駄文ですがよろしくお願いします。

「どこだここ?」


狭いがよく掃除の行き届いた部屋のベッドに寝ていた少年が目を覚ましつぶやいた。見たこともない部屋にいるのが不安なのか、きょろきょろ周りを見回している。


「痛っ!」


少年が体を起こそうとベッドの縁に手をつくと、痛みのあまり思わず口から声が漏れる。手のひらを見てみると細かい傷がついていた。


「痛いわけだ」


そうつぶやくと彼は、見覚えの無い簡素な服を着ている自分の体を確認しだした。







「体中に細かい傷があるな、大きい傷には包帯が巻いてある」


普通の人より太い筋肉質な太ももを見ながら、少年は自分の置かれた状況を確認する意味も含め声に出していく。


「大きな傷は右の太ももだけ、それ以外は細かい傷が体中にある。痛みはあるけれど我慢できないほどじゃない。それよりも……」


そう言いながら少年は、丸太を組んで作られたと思われる家を見渡す。そして部屋にひとつだけある窓を見ながらつぶやく。


「窓ガラスのない窓は初めて見たかも」


などと、現実逃避気味な感想を口にしていた。








「目が覚めたか?」


少年に声をかけながら、開けっ放しにしてあるドアから男が入ってきた。


男の髪は黒く、意思の強そうな太い眉と黒い瞳、彫りの深い顔。

身長は190cm位で体の幅などは少年の倍はあり、質素な服を着てはいるが盛り上った筋肉から、容易にボディビルダーの様な体つきをしているのが想像できる。

年齢は30歳はとうに越えているだろうが、40歳にはとどいていないだろう。


声を掛けられた少年は、自分を手当てしてくれただろう相手を見て何で家の中に熊がいるのだろうと、恩人に対していささか失礼な事を考えていた。






男は目を覚ました少年の状態を確認し、歩く事に問題がないと判断すると食卓に連れて行き椅子に座らせる。


さっきは男の事を熊のようだと思った少年だが、向かい合いに座った整った男の顔を改めて見て、イケメンだなーなどと自分の置かれた状況から考えると緊張感のないことを考えていた。


「なぜあんなところに倒れていたんだ?」


男は自分と同じ黒髪で、黒い瞳の16歳位に見える少年に問う。

普通の人間では近づかないであろう森の奥で倒れていた少年に、男は若干の警戒の色を覗かせていた。


「その前に、名前ぐらい交換したほうがいいのではないですか?」


そう言いながら、奥のキッチンからお盆に暖かいスープとパンを乗せた女性が現れた。


その女性は落ち着いた色合いの服に、つややかな黒髪を腰まで伸ばし、切れ長の目に黒い瞳、身長は少年と同じく170cm位で、年齢は20歳前後。無駄な肉はまったくついていないと思われるスレンダーな体に、大きな胸が女性らしさを主張している。


「わたしはカルラといいます。そしてこちらはグレン。よければあなたの名前を教えていただけますか?」


少年の前にスープの入った木製の器と、パンの入ったカゴを置きながらカルラが尋ねた。


「僕の名前は……、なんだっけ?」


少年がカルラに答えた瞬間沈黙が訪れた。








「……なるほど、ここで目覚めるより前の記憶が無いのだな」

 

少年が目が覚める前の事を思い出せないと言うと、腕を組み眉間にしわを寄せたグレンが思わず口にする。


「はい、名前やなぜ森の中で倒れていたか、まるで思い出せません」


自分が何も覚えていないことに軽く混乱した少年だったが、何とか落ち着いたところでグレンから狩りにムーラの森に入った所で倒れていたところを見つけたことを聞かされても、なぜそんなところにいたのか少年はどうしても思い出せなかった。


「これからどうするのですか? って聞いても、記憶が無いのじゃ分からないですよね」


カルラが自分の失言に気づき、ばつが悪そうに少年に話しかける。


「はい、ここがどこかも分かりませんし、どこに行こうとしていたのかも分からないので……」


俯いた少年が、先ほど取り乱したことを恥ずかしく思いながら答えた。


その言葉にカルラの顔に影が落ちる。


彼女の揺れる瞳を見たグレンが、少し考える素振りを見せた後少年に提案する。


「……ならば記憶が戻るまでここにいたらどうだ?」


「ここに置いてもらえるんですか?」


少年がこれからのことを考え暗澹としていたところに、グレンが口にした予想もしなかった言葉に顔を上げる。


「そうですね、このまま出て行けともいえませんし、いいのではないでしょうか。」


カルラも少年を見て微笑みながら続けた。


「ありがとうございます。」


少年はお礼の言葉を口にしたとたん、これからの事に一応の不安も無くなった事もあり、ずいぶん腹が減っていたことに気づいた。

その後、三人で遅い朝食を食べた。薄い塩味と、少量の肉と野菜の入ったスープでも、少年はすばらしいご馳走に感じた。

ただ、硬いパンを食べていたら、だんだん切なくなってきたが。

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