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異世界での過ごし方  作者: 太郎
魔女
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128

アリスの案内で、目的の薬草が生えている崖の麓に着くと、レナが切り立つ崖を見上げ目を細める。


「かなり急だね。ここを登るのは危ないと思うから、上からロープで降りるかい?」


「結構高いから上まで迂回すると日が暮れるわね。下から登りましょう」


レナの隣で崖を見ていたクリスがめんどくさそうに言うと、クランが反応する。


「これだけ急だと、僕じゃ登れないですよ」


「わかってるわよ。わたしとグレックで登るわよ。アリスさん、薬草どんな所に生えていそうかわかる?」


何かをぶつぶつ唱えた後、アリスは一か所を指さす。


「あそこに生えてる」


クリスは目を凝らして見ようとするが、アリスのいう所まで二十メートル位あるため薬草を判別できなかった。


「あなたよく見えるわね。もしかして魔法?」


フードが少し動く、頷いたのだろう。


「大したものね、遠見の魔法も使えるなんて。とりあえず登ってみるから、下から指示して」


アリスの魔法に感心するのもそこそこに、クリスは長い手足を使い崖をするする登る。


「早っ!」


思わずイヴが感嘆の声を出す。

やはり身体能力はずば抜けている。

そうこうするうちに、アリスのいった所まで登りきる。


「あたしが声を届けてもらうから、どっちにあるか教えて」


アリスの指示を、イヴが風の精霊に頼んでクリスに伝える。

何度かそんなやり取りをして薬草を取ると、クリスが下りてくる。


「あとはどこに生えてるの?」


アリスが魔法を使って薬草の位置を確認すると、高いところに生えている分はクリス、比較的低いところに生えているものについてはグレックが採取する事にした。

万が一の事故に備えて、ユリにはいつでも神聖魔法を使えるよう待機してもらい、何度か崖を登り降りして集めた薬草はレナとイヴに持ってもらう。


「こんなものでいい?」


クリスが取ってきた何度目かの薬草をイヴに渡しながらアリスに聞く。


「三回作る分は集まった。でもまだ生えている」


崖を見上げるアリスにクランが注意する。


「あまり取ってしまうと、次に来た時に取る分がなくなっちゃうよ。ある程度残して繁殖させないと。僕が狩人をしていた時は、森で見つけた野草とかは全部取らないで残すように言われたから」


フードを被ったアリスは小さくうなずく。


「じゃあ、帰りましょうか」


クリスの合図でアリスの家に戻る事にした。




その後、数日掛けて薬草を乾燥したり煮詰めたりたりすると、出来上がったそれを数種類合わせ、最後にアリスが魔法をかける。


「出来た」


「薬が出来たの?」


家の中の掃除をしていたイヴが聞き返す。


「聞こえなかった?」


「確認したの、確認。やっと出来たのね。クリスさんに言ってくる」


イヴは家から出ると、外で焚火を囲んでいるクリスに報告する。




皆で焚火を囲みながらの夕食時。


「さて、どうしましょうか?」


クリスが皆を見ながら意見を求める。


「今まで薬は誰に渡していたんだい?」


レナが聞くと、アリスが淡々と答える。


「ここに取りに来た人に渡す」


「薬を渡すために残る訳にもいかないし、誰かに預けた方が良いかな?」


レナがクランを見る。


「そうですね。家に置いてありますって言ったら、盗もうとする人も出るかもしれませんから、信頼出来る人に預かってもらった方が良いでしょうね」


クランはカールの話を思い出しながら答える。


「だったらカールに預けたら? あたし達がここに来てるの知ってるんだし」


カールは、村人達を変えてしまった楽に金の稼げる薬の事を快く思っていないようだが、誰だか知らない村人に預けるよりは良いだろう。

皆イヴの意見に反対する理由も無い。


「じゃあ、明日カールさんに聞いてみましょう。グレック、家調べてある?」


村の情報を集めていたグレックは当然の様に頷く。


「後はカールさんの返事次第でいいわね?」


「あの…… 少しいいですか?」


おずおずとユリが声を上げる。


「なに?」


「もしカールさんが薬を受け取ってくれたとして、その後私達がアリスさんと一緒にここを離れると、ゴブリンを退治する人がいなくなってしまいます」


「……確かにね」


イヴも襲われたし、アリスも何匹か退治した。

多分近くに巣があるのだろう。

このまま放置したら村が襲われるのも時間の問題かもしれない。

普通だったら、ゴブリンを見かけたら村でお金を出して、冒険者を雇って退治してもらうのだが、この村の様子だとアリスの事を隠すために後手後手になるかもしれない。

そうなれば犠牲者も出るだろう。

クリスは不安そうな表情のユリを見る。


(ファムの神官だし、ほうっておくなんて出来ないわよね)


クリスは心の中でしょうがないと苦笑してユリに答える。


「ただ働きになるけどいい?」


「はい!」


ユリが嬉しそうに答えると、レナは微笑み、イヴはユリに良かったねと小さく声を掛ける。


「クランさんもいいかしら?」


「もちろんです。カールさんとの話がついたら、ゴブリンがどこにいるか手分けしてさがしましょう」


「薬の件を話す時に一緒に聞いてみましょ。この森に詳しいカールさんだったら、怪しいところに心当たりがあるかもね。アリスさんにもゴブリン退治をしてもらうけどいいかしら?」


「問題ない。ゴブリンのいそうな場所はわかる」


「そうなの? じゃあ、二手に分かれて探したら効率がいいわね。土地勘がある人が二人いるなら、思ったより結構早く方が付くかもしれないわね」


カールが薬の件を承諾してくれる事が前提となったが、話がまとまった所で明日カールとの話し合いの約束をするためにグレックが一足早く村に戻った。

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