復讐
香港マフィアのボスと、御徒町にある貴金属店の女社長が、鶯谷のホテルで密会していた。
「ああ、なんか今日はいまいちだな。なんか、こう、カッと滾るもんないか? パッと飲んだらガッと勢いが上がるようなやつ」
「それなら池袋に専門店があって、そこにいいのがあるらしいよ。そこの店長、西日暮里のスナックのオーナーもやってて、ちょくちょく西日暮里に来てるから呼んでみる?」
「それ、効くのか?」
「もう、凄いらしいよ。なんでも、飲むやつと塗るやつを併用すると超ビンビンになるんだって」
「ほー! 今はそんなのがあんのか。いくらだ?」
「ピンキリだけど、いいやつは10万くらい」
「なんだよ、たいしたことねえよ。だったら100万くらい出すから10セット持って来いって言ってくれよ」
女社長からの連絡を受けたト店長は、鶯谷のホテルに向かった。
「まず、このカプセルを水で飲んでください。30分後に効果が最大になります。30分待っていただいたら、このクリームを睾丸に塗ってください。硬度、持続力、感度がMAXになります。しかも、発射しても連続で戦えます。個人差はありますが、多い人で連続で7回発射できたそうです」
「へえ! そりゃ凄えな。それがホントだったら全部買うからよ。お前、ちょっと下で30分待ってろ。試してみるから。もし嘘だったら殺すけどな。ホントに効き目あったら100万分買うからよ、待っとけや」
「わかりました。では、下のロビーでお待ちしております。30分したらお電話ください。何発かやってみていただいて、効果に納得していただけたら、またお電話でお呼びください。あと9セット、持ってまいりますので」
「おい、お前これ、どこで仕入れてんだ? 凄えなんてもんじゃねえやな。気に入った。全部買うわ」
「ありがとうございます。では、こちらを。
1つだけ、注意事項がありまして。こちらのクリームなんですが、睾丸に塗る専用になっております。これを万が一、亀頭のほうに塗ってしまいますと大変なことになってしまいますので、絶対に亀頭に塗らないようにお気をつけください。24時間、硬い状態が収まらなくなってしまいますので」
「あ? そりゃ、けっこうじゃねえか。ハッハッハ!」
「いえいえ、危ないですから。排尿もできないくらい凄い硬度になってしまいます。絶対に亀頭には塗らないように、くれぐれもお願いいたします」
「わかった、わかった、塗らねえよ。ションベンもできねえんじゃ、かなわねえや。いやー、それにしてもお前さん、かなりのやり手だなあ。今後とも、よろしくたのむわ」
3年後。鶯谷のホテルで老人が死んだ。夥しい量の精液と血液が天井から垂れていた。その老人の硬く屹立したものの先端には、クリームのようなものが大量に塗られていた。
「あのジジイ、死んだそうだ。顔なじみの刑事が教えてくれた。絶倫死ってとこだな。いつも『えーへーん』って威張りくさってたジジイが、最期は無様にホテルで絶倫死。これ以上の屈辱もないだろう。おふくろが受けた屈辱が、これで少しは晴れたかな」
ト店長は御徒町の女社長に、まるで世間話のように老人が一人死んだことを電話で伝えた。その話は3日以内に東京の裏社会と香港マフィア界隈に伝わることも計算済みだった。
求心力を失い、老人が率いていた香港マフィアは半年で崩壊した。
えーへーん。頭にこびり付いているジジイの威張りくさった態度。復讐は果たした。
最後に残ったパズルの1つ。それは母が遺した何かだ。その「遺品」を探しに、ト店長は旅に出る。




