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第4章 緊急事態!妹リリスのピンチを救え!

晩餐会場には、僕の知っている顔は一つもなかった。

大人たちと話すのは好きじゃない。そもそも、大人と話してもつまらないだけだ。

人混みの中にリリスの姿を見つけ、そちらへ歩いていく。

彼女は何人かの同年代の子たちと一緒だったが、僕を一瞥しただけで、すぐに視線をそらした。明らかに、まだ機嫌が悪い。

アイラ先生から、リリスと交流のある同年代の子たちについて、だいたい聞いてはいた。

最初に口を開いたのはイゾールだった。

「そちらのお方は白雪姫様ですよね。噂に聞いていたのとは、だいぶお姿が違うようにお見受けしますが」

彼女は白いワンピースのショートドレスを着ていた。スカートの裾には銀の糸で繊細な茨の模様が刺繍されており、大人の貴族のようなごてごてした飾り立てではなく、むしろ少女らしい気品を漂わせている。

首元はすっきりと開き、細く白い首筋を見せ、そこには細い銀の鎖がきらりと光っている。髪は濃い茶白色で、だらりとハーフアップに結われ、幾筋かの巻き毛が頬に垂れていた。

「その……実は私、服にはちょっとうるさいところがあって。その服装、とっても動きやすそうですね。私も試してみようかしら」

彼女は数秒間沈黙したかと思うと、聞こえなかったかのようにメインステージの方へ目を向けた。

「お聞きしましたが、あなたが後にステージで踊られるんですよね。その服装で、本当に大丈夫なのですか?」

「あ、そうだった。言われてみれば確かにそうだね。ちょっと待って、後でドレスに着替えてくるよ」

イゾールは理知的で聡明な女性のようだ。彼女に注意されるまで、本当にこの格好でステージに上がるところだった。

「まさか、どこかの小姓から服を盗んできたんじゃないでしょうね?」

こっちはライリィだ。リリスの親友だから、口が悪いのも納得だ。

彼女はピンクのロングドレスを着ている。スカートの裾は何層にも重なったレースのフリルで飾られ、ところどころに散りばめられた小さな真珠が灯りに柔らかく輝いていた。

髪は白茶色で、短いツインテールに結い、シンプルなピアスをしている。くりっとした杏眼はとても印象的だ。

「別に、服は服でしょ? 誰が着たって構わないじゃないか」

そう反論する僕。なぜこんなに可愛い子が、こんなに口が悪いんだろう。

「それより、あなた花粉症でしょ? その髪飾り、花の形をしているけど、長くつけてると大変なことになるよ」

ニャーが教えてくれたんだ。ライリィがこの前、髪飾りをつけていて、くしゃみが止まらなくなったって。

反撃すると、彼女は僕がそんなことを言うとは思っていなかったようで、驚いた顔をした。

「余計なお世世よ!」

さすがリリスの親友だ。

「リリスの伴奏、ちゃんと助けるんだからね!変な手は使わないでよ!」

「安心してよ。きっちり、キマってみせるから」

そう言って胸をポンと叩き、リリスに親指を立てて見せた。

彼女は腕を組み、ふんっ、と鼻を鳴らした。

貴族の娘たちは、美女ばかりだなあ。

「白雪姫殿下」

穏やかで落ち着いた声が割って入った。シリウスは銀灰色の礼服に身を包み、姿勢は松の木のように凛としている。琥珀色の瞳は誠実そのものだ。

ようやく男性キャラの登場だ。

「そのお姿、私よりも騎士にふさわしいお方のようですな」

何て返せばいいのかわからず、僕はてへへ、と笑ってごまかした。

「あなた自身まだ騎士でもないのに、そんなこと言わないでよ、女の子に」

イゾールが彼を白い目で見た。二人の仲はかなり良いようだ。

「はは、すまない。イゾールは相変わらず細やかだな」

イゾールは得意げな表情を浮かべた。彼女の笑顔は、彼のその言葉がとても嬉しかったのだと物語っている。

「まあ、そういうところはいいとこだわ。長年付き合ってるんだから、私のことがわかって当然よね」

ライリィも冗談交じりに言った。

「本当に羨ましいなあ、あなたたちの関係。私には、そんなに仲の良い男の子いないのに」

「では、私がライリィの友達になりましょう」

シリウスもまた、鈍感な男なんだな。明らかに冗談なのに。

案の定、イゾールは不機嫌な表情を浮かべ、肘で彼をトンと突いた。

リリスは相変わらず沈黙したまま。多分、これからの演奏のことを考えているんだろう。

そこに、王妃の声が響き渡った。

「皆様、本日晚餐会はこれより――」

仕方ない、今は食べたり飲んだりする気にもなれない。まずはドレスに着替えに戻ろう。



リリスが淡い金色のドレスをまとい、ハープを抱えてステージ中央に座ると、場内は一瞬で静寂に包まれた。

彼女の金髪は照明に柔らかく輝き、氷のような青い瞳には、かすかな緊張の色が浮かんでいる。

王妃の娘として、彼女は幼い頃から貴族社会の注目の的だった。しかし、今、この静まり返った会場の空気が、彼女にこれまでにないプレッシャーを与えているのは明らかだった。

彼女の演奏が始まり、僕はステージ脇で踊り始めた。

イゾールはドレスに着替えた僕を見て、驚嘆の声をあげた。

「白雪姫様、さっきとは別人のよう! まさか男女両方になれるってわけ?」

「やはり姫らしいドレスがお似合いです。本当にお美しい」

シリウスがそう評価すると、イゾールはやきもちを焼いたように、軽く彼を肘でつついた。

ライリィは以前から白雪姫を知っているので、今回はただリリスをじっと見つめている。

「リリスがうまくやり遂げられますように」

「心配することなんてないわ。彼女はリリスなんだから」

どうやらリリスは、イゾールの目には、とても優秀な人物に映っているらしい。

僕の踊りは次第に落ち着きを増し、観客の視線もリリスから僕へと移っていった。その時、リリスのハープの音に、わずかな不安定な雑音が混じり始めたのに気づいた。

何かがおかしい。場内の空気はますます張り詰める。

リリスは明らかに緊張している。手がかすかに震え始めている。

彼女の肩は強張り、氷のような青い瞳には慌ての色が走った。指先が再び弦を撫でるが、またしてもミスを犯し、本来の流れるような旋律は、途切れ途切れになってしまった。

リリスの心はさらに混乱する。

{どうしよう……しくじっちゃう}

{お母様が……また叱る……}

彼女が泣き出しそうな顔をしているのを見て、僕の胸も締め付けられる。

王妃が彼女を「拉致」して演奏させたのかはわからない。しかし、彼女は他人の目を特に気にするタイプに違いない。今この瞬間、彼女の心は苦痛でいっぱいだろう。

僕は素早く思考を巡らせる。このままでは、彼女の演奏はさらに乱れ、公演全体が失敗に終わってしまう。

そうなったら、ニャーを戻すこともできなくなる。ステージの下の仲間たちも、異常事態に気づいている。

イゾールの目には焦りの色が浮かぶ。

「リリス、緊張してる。このままじゃまずいわ」

ライリィも緊張して拳を握りしめる。

「どうしよう、リリスに恥をかかせられない。私が代わりに上がろうか」

「それじゃ、リリスが失敗したことがみんなにバレちゃうわ。白雪は彼女のパートナーなんだから、そばにいる彼女が何か手助けすれば、誰も疑わないと思う」

「でも……白雪とリリスの仲が……」

ライリィの言葉が終わらないうちに、僕は足を返し、リリスの方向へゆっくりと滑るように歩み寄った。

淡い青色のドレスの裾が床を撫で、優雅な弧を描く。僕は自然に彼女のそばに跳び、震える彼女の手をそっと押さえた。

そして彼女の隣に座り、指をハープの低音域に滑らせ、柔らかな和音を一つ響かせた。それはちょうど、彼女の途切れた旋律を受け止めるかのようだった。

場内の視線が一気に二人に集まる。ライリィは特に驚いた顔をしている。

「慌てないで。私のリズムに合わせて」

僕はリリスの耳元に顔を寄せ、ごく小さな声で囁く。

リリスの体はこわばっている。彼女は振り向いて僕を一目見た。

淡い青のドレスと彼女の淡い金色のドレスが互いに引き立て合い、僕の髪が彼女の頬にかすった。彼女の氷のような青い瞳は信じられないという色でいっぱいで、鼻先がほんのり赤らんでいる。

彼女の指先はまだ震えていたが、僕の和音に導かれるように、少しずつリズムを取り戻し、僕の旋律に合わせて弾き始めた。

二人の指先が交互に弦の上を動く。彼女の高音は澄んで明るく、僕の低音は落ち着いている。壊れかけた旋律は再び滑らかさを取り戻し、そこには幾分かの默契さえ感じられた。

しばらく安定して演奏した後、僕は立ち上がり、そっと彼女の手を取って立たせた。

この時の彼女は、操り人形のようだった。小さくて繊細で、守ってあげたくなる気持ちに駆られる。

「さあ、ワルツを踊りましょう」

僕は彼女の手を握り、もう一方の手を軽く彼女の腰に回し、ステップを踏むよう導いた。

今は伴奏の音だけが残っている。しかし、場内の目は、二人のダンスにのみ注がれている。

最初は彼女も硬く、足取りは慌ただしく、時折僕のドレスの裾を踏みそうになった。しかし、僕は彼女を離さず、ただテンポを落とし、まるでアイラ先生が教えてくれたように振る舞った。

次第に彼女もリズムを掴み、二人のステップは同期していった。

彼女が顔を上げ、僕は微笑みかけ、ダンスを続けた。

この瞬間、彼女も警戒心を解いたようだった。二人のダンスは終わるまで、何の問題もなく続いた。

最後に、僕と彼女は揃ってスカートの裾をつまみ、お辞儀をした。場内から拍手が沸き起こる。

リリスの頬はまだ赤らんでいたが、もはや困惑の色ではなく、幾分かの照れと安堵の色を帯びている。

「あ……ありがとう」

彼女の感謝の言葉はかすかで、ほとんど聞こえないほどだった。しかし、僕はしっかりと受け止めた。

ライリィは未だに驚きから覚めやらぬ様子で、リリスが僕を「敵」視していると思っていたのに、まさか二人で公演を成し遂げるとは思ってもみなかったのだろう。

シリウスも近づいてきた。

「さすがは白雪姫様。お噂通りのお優しい方で」

おほほほ、褒められるのは大好きだ。僕はシリウスの背中をポンと叩いた。

「いやいや、とんでもない。褒めすぎですよ」

彼はこの突然の行動に驚き、気まずそうに咳払いをした。多分、彼のイメージでは、僕はもっと冷たい美女であるはずなのだろう。

「本当に素晴らしい舞台でした」

イゾールも賞賛の眼差しを向けてくれる。

「白雪、どうしてリリスを助けたの?」

ライリィがそう尋ねると同時に、晩餐会の軽食を口に運んだ。

「リリスは私の妹だろ? 当たり前じゃないか」

僕はリリスを見たが、彼女はそっぽを向いた。

ライリィは僕を見つめ、次にリリスを見つめた。

「そうなの?」

僕は誇らしげにうなずく。これでリリスとの関係も少しは良くなるだろう。この短い時間が、二人の距離を縮めるきっかけになりますように。

「白雪、変わったね。このままのあなたでいてほしい。だって、リリスはとっても楽しみにしているんだから……」

ライリィの言葉が終わらないうちに、リリスに遮られた。

「ライリィ! 余計なこと言わないで!」



晩餐会が終わり、僕たちは並んで歩きながら外へ出た。まさか自分がこんなに大勢の美少女たちに囲まれる日が来るとは思ってもみなかった。

別れを告げ、僕とリリスは城へと戻る道を歩いた。

「よく頑張ったな」

「……うん」

リリスはとても静かで、ただうつむいて歩いていた。

「よせよ、お姉ちゃんとハグしたくてたまらないんだろ?」

「ち、違うもん!」

「まあ、こんな感じも悪くないな。無理するんじゃないよ」

彼女は何も言わず、なんとニャーのように僕のスカートの裾をぎゅっと握りしめた。

彼女の記憶では、何年か前に白雪姫とこんなことをするのは、ごく普通のことだったのだろう。

リリスのこのツンデレぶり、たまらん! ちなみに、僕はシスコンじゃないからな!

「もし妹が今の僕を遠い存在に感じてるなら、僕の方が歩み寄るよ。お兄ちゃん……じゃなくて、お姉ちゃんはいつだって妹の味方だ。仲直りしよう」

「い、嫌! お母様が、あなたはいつか私に取って代わるとおっしゃった。私に……あなたと関わるなって」

でも、彼女の手は離さなかった。僕は彼女の頭をそっと撫でた。

「私にとって、妹は妹に過ぎないんだ。君は誰かのために生きているわけじゃない。君はリリスなんだ」

「嫌よ。あなた、絶対私を騙してるんだ……」

なんでそんなに執着するんだろう……。

「だからさ、自分らしくいようぜ」

「……うん」

彼女がこの言葉を受け入れてくれたようで、ほっとした。

「じゃあ、本公女は……今日だけは、もっとあなたと話してあげる!」

「え? なんでだよ」

「うるさいな。恩に報いるってことを知らないわけじゃないのよ」

「僕が望んでるのは恩返しじゃない。ただ、可愛い妹が欲しいだけだ」

「ふん、だってここ数年、あなただって私に話しかけようとしなかったじゃない」

「え? 逆に姉ちゃんが悪いってか?」

「お母様のところには、私から話をつけてくる。ニャーもきっと戻ってくるさ」

「妹! なんて可愛いんだ!」

僕は彼女の頭を撫でようとしたが、彼女は振り払った。

「ふん、別にあなたを助けたいわけじゃないの。さっきも言った通り、恩返しのつもりよ。明日からは、もう他人同士なんだから」

「ええ~、やだよ~」

「ふん!」

「ニャーが戻ってきたら、君の専属メイドにしてやるよ、どうだ?」

リリスはその言葉にはっきりと動揺し、そしてまたあの高慢な表情に戻った。

「馬鹿じゃないの!」

「なんだ、ニャーのこと嫌いなのか?」

「あの子だって可愛いよ、もちろん好きさ。でも、彼女は君の専属メイドでいたいんじゃないか!」

「そうかな」

僕は自分の頭をコツンと叩き、考え込むふりをした。

リリスは呆れた目で僕を睨みつける。

「まさか、自慢してるんじゃないでしょうね!」

「え? なんでそう思うの? もちろん違うよ。じゃあいいや、明日彼女を迎えに行くから」

リリスは部屋に戻る前、振り返って言った。

「私にできることはやる。だから、あなたは足を引っ張らないでよ。最後に『連れて帰れなかった』なんて言わないでね」

「もちろんさ、妹よ。姉ちゃんの良い知らせを待っててね!」

「ふん」

リリスは鼻で笑うと、部屋に入っていった。

どうやら彼女もニャーのことを気にかけているようだ。まったく。

結局、リリスの取り成しもあって、王妃はそれ以上ニャーに難癖をつけることはなく、ニャーを戻すことを承知した。

後で知ったことだが、姫が城の外に出ること自体は大した問題ではなかったらしい。ただ、王妃は僕を困らせたかっただけなのだ。

さて、次は僕が直接ニャーの家に行き、彼女を連れ戻すとしよう。

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