クラスメイトには秘密
翌週の月曜日。
空は少し曇っていて、校舎の窓から入る光もやわらかかった。
そんな中、ほのかは妙にそわそわしていた。
――あの光。
どうしても、コントロールできない。
夜になると勝手にふわっと浮かび、
授業中でも気を抜くと、ノートの端でちょこんと光る。
(いや、ノート光られても……困るんだけど)
心の中でツッコミを入れながら、
必死にペンを動かす。
「ほのか、今日もノート早いね〜」
前の席の美桜が振り返って微笑む。
その笑顔の直後――
パチッ。
ほのかのペン先から、小さな光の粒が弾けた。
「わっ!?」
慌てて隠すけど、美桜の目はしっかりそれを見逃さなかった。
「……今の、なに?」
「えっ!? え、なにもないよ!? ペンが……光るペン?」
「うそ〜。そんなペンないでしょ」
クラス中が静まり返る。
先生が黒板の前で止まり、ほのかのほうをちらりと見る。
(やばいやばいやばい!)
その瞬間、ほのかの脳内はフル回転。
頭のいい彼女は“冷静に見えるパニック”を得意としている。
「えーっと、えっとね! これ、静電気!!」
「……春なのに?」
「……春でも、あるんだよ(たぶん)」
笑いが起きた。
助かった――。
でも、美桜の視線だけは、なんとなく鋭かった。
⸻
放課後。
昇降口で靴を履き替えていると、美桜がそっと近づく。
「ねぇ、ほんとは何隠してるの?」
「え、隠してなんか……」
「昨日からずっと、ほのかのまわり、光ってるんだよ」
ほのかは息をのんだ。
嘘をつくのは得意じゃない。
でも、これだけはまだ話せなかった。
「……ごめん、美桜。でも、もうちょっとだけ内緒」
「……そっか」
「うん。ちゃんと説明できるようになったら、話すから」
美桜はふっと笑った。
「そういうとこ、ほのからしい」
「え?」
「ズルいくらい、誠実なんだよ」
その言葉に、ほのかはちょっとだけ照れくさく笑った。
⸻
帰り道。
小さな公園で立ち止まると、ポケットの中が温かい。
取り出してみると、光の粒がひとつ、ほのかの指先で踊った。
「ねぇ……私、バレちゃうのかな」
光はゆっくりと明滅して、まるで
“だいじょうぶ”って言っているように見えた。
「そっか。信じてみよっか」
ほのかは笑って、そのまま夕暮れの中へ歩き出した。
彼女の後ろで、光はゆらゆらと浮かびながら、
まるで“友達”のように寄り添っていた。




