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天然☆彡少女  作者: 櫻木サヱ
ほのか、魔法に出会う
3/49

ズレてる私、魔法もいける?

翌朝。

ほのかはいつもより少し早く目を覚ました。

カーテンのすき間から朝の光が差し込んで、部屋の空気がほのかに温かい。


昨日の“あの光”の感覚が、まだ手のひらに残っている気がして、

ほのかは布団の中で手を開いてみた。


……何もない。

けれど、何かが“そこにある”ような気がする。

まるで見えない小さな生きものが、

まだ彼女の中で眠っているような、そんな感じ。


「……夢じゃなかったよね?」

小さくつぶやきながら、制服に袖を通す。

鏡に映る自分はいつも通りで、髪の寝ぐせも完璧に直っている。

頭のいい優等生の顔。

でも、その内側には、昨日から続く“ふわふわした違和感”があった。



学校に着くと、教室はすでにざわざわと賑やかだった。

友達の**美桜みお**が机に肘をついて、にやりと笑う。


「おはよ、ほのか。なんか今日、雰囲気違くない?」

「え? 髪型かな? トリートメント変えたんだ」

「……ううん、なんか“光ってる”感じ」

「え、えっ?」


思わず慌てて自分の髪を見る。

もちろん、光ってはいない。

でも、美桜は本気で言っているようだった。


「ほんとに、なんか柔らかい光まとってるっぽいんだよね〜。

 まさか天使化とかしてない?」

「ちょ、そんな……! してないよ! たぶん!」


周囲のクラスメイトが笑う。

ほのかは照れ笑いしながらも、

心の中では少しだけ“もしかして”と思っていた。

――昨日の魔法、まだ消えてないのかもしれない。



昼休み、ほのかは中庭のベンチに座って、こっそりと手を広げてみた。

やっぱり、光が生まれる。

昨日よりもずっと小さいけど、

それは確かにほのかの指先に寄り添っていた。


「……ねぇ、出るタイミング、自由じゃないの?」

つぶやいてみるが、光はただゆっくりと瞬くだけ。

命令を聞くでもなく、気まぐれに揺れる。

まるで、ほのかの“ズレたペース”そのもののようだった。


「……やっぱり私、魔法のテンポまでズレてるかも」

苦笑いしながら、ほのかは光を手の中で転がす。

光は、まるで笑うみたいに、ぽん、と跳ねた。


「……え、今、笑った?」

問いかけても、返事はない。

でも、たぶん“聞こえないだけ”なんだと思った。



放課後。

ほのかは帰り道で夕焼けを見上げながら歩いた。

ランドセルじゃなくて通学カバン。

小学生のころより少し背が伸びて、

でも世界のほうがもっと速く進んでいるような気がした。


「みんなとテンポが違うのって、悪いことかな」

ぽつりとつぶやく。

光はほのかの肩の上に浮かび、

まるで答えるように、小さく明滅した。


ほのかはその光を見て、ふっと笑った。

「うん、まぁ……悪くないかもね」


夕陽の中で、

“ズレてる”という言葉が、少しだけ優しく聞こえた。

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