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天然☆彡少女  作者: 櫻木サヱ
ほのか、魔法に出会う
2/24

手のひらの小さな光

放課後の教室には、まだ誰もいなかった。

机の上にはノートと教科書、そしてペンが散らばる。

窓の外には、夕陽の柔らかいオレンジ色が溶けていて、

まるで教室全体が金色に包まれているみたいだった。


ほのかは、まだ手のひらの光を見つめていた。

触れるとほんのり温かく、柔らかく揺れる。

でも、どうして光が現れたのかは、まったくわからない。


「……ねえ、これって、どうやって消えるのかな?」

自分の声に少し笑いが混じる。天然だから、

こういう不可思議なことも、ひとまず受け入れるしかない。


手のひらを上に向けて、光をそっと転がしてみる。

光は指先に沿って滑り、指と指の間でくるくる回る。

ほのかは息を飲んで、その美しさに見惚れる。


「……きれい」

心の奥から自然に出た言葉だった。

そして気づく。光が揺れるたび、世界の色も少し変わって見える。

赤や青や金色が、ほんのわずかに混ざり合って、

教室の空気をふんわり染めるみたいだ。


「もしかして、これが魔法……?」

頭では理解しきれないけれど、体は確かに感じていた。

手のひらに残る温かさは、心地よく、胸の奥までじんわりと広がる。


ほのかは立ち上がり、机の周りを歩いてみる。

光は手の動きに反応して、ふわりと跳ねたり揺れたり。

思わず笑ってしまう。天然だから、こういう不思議な現象も、

すぐには“普通に扱う”ことができないのだ。


「……どうしよう、誰かに見られたら変に思われるかな」

でも、誰もいない教室で、ほのかはそっと光と遊ぶ。

光の跳ねる速度を変えてみたり、手の形を変えてみたり。

小さな試行錯誤が、天然少女の好奇心を満たしていく。


そして、ふと気づく。

光は、ほのかの心の動きと呼応しているみたいだった。

悲しい気持ちのときはほんのり青く、うれしいときは黄金色に輝く。

天然だからこそ、ほのかはその変化に気づき、自然に触れ合ってしまう。


「……これ、私だけの魔法かも」

思わず小さく呟き、手のひらの光を見つめ続ける。

夕暮れの光と、手のひらの小さな魔法。

この瞬間の静かさが、ほのかにとっては何よりも特別で、

なんだか世界がほんの少し優しく見えるような気がした。


教室の外、夕暮れはまだ続いている。

そしてほのかの手のひらには、まだ小さな光が揺れていた。

――この光が、どんな日々につながっていくのかは、

誰にもまだわからない。


でも、ほのかはそれを楽しみに思えていた。

天然少女の、ゆっくりだけど確かな魔法の始まりだった。

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