初めての変身、まさかのドジっ子ヒロイン!?
夜の旧校舎の屋上には、静かな風が流れていた。
空には星が顔をのぞかせ、月がやさしく光の輪を照らしている。
まるで、この場所だけが世界から切り離されているみたいに──しんと静まり返っていた。
「じゃ、さっそく変身しよっか!」
ルゥが、にっこり(してるように見える)顔でそう言った。
まるっとした体に、ちょっとえらそうな口調。
この“頼れるのか頼れないのかわからない”感じが、すでにほのかのツボにハマっている。
「へ、変身……って……え、まって、あのアニメみたいな……?キラキラ〜ってやつ!?」
「もちろんそうだよっ!変身は魔法少女の基本中の基本!」
「ちょ、ちょっと待って心の準備が……え、髪型勝手に変わったりしないよね!?」
「それはなるかも」
「なるんかい!!」
一人と一匹(?)のテンポのいいボケツッコミが夜空に響く。
ルゥがふわりと宙を舞いながら、ほのかの前に光のカードを浮かび上がらせた。
《Light On》
金色の光が文字となって空中にきらめく。
まるで誰かが見えないペンで空にサインしたみたいだった。
「ほのか、手をここにかざして。心で“なりたい自分”をイメージするんだよ」
「なりたい自分……」
それは、いきなり言われても難しいお題だった。
勉強はできるけど特別な才能があるわけじゃない。
運動神経はまぁ普通。
クラスでも目立つタイプではなくて──
むしろ「ちょっと天然でぼーっとしてる子」と思われている。
……でも、ほんとは。
心の奥にずっと、小さな“あこがれ”があった。
「みんなの役に立つ人になりたい」
「誰かを守れる人になりたい」
声に出さなくても、胸の奥のその光が反応した。
カードがふわりと震え、あたりの空気が柔らかくきらめく。
「うわ……なんか、あったかい……」
ほのかの手元から金色の光が立ちのぼり、
まるで花びらが舞うように宙を埋め尽くしていく。
髪がふわりと浮き、制服のスカートのすそが風に揺れた。
──始まった。
魔法少女・ほのかの変身シーンである。
「す、すご……これ、リアルで見たらもっとやばい……」
光が髪を包み込み、ふわっと巻き髪が生まれ、
制服はキラキラした白と水色の衣装に変わっていく。
胸元には小さな光のブローチ──
まるで“選ばれた子”のしるしのように輝いていた。
「やったぁ……なんか……魔法少女っぽい!」
「うんうん!似合ってるじゃん!」
……が、その次の瞬間。
「……あっ」
キラキラしたスカートのすそを踏んで──
ズベシャアアアッ!!
ほのか、派手にすっ転んだ。
屋上に響く、ちょっと間抜けな音。
「いてててて……」
「変身初日で転ぶ魔法少女、初めて見た……( ˘ω˘ )」
「し、しょ、初日だし……!( ˘•ω•˘ )!」
スカートの裾をなおしながら、顔を真っ赤にして立ち上がるほのか。
魔法少女になってもドジは健在──それが“天然少女・ほのか”のいいところだ。
ルゥは呆れ半分、でもどこか楽しそうにくるくる回って笑っていた。
「でも……今の、ちゃんと変身できてたよ。ほのか、すごいじゃん」
「……へへへ」
褒められると、ちょっと照れる。
それもまた、ほのからしい。
夜空に月が輝く。
魔法少女としての“最初の一歩”は、派手なコケと笑い声から始まった。




