第2話解決編~アニトシテノプライド~
この話は解決編です。まずはこの前の話の問題編を見てから読んでください。
「3日前ぇえええええええええええええ!?」
もう驚きを隠せるわけがなかった。僕らは今、朝倉暖ちゃんのハンカチを探しているのだが・・・・3日前に風に飛ばされたって・・・・っていうかこの前の話の問題編を見てくれればわかる。
「双芽君行きましょう!ぱぱっとこなしちゃいましょう!」
「社長ならこんな簡単なこと、朝飯前ですから。」
クラスメイトの百香、秘書的役割の真琴がそれぞれ僕にとどめをさしにきた。いや、たぶん悪意はないんだろうね、うん。でも3日前に飛ばされたハンカチ探しって・・・・これは交番をまわった方が絶対にいいと思うんだけど・・・。
「それにしても暖ちゃんも翔太君もわかってるじゃない。交番をまわるより双芽君に相談した方が早いって」
「お前は鬼か!!」
なぜさっきからこいつは僕を苦しめることばかり言うのだろう・・・・意図的としか思えん。僕はこいつに一度でも3日前に飛ばされたハンカチを見つけられると言っただろうか・・・。
「さぁ、社長。日が暮れる前に探しましょう。」
「はやく、はやく」
「ちょっ、お前ら悪意あるだろ!僕を陥れようとしてんだろぉおおおお!!!」
僕の抵抗は空しく、簡単に連れて行かれた。残された部屋のテレビには飛び降り自殺についてのニュースが悲しく流れている。・・・・・・・・・マジで助けてほしいんだけど。
〇
僕らの事務所から歩いて20分のところに大きな町、というより店の集合体みたいな場所がある。デパートから電気屋、本屋にスーパー、コンビニ等などありとあらゆる店がところせましと並んでいる。道も1つ、1つが大きくまさにお客さんのことを考えてるといえるつくりだ。
「ここらへんでなくしたの?」
「うん」
僕らはそのなかでもひときわ大きい道の歩道に立っていた。日曜だけあって人も多いし、道の両脇にはお店しかない。なのに不思議と狭いとは感じなかった。
「それでどっちの方に飛ばされたのかな?」
「「こっち」」
僕が心底丁寧に聞いていると、暖ちゃんと翔太君の指差す方向が真逆だった。
「あれ?えっとどっちかな?」
「「こっち」」
どうしよう・・・・何回聞いても真逆だ・・・困ったな・・・・・。
「えっとどっちが正しいの?」
「「こっち」」
百香が優しく聞いても同じだった・・・はぁ、あんまり使いたくないけど使うしかないか・・・。
「しょうがない」
といいつつ、僕は肩からかけていたカバンからケースを取り出す。
「双芽君?それ何?」
「ただのメガネだよ、ただの」
と百香の質問に答えつつ、中から黒ぶちメガネを出し、ゆっくりとかけた。
「社長のこのモードを見るのは久々です。」
「え?なになに?なにが始まるの?」
百香が興味津津できいてくる。お前は子供か。まだ翔太君と暖ちゃんの方が落ち着いてるぞ。
[ふぅ・・・・・」
1分後、僕はメガネをはずし、ケースにしまい、カバンにいれた。
「え?・・・・・・なんだったの?」
百香は頭にクエスチョンマークを浮かべている。まぁ、確かに誰にもわからないぐらい地味な作業だからな。無理もないだろう。
「別に。ただ、3日前から今日の今までの風向きと風速を思い出してた」
「へー・・・・・って3日前から!?そんなことできるの!?」
僕はメガネをかけると視力は当然、その他、推測に必要な能力が一気に跳ね上がるらしい。なぜ、らしいのかというと僕にもわからないからだ。なぜかメガネをかけると頭がすっきりして、洞察力、記憶力などなどが上がる。病院にもいったが異常なんてない。僕が聞きたいぐらいだ。
なぜ、そんな特異なことができるのか・・・・と。
「たぶん、こっちだ」
と、暖ちゃんが指していた方を指さす。
「やっぱり!ほら、のんの方が正しいもん!」
「ムスッ」
翔太君は機嫌が悪そうだ。確かに自分が間違ってて、妹にそんなこと言われたら少しは腹立つと思うんだけど・・・・何か違う気がする・・・・。
「間違いなんて誰にでもあるわ。間違いばかりしている人もたくさんいるのよ」
「それは僕のことだろう!!」
なぜ僕を間違いのエキスパートに仕立て上げようとするんだ・・・・・。
「社長、自意識過剰ですよ。誰も社長のこととは言ってません。」
「そうだよー、双芽君は間違いなんてしてないよ。だから・・・・元気出して」
「その慰め方が腹立つんだよぉおおおおお!!!」
このままじゃラチがあかない。そう判断した僕は、多分目的地であろう方へと歩くことにした。確かこっちには川があったと思うんだけど・・・・まぁ、メガネかけてない僕の記憶力なんてそんなもんさ。
〇
ほんとに川があった。僕は川の近くの長い草むらばかりの場所を歩いている。いや、正確には探していると言った方がいいか。ハンカチを探しているのだ。僕の推測ではここらへんに・・・・。
「双芽君、あったー?」
「いいや、真琴は?」
「ありません。ほんとうにここであってるのかと疑ってもいいですか?」
「それを僕に聞くなよ!!」
この川は大きい、しかしそこが浅いのだ。そしてまわりには明らかに手をつけていないという感じにのびきった草、草、草。邪魔くさくてしょうがない。そして上には橋ともいいづらい小さな橋がある。その橋には一応柵があるのだが、まわりが木で囲まれてるため柵がなくとも安全なようになっている。
「それにしても結構探してるんだけどな」
「やっぱり間違ってたんじゃないの?」
「そう言われると・・・・・な・・・・・・。」
くそっ、どういうことだ。久しぶりに使った能力だからまだ万全じゃなかったのか・・・・。
「お兄ちゃんたちーー!あったーーーー!?」
川の中でも危なくない高い位置に待たせている、暖ちゃんの声が聞こえた。
「ごめんなーー!!もう少しかかるかもーーー!!」
と僕が暖ちゃんの方を向いたとき。
「!!」
気付いた・・・・探すのに夢中になりすぎたか!!その場にいたのは暖ちゃんだけ。翔太君が・・・・
いない!!!
「翔太君がいない!」
ようやく口が思考に追いついた。
「え!?」
「!!」
その声に気付いた百香や真琴も顔を上げる。
「ほんとだ・・・・・いない!」
「どういうことですか!?」
くっ!焦る僕らに対し暖ちゃんは、
「トイレ行くって言ってたよーーー!!」
「・・・・・なんだぁ・・・・・焦ったぁ」
「驚かさないでください、社長。」
違う!違う!違う!!!翔太君はトイレに行ってない!!今気付いた!翔太君が僕らに会ってから不機嫌だった理由。
それは嫉妬。
思えば僕が推測したり、暖ちゃんにお兄ちゃんと慕われるたびに不機嫌になっていた。それは本当の兄というプライド。見ず知らずの僕らが暖ちゃんなつかれたり、自分が活躍できなかったりという嫉妬があったのだ。だからあの時、暖ちゃんとは真逆の方向をさしたのか・・・。僕らをハンカチまでたどり着かせないように。そして自分がハンカチを見つけ出すために。
「ちくしょう!」
なぜ気付かなかった!今の翔太君ならどんな危険なこともやりかねない!
「双芽君、どうしたの?」
「翔太君はトイレに行ったんじゃない!ハンカチを1人で探しに行ったんだ!!」
「え?それってどういう・・・・」
「社長!橋の上です!!」
「!!」
真琴の声が聞こえ上を向いて見ると・・・橋の柵の上にのった翔太君が見えた。まるで今から飛び降りかねない様子で。ニュースでやっていた飛び降り自殺のように。
「翔太君!!危ない早くそこから降りて!!」
「・・・・・・・・。」
僕の声には耳もかさない。くそ!どうしたら!!!すると橋の近くの木に赤いハンカチがひっかかってるのが見えた。まさか・・・あれをとろうとしてるんじゃ・・・。
「翔太君!!無理だ!!」
僕は必死になって叫ぶ。ハンカチがひっかかってる木だけ橋から少し遠い位置にある。だからとれるはずない!届かない。僕の声じゃ届かない。僕は急いで橋まで行こうと走ろうとした時・・・・・
「お兄ちゃーーーん!!戻ってきてよーーー!!」
暖ちゃんの声が聞こえた。
「そこ・・・・グス・・・・危ないよーーーー!!!」
暖ちゃんが泣きながら説得する。いや、説得とかじゃないこれは純粋な心の言葉だ。何も考えず心にある言葉を叫び続ける・・・・それだけなのだ。
「のん・・・・・今とってやるからな」
暖ちゃんの言葉でも止まらない!!!
「もう少し・・・・もう少しなんだ・・・・・・」
そして翔太君の手がハンカチに届いた!
「すごい・・・・・・・」
僕ら推測屋の3人はあっけにとられていた。これが兄弟愛なのかと思っていたら・・・・
ズルッ!
「!!」
翔太君が足を滑らせ、仰向けに落ちていく。
「翔太君!!!」
僕は全速力で走る!くそ!そして徐々に頭が下になっていく。届け!僕の手!翔太君だって届いたんだ!大切なものに!だから・・・僕だって・・・・・・
「届けぇえええええええええええええええええええ!!!!」
ザッパァアアアアアアアアアン!!
水の弾ける音がした・・・・・・・・。
〇
僕は間一髪で間に合っていた。翔太君は背中で受け止めて、顔面は水の中。
「翔太君!よかった・・・・・」
「もう無理はやめてほしいですね。」
「お兄ちゃん・・・・なんでそんな危ないこと・・・・」
「だって・・・・・・」
「僕の背中の上で会話始めるの!?」
もうそろそろ酸素がなくなってきてたのでおもわずツッコんでしまった。背中から翔太君を下し、そして会話を再開することにした。
「翔太君は妹が大好きなんだもんな」
「なっ・・・・・!」
翔太君が照れ隠しに蹴ってくる。しゃれにならない痛さなんすけど・・・・。
「翔太君は暖ちゃんのために、兄としてハンカチをとってあげたんだもんな」
「うん・・・・・・・。」
「でも、お兄ちゃん。なんであんな危ないこと・・・・」
「だから・・・・・・その・・・・のんのことが大好きだからだよ!」
「お兄ちゃん・・・・・・」
顔を赤らめる暖ちゃん。微笑ましい兄弟愛。うん!いいね!
「でも、もう危険なことすんなよ」
「その・・・・・・ごめんなさい」
「わかればいいさ」
「へへっ・・・・ありがとう。お兄ちゃん!」
その時見た笑顔は一生忘れられないぐらい輝いていた。
〇
「報酬もらわなくてよかったの?お兄ちゃん」
ニヤニヤしながら聞いてくる、百香。あの時から4時間後。僕らは事務所に帰って来ていた。いつも通り中央のソファに座ってゲームしてる。今は日曜日の午後7時だ。
「やめて!お前が呼ぶとなんか違う危ないお兄ちゃんに聞こえるよ!・・・まぁ、いいんだよ、もうもらったさ。十分に」
なんてかっこいいセリフを呟く僕!どう?かっこいい?
「でもまさか翔太君があんな危険な行為をするなんて」
「兄にはな、譲れない時があるんだよ」
「1人っ子が何言ってんの?でも双芽君の推測でも分からなかったんだね、あんなこと翔太君がするなんて」
「僕のはあくまで推測。できそこないの推理さ」
そう、できそこないの・・・・なにも根拠のない推理・・・・それが推測なんだ。
「ふーん、でもよかったね。2人かなり嬉しそうにお礼言って帰ったじゃない」
「あぁ、ほんとによかった。ほんとに・・・・・。」
といいつつ僕は考え事をしていた。なぜ翔太君は仰向けに落ちたのか。前にあるものをとろうとしたら普通はうつ伏せに落ちていくはず。おかしい・・・・なにか引っ掛かる。
「社長、コーヒー・・・・」
「わぁ、ありがとう、お姉ちゃん」
「に塩酸を入れることにします。」
「すいませんでしたーー!!」
殺す気!?そこまでいく!?まぁ、僕でも腹立つけど・・・。
「真琴。今日の事件、記録頼む」
「わかりました。社長の顔面がずぶぬれになった・・・・と。」
「それだけじゃなかったよ!今日の僕!」
なんて普通の会話をする。さぁ、今日は久々に疲れた。依頼これから増えるといいんだがね。
「さーて、今日は夕飯どっかで食べてくか」
「ほんと!双芽君!おごってくれるの!?」
「え!?そんなつもりじゃ・・・・・」
「甲斐性なし・・・・・ふっ、今一番似合う人を見つけました。」
「それ僕のことだよね。まごうことなき僕だよね」
まぁ、しょうがない。今日はいいか。
「よっしゃー!今日は僕のおごりだー!」
「やったー!」
「作戦成功です。」
僕らも笑顔だった。まったく、伝染するものだな笑顔は・・・・・。この後僕の財布が軽くなるのは言うまでもない。・・・・・・・・はぁ。
ちょっと長くなりましたがどうでしょうか?えっとこれでこの兄弟の話は完結です。
でも難しいです。小説書くの。
まだまだ注意すべきところがあると思うので指摘、感想待ってます!
次回はどんな依頼人がくるのやら。もしかしたらこないのかな・・・。




