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第21話 アリシア、賄賂を持って城へ赴く2

「ソフィーさんの『絶対音感』スキルを使って、良い曲を作りたいって話! お願いしますよー」


 困っているんですよ、わたし!


「そんな話だったわね……。でも私で役に立てることがあるのかしら……」


 自信なさげなソフィーさん。

 まあ、『絶対音感Lv1』だからスキル持ってるよーってだけの状態だし、そんなもんかな。


「わたしも譜面が書けるわけじゃないので、なんとなく文字に起こしてみた音符を見ながら、音楽を聴いてみてほしいんですよ。違和感のある音にチェックをつけるだけでも……」


「違和感ね?」


「変だな、外れてそうだな、っていう感覚的なもので大丈夫です」


「わかったわ。一度やってみるから少し時間をちょうだい」


 ソフィーさんがわたしの書き起こした譜面っぽい紙を受け取ってくれた。

 お願いします。期待してます!


「でも私、楽器の音というのがよくわからないのよね……」


「わたしもこの時代……国で使われている楽器がどんなものかわかってなくて。またガーランド伯爵のところに押しかけてみますかねー。閣下ならそういう伝手もありそう」


 城内に楽団を抱えていなくても、夜会で踊る時には音楽が必要だろうし、何かしらの情報は持ってるに違いない!


「セドリックから音楽に興味があるという話は聞いたことがないけれど、領主としての嗜み程度には理解があるかもしれないわね」


 そう、それに賭けましょう!



* * *


「やっほやほー♪ ご機嫌麗しゅう♡」


 愛しのアリシアちゃんが遊びに来ましたよー、と。


「今度は何だ……。お前たちはいつも突然来るな……」


 困り顔のセドリックちゃん。

 だって正式なアポ取ってると時間かかるし、秘書の人に話したら一発で通してくれるんだからいいじゃない?


「旧友が遊びに来るのに許可が必要かしら?」


 ソフィーさんがしれっと言い放つ。


「旧友と……。まあいい。それで何の用事だ? この後会合があってな、あいにく酒を飲んでいる時間はないのだよ」


 なぜかちょっと残念そうな表情。

 わたし=酒ってイメージついちゃってます? 刷り込み的な?


「あー、じゃあこのジンジャーハイボールは後ほどごゆっくりということで、秘書さん先に試飲しておいてください」


「いえ、私も閣下とご一緒しなければなりませんので……」


 お酒を目の前にして、一瞬だけ笑顔の花が咲いたのに残念。

 この秘書さん、なんだかんだで流されやすいしおもしろい人よね。渋くて良い声だし。


「ではこっちだけでもどうぞ。ノンアルコールですよ」


 そう言って、わたしはテーブルの上に少し小ぶりな容器を並べていく。


「これはなんだ? 甘い香りがするな……」


 ガーランド伯爵が身を乗り出して容器を覗き込む。


「これはゼリーと呼称しておりますが、冷えた菓子でございます」


「ゼリーとな。中に入っているのは桃か?」


「その通りでございます。桃を砂糖で煮詰めて、とある材料と一緒に冷やして固めたものでございます」


 果肉たっぷり桃ゼリーだよー。

 甘くて冷たくてとってもおいしいよ。


「どうぞ、皆さんでお召し上がりください」


 ソフィーさんにも、秘書さんにも勧める。

 もちろんわたしも食べる!


「ありがたくいただこう」


 ガーランド伯爵がゼリーの容器とスプーンを受け取る。

 待ちきれなかったのか、さっそくゼリーを一匙掬って口に運んだ。


「なんだ……。プルプルする……桃の香りが鼻に抜けて心地良い……。冷たいプルプルがのどを伝って……美味だ……」


「お気に召されたようで何よりです。桃の果肉と一緒に食べるとまたさらにおいしいですよ」


「これはステキね。お店でもお出ししたいわ」


 ソフィーさんもおいしそうに食べている。


「いつも大変おいしゅうございます。ありがとうございます」


 秘書さんも満足そう。

 まあ、桃を嫌いな人なんて世の中にいるわけないか。コース料理の最後に出せるように考えておこうかな。桃は高価だし、ある程度季節限定になっちゃうけど。


「あ、そうそう。これはロイスに。保冷用の容器に入れてありますが、なるべく早めに渡してあげてください」


 秘書さんに別の容器を手渡す。


「それと、閣下にはこれを」


 液体の入った小瓶を取り出し、ガーランド伯爵の目の前に置く。


「これはなんだ?」


「大人のデザートには欠かせないアイテムです♡」


「ふむ?」


「公務が終わったら、ぜひこれを桃ゼリーにかけてお召し上がりください♡」


 特製のブランデーよ♡

 大人なゼリーの完成っと♪


「今日の会合は休むか……」


「閣下。残念ながらそれは……」


「ダメか……」


 秘書さんが悲しそうに首を振る。

 いや、残念ながらじゃなくてね? 会合休まれたら困るんですが。ちゃんと仕事はして?


「しかたない。急いで会合は終わらせるとして……。アリシアの話を聞こう。今日の頼み事はなんだ?」


「あ、はい。えっと、楽器に詳しい方か楽団をご紹介いただきたいなと思いまして――」


 時間がないとのことなので、取り急ぎ要点を掻い摘んで説明する。

 最低レベルとして、作曲ができなくてもいいので、音の良し悪しがわかる人がいれば。もし、叶うなら、曲の作成とオーケストラ的に演奏までしてくれちゃう人たちがいれば最高なんですよねー。


「話は分かった。私には音楽に対する知識がないから、人を紹介しよう。後日改めてで良いか?」


「もちろんです! ありがとうございます!」


 あー、良かった。

 ガーランド伯爵が何かしらの伝手を持ってそう。これでもうちょっと良い感じの演奏で踊れるようになるといいなー。

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