第143話 アリシア、スーパートルネードアリシアキックをお見舞いする?
「これは……ローラーシューズとぜんぜん違うっすね。うぉっ⁉」
セイヤーが1人、意気揚々と完成したばかりのアイススケートリンクに飛び出していった……けれど、さっそくド派手に転んでいるね。
「セイヤー、大丈夫? 最初はいつもよりも気持ち多めに魔力を放出したほうが、ローラーシューズに近い感覚になると思うよ~。でもアイススケートも似ているからすぐに慣れると思う。そうしたら魔力なしでも滑れるようになるかな~」
続いてアイススケート経験者のエデンがリンクに入っていく。
少しブランクがあるとはいえ、美しい滑り出しでセイヤーのもとに到着する。にっこりと笑い、手を差し伸べて助け起こしている。さすが『白薔薇のお兄様』といったところかな。今日のショーは、やっぱりエデンを中心に置いた演出にしたほうが安心感がありそう。
「なるほど、これが氷のステージか。美しいな……」
そう言って2人のことを見つめるエリオット。
けれど、わたしの隣から動こうとしない。
「エリオット? 早く行きなさいよ。シューズの履き替えは終わったんでしょ?」
「ああ、美しいな……」
けれどエリオットは遠い目をしたまま微動だにしない。
微妙に足が震えている気がする?
「何? もしかして、アイススケートが怖いの……?」
「いいや、まったく」
「じゃあ行きなさいよ。早く滑って慣れないと、いつまで経ってもアイススケートショーができないでしょ」
チテネティア様にお願いして、練習の時間はもらったとは言っても、そんなに長々と待たせるわけにはいかないんだからね? いつまでもあのヘビのおもちゃで気を紛らわせることができるとは思わないでよね? チビエヴァちゃんたちもそろそろ遊びに飽きて帰ってきちゃうだろうし。
「うむ。この雄大な景色を背に、屋外で滑ることができる喜びに感謝をしなくてはな。女神様バンザイ。パストルラン王国バンザイ」
エリオットって……なんかごちゃごちゃとうるさいな……。
前から無駄口が多いヤツだったけれど、年を取って余計にそうなったの……かな?
「おい! 良いからさっさと練習して来いよっと!」
スーパートルネードアリシアキックをお尻向かってーーーーへい、ドカーン☆
「おぉぉぉぉぉぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
あーあ、エリオットがお空の彼方へ飛んで行っちゃった☆……これがホントの星の女神様……いや、でも男だし、女神じゃないから神様? でもないな。王子様って感じでもないし……星のなんかになっちゃった!
「きれいな一番星じゃの」
マーちゃんが、エリオットの飛んで行った先に向かってグラスを掲げていた。
「ちょっとちょっと暴君⁉ 今エリオットがすごい勢いでどこかに行っちゃったよ⁉」
「バカッ! エデン! そういうのは無視しとくっすよ!」
エデンが慌ててわたしのところにやってこようとしていたのを、セイヤーが無理やり腕を引いて止めていた。
「同じ目に遭いたいっすか⁉ ほら、練習練習!」
「で、でも……」
2人はそのままペア練習へとなだれ込んでいく。
感心感心♪
セイヤーにはちゃんとわたしの教育が行き届いてるね。早いところアイススケートのコツを掴んで、良いショーを魅せてよね。
「よーし、そろそろエリオットも回収しておきましょうかね」
こんなこともあろうかと、あらかじめ魔力の紐でつないでおいたので、これを思いっきり引っ張れば――。
「はい、おかえり。寝ていないでさっさと練習しなさいよっと!」
なぜかボロボロになって白目を剥いているエリオットに、治癒ポーションと覚醒ポーションをダバダバかけてーと。
「はっ⁉ 私はいったい……?」
エリオットの黒目に光が戻った。
「起きた? 急に寝るのはダメだよ? ほら、練習練習♪」
今度はやさしく背中を押してー、さあ、滑ってらっしゃい!
「何か今、美しいような恐ろしいような……不思議な体験を……」
まだごちゃごちゃ言っているなら、もう1発食らわすよ?
ニッコリスマイル。
「バカッ! エリオット! さっさとこっちにきて一緒に滑るっすよ!」
氷上でぼんやりと立ち止まっているエリオットを、セイヤーが無理やり引き摺っていく。
感心感心♪
セイヤーくんにはあとでご褒美を上げないとね♪
とっても素直な良い子に育っていて、プロデューサーさんとしては鼻が高いよ♪




