第75話 アリシア、シリアスモードで報告を聴く
エヴァちゃんにネチネチと精神攻撃を受けてなかなかにへこんだ直後。
「エヴァさんの『常識改変』スキルというもののおかげで、聞き込みはスムーズに進みました。そこでわかったことですが――」
シリアスモードでステファンの聞き込み調査の報告を聴かなければいけないわたし。
なんてかわいそうなわたし……。わたしの癒しはどこ……ああ、ステファンの耳をモフろう♪
モフモフモフモフモフ!
はぅ♡
この密度の濃い毛に指が沈み込んで……あぁ蕩ける……。
「あの……暴君……? 耳を触るのではなく、私の話を……」
「ちょっとだけだから♡」
もうちょっとだけウサギ成分を吸収させて♡
そうしたら話も聴くし、いろいろがんばるからー♡
はふん♡
「アリシアが……おかしくなってしまった。ミサトさん、あれは大丈夫なのか……?」
≪ドリーちゃんはあの状態のアリシアを見るのは初めてですか? いつもの一時的な発作です。しばらくすれば収まるでしょう≫
「そうなのか……。シャーレ殿の頭を撫でている時もあんな顔をしていたが……アリシアは獣人が好き、なのか……?」
≪その推測は大きく外れていないでしょう。アリシアの守備範囲は広いのです。目に見えるすべての美しいもの、かわいいものを手に入れないと気が済まない性質なのですよ≫
「なるほどな。美しいものとかわいいものを集めてくれば良いんだな?」
≪ええそうです。この世のすべての美をアリシアのもとに集めてください≫
「わかった。俺の生涯の指針としよう」
いや、そんなものを生涯の指針にしないで。
あなたにはもっとほかにやるべきことがあるでしょう?
「よーし、充電終わり! ステファン、ありがとうー。報告を続けて?」
モフられながらしゃべっても良かったんだよ?
「は、はい! では報告を続けます! 私たちは主に、王宮内に配属されている兵士たちと、王立ギルド本部にいた高ランク冒険者たちに話を聞いてきました」
ふむふむ。
聞き込みの内容は――。
1. スミナルド陛下の評判。期待している? 不安はない?
2. 『私設軍隊、および武装集団の即時解体を命ずる。非正規軍隊結成はいかなる理由であれど許可はせず、軍事行動の一切は正規軍のみが行うものとする』という新法についてどう思うか。賛成? 反対?
「まずは王宮内での結果ですが、スミナルド陛下への期待は非常に高いものがありました。感情の色もポジティブを示す、紫から青の方が非常に多かったです」
ステファンは人の感情を色で見分けるという特殊能力を持っているからね。
その時の感情が虹色のようなグラデーションで見えるらしいよ。
プラスの感情が『紫』で、マイナスの感情が『赤』ね。
だから口から出た言葉と、実際に抱く感情が違っていてもすぐにわかっちゃう。つまり、ウソ発見器みたいな役割を果たせるってこと。聞き込み調査や尋問には欠かせないスキルになりそうだよね。
「ふーん、それじゃあ、スミナルド陛下は、王宮内ではちゃんと支持されているのね。具体的にどんなことに期待している感じだった?」
兵士の人たちは普段どんなことを考えているのかな。
こんなことでも起きない限り、考えたこともなかったなー。そもそもなんで兵士をやっているんだろうね。お金のため? 名誉のため? 剣術や魔法が使えたから?
「所信表明の時に、いくつか具体例を示した政策を掲げられましたが、それに共感しているという意見が多かったです。国を安定させるという前国王の意思を継ぎつつ、さらに踏み込んでより良くしていく。災害対策や貧富の格差対策、そして違法な組織への強い姿勢、辺りですね」
「まあそうかー。『正義の人』って感じの売り方なんだろうね」
なんかこう、やる気に満ち溢れていてキラキラしていたし、そんな人がトップにいるだけで期待しちゃうよね。わたしも期待している1人だし。期待していた、かな? まだわからないや。
「兄上は、昔からそうだったよ。たしかに『正義の人』という表現がしっくりくるな。自分にも厳しく、他人の不正や不誠実さにも厳しい人だった……」
その感じだと、スレッドリーはけっこう怒られてそうね?
「兄上は王太子時代から積極的に政治にも関与していたからな。自ら地方に赴いて、不正を働いた貴族の粛清を行ったりもしていたぞ」
「そうなんだね。それってお父上のストラルド様のご命令ではなく、独断で動かれていたの?」
「定められた法に則っての粛清だから、独断とは違うと思うが、父上は『まあ、やっちゃったものは仕方ないじゃない。反省しているなら次からはしないでしょ』と、おっしゃることが多くてな、兄上とはよく口論になっていたよ」
すごく言いそう。
でも全部それで許しちゃうと国は無法状態になって立ち行かないだろうから、お兄さんががんばってくれることでバランスを取っていたっていうのもありそうだよね。
うーん、2人のバランス……。
ストラルド様が崩御されたことで、そのバランスが崩れてしまった。厳しい方向に一気に傾いちゃっているってことだよね。
なるほどなー。
「兵士たちにはそれが支持されている。まあそうかー。ずっと傍にいられる兵士の人たちだし、きっと同じように正義の人なんだろうね。じゃあ、ギルドのほうの話も聴いてみようかな。そっちだとスミナルド陛下の評判はどうなのかな?」
「はい。それでは再び私からご報告いたします」
と、ステファンが手をあげた。
「運営にかかわるメンバーは概ね、王宮にいる兵士たちと同じようにポジティブな反応が多かったです。しかし一方で、ギルドから依頼を受ける側の冒険者たちからは……」
ステファンが言いにくそうに口をもごもごさせている。
どうやらスレッドリーのことが気になっているみたい? 身内の悪口は言いづらいってところかな。
「ステファン。ここは報告の場だから大丈夫よ。見聞きしたことをすべて伝えてちょうだい」
「ああ、頼む。俺はそれを聴き、必要な行動を取るだけだ」
わたしの言葉に同調するように、スレッドリーも深く頷いた。
「はい……それでは……。冒険者たちからの評判は非常に良くなかったです……。陛下のお名前を出した途端、ほとんどの方の感情は赤、ないし橙に染まりました……」
なるほどね。
予想していたけれど、暗殺計画が持ち上がるって、そういうことよね……。




