ホームルームひめじ
「はい、みんな席について〜」
「ついたんだヨ」
「ついたのデス」
「ついたやも知れぬ」
「ついたのであーるッ」
ーーそれなりに年季の入った教室にひとりの女性がやってきた。
コソコソと謎の会議をしていたねこたちが続々と着席する傍ら、
なんかの仮装パーティのような格好をしている子たちが、
・聖剣を研いでいたり、
・手に持ってた聖水のビンがなんか破裂したり、
・眠りから目醒めて急に姿を現したりしているのだが、
何を隠そう全員見た目はおこちゃまな彼らが本物の勇者と聖女と精霊王だったりするのはひめじでは常識である。
そして、そんな彼らが鶴の一声でまとまるのかといえば、それは今からホームルームがはじまるからだ。
いかにも魔法使いですな見た目をして教壇に立った“ふれあ・ボルトウィン”さん。
彼女は本当の魔法使いで、ボクたち生徒にごくありふれたお勉強を師事してる。
『つまり今から始まるのはメチャクチャ普通の授業なので、魔法使い云々というステイタスにはマジでなんの意味もなかったりする』
「よろしい、それじゃあ大将軍? いつものお願い」
「ハイなんだナー……。ロード・プリンセス・ターミナル前魔法学園訓示なんだナー!!!!」
「「「①:清くインデグネイション」」」
「「「②:優しくジェノサイド・ブレイバー」」」
「「「③:美しくワールド・デストロイヤー」」」
あ、ごめんなさい。
全然普通じゃないです。
「よろしい! 今日もみんな1日よろしくね〜( ´∀`)b」
「「「よろしくお願いしま〜す」」」
「あ、そうそう今日はみんなにひとつサプライズがあるんだけど……」
「きっと女子転校生デス!」
「きっと女子転校生やも知れぬ」
「きっと女子転校生なんだヨ!」
「きっと女子転校生なのであーる」
「きっと女子転校生なんだナー」
「具体的やなぁ〜……」
ルナーダを招んだのはついさっきの出来事である。
すったもんだ相談した結果いちおう正式に使い魔として認められた。
魔法学園という名のただの学園の存在意義とは人知れず術者がコソコソと使い魔との関係を育むのが趣旨だったりする。
え? 『魔法の練習とかしないのか?』だって?
歴史と経緯をかいつまんで説明してしまえば……。
『もう何度となく異世界転生者によって散々世界がマジやべーことになった』ので、出力を控えめに抑えようという事でこういう形に落ち着いたのさ。
はてさてそれはそれとして、
たぶん大将軍もねこもみんなネタバレでドヤ顔したい年頃なんだろう。
ま、定期的に使い魔のお披露目は数少ない魔法学園恒例の風物詩だったりする。
そうこうしてるウチに右手に見える教室のドアがスライドして…………。
「あ、どうも〜カイン・パニシュタットと言います」
「は? 誰やねんお前、立て続けの追加キャラなんかボクも憶えられないよ」
「うふふ……ついに先生にもこんなイケメンの彼氏ができたのよ〜( ´∀`)b」
「親に言えそんなモン」
「実は前世でゴールインした運命の大魔法使いで……」
「さっき聞いた気がするわ、かえれよ」
ーー金髪碧眼の男前はかえっていった。
「あ……あの……み、みみみ皆さんはじめまして、ご主人様のしもべのルナーダ・インフェルノと言います。き、今日からこの学園に転生しますので、ふつつかものですがよろしくお願いします……!」
ーー『『『パチパチパチパチ』』』
「??????????」
「カワイイ〜! あんなカワイイ使い魔を召喚するなんてライーノくんやるねー」
「ははーん、さては彼女でも欲しかったんだなぁ〜?」
「そうなんだ〜? ライーノくんのスケベ」
「新たな称号ゲットでした! いまならオマケでおフトンがついてくるのでした!」
聖女、シイロ・アッシュルーム
勇者、ザイル・シャンバラオン
精霊、レアリィー・シエルタ
妖精、エグリタニア
魔王、大将軍
……その他。
各々が最強で、そんな彼らの暖かい拍手で祝福されて冷や汗が止まらなくなってきた。
モジモジしながらとなりの席におもむろに着席したルナーダが、俯きながら流し斬りのように視線を送ってきたのだけど、そんな彼女は『クソキャラ感がなりを潜めてる一方、それはそれでそこはかとなく気味が悪い』
「うふ、これでいつも一緒ですね。えっと、そのぅ、あの、ア〜……」
「2回も自己紹介したのに憶えてないんかい!! 化けの皮薄すぎやろ」
「あ! スケベさん!」
「言われて気がついたわ!!!! もう一個前はよ思い出せはよ」
「…………………………………カイン!!」
「名前NTRすんのヤメロソイツはもう帰ったわ、つか、いま確認したらシイロちゃんもボクの名前呼んでたくね?」