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パレード

「ステキすぎて感動しちゃった!」


 パレードは小規模ながらお花の女神様に選ばれた女性が花びらを撒いていた。女神様役は馬車に乗ってみんなに祝福の意味を込めて花びらを撒くのだそう。すごい幻想的でキレイ……。


 夢中になって見ていたら小さな女の子達がお花を配って歩いていた。


「はい、おねぇちゃんもどうぞ」

「まぁ! ありがとう。うれしいわ、大事にするね」


 女の子にお礼を言うと嬉しそうに笑ってくれた。このお花は押し花にすると良さそうね。栞にしようかな。


「そろそろ帰りますか。遅くなってはいけませんから」


 そろそろ宿屋さんに戻るみたい。


「えぇー。もっといたいのに……どうしてもダメ?」

「ダメです。わがまま言うのならもう連れてきません、そういう約束です」


 先生が先生らしい事を言った……!


「残念だけど、戻ろう」


 後ろ髪引かれる思いだったから渋々歩いていたらリューに手を引かれて歩かされた。その間もフラワーシャワーが舞っていて夢のような景色だった。


「お嬢様、はいどうぞ」

「なに?」


 振り向くと先生が花冠を頭に乗せてくれた。シロツメクサを編み込んだ花冠だった。


「似合うよ姉さま」

「わぁ。ありがとうございます。先生」

「先ほど編み方を教えて貰って作りたくなったんですよ。初めて作りましたがうまく作れました。アクセントに使った花も見事にマッチしてますね」


 サツマイモの花!?


「ねぇ、先生。サツマイモってうちでも作れる?」

「可能ですよ。気候的に問題ありませんし、あとは土かな。サツマイモのお菓子おいしかったですね。庭師と相談してみましょう。シェフも説得しないと」


 先生がぶつぶつと考え事を始めてしまった。そうなると自分の世界に入り込むから放っておくに限る。宿に着き夕食を食べてから湯浴みをしてベッドに入る。本当は泊まりの予定じゃなかったんだけど、帰りは遅くなっちゃうし安全を考慮して一泊する事になったの!


「リュー一緒に寝る?」


 楽しかったことを語らいながら寝たら幸せな気分になれるよね。


「なっ、寝るわけないだろう! バカなこと言ってないで部屋に入りなよ」

「パレードがキレイすぎて興奮して眠れないもん。お話しようよ」


 リューに部屋に押し込まれた。お話の途中なのに!


「何よ! 数年前までは一緒に寝ていたのに。領地に来てからも体が弱くて、夜咳が止まらない時は一緒にいて欲しい。って涙ながらにお願いしてくれたのになぁ」


 ぶつぶつと言いながら、部屋着に着替えていたらメイドが言った。


「おぼっちゃまはずいぶん元気になられましたね。喜ばしいことではないですか。私がお話し相手になりますよ。よろしかったら寝る前にお茶を淹れしましょうか?」


「うん、ありがとう。リューったら姉弟なのにね」

「普通、年頃の姉弟は一緒に寝ません! お嬢様が良くてもダメですからね」

「はぁい」


 それからメイドと今日のパレードについて話をしていた。すごく楽しくて中々眠れなくて早起きしちゃった。朝から晴天で気持ちのいい朝。メイドにお願いして一緒に朝の散策に付き合って貰った! 護衛もメイドも私服で目立たないように。私も町娘風のワンピースだった。


「あら、朝からお掃除をしているわ」

「昨日のフラワーシャワーですね。きれいでしたけど後片付けが大変そうですね」


 街の人を見ると皆イヤな顔ひとつしていなかった。


「すみません。私も手伝いたいのですが」

「手伝いかい? それなら教会の方に人が足りないんだ、そっちへ行って貰っていいかな?」


 教会といえばステンドグラスを見たことがあったわね。この町を見てお花を植えたいと思ったのよね。教会に着くと数人の人がいて今から片付け始めるとのことで、ほうきとちりとりを渡された。


「全くお嬢様は……」

「本当ですよ」


 メイドと護衛はぶつぶつと言いながらも私なんかより手際よく掃き掃除をしていた。一時間ほどしてふと気がつく。


「そろそろ宿に戻らないとリューや先生に怒られそうだわね」


 ほうきとちりとりを返しに行った。すると神父様に声を掛けられた。


「ありがとうございます。あなた方はこの町の人ではないのに、申し訳ありません。おかげ様でキレイになりました」

「昨日はとても楽しみました。感謝の気持ちで少しだけ掃除のお手伝いをさせてもらいました。以前こちらの教会も見学させてもらいましてこの町がとても好きになりました」


 よく見たら以前声を掛けてくださった神父様だわ! これも何かの縁かも?


「……あぁ! あの時のお嬢さんでしたか。覚えていますよ。またこの町を訪れてくれたのですね」


 覚えていてくれたみたいで嬉しいわね。でもそろそろ時間が……。


「はい。また寄らせてもらいますね。そろそろ戻らないと弟に怒られてしまいますので失礼します」


 急いで宿へ戻る。案の定リューに怒られた。勝手に散策に行くな。ですって。誘って欲しかったのかもしれないわね。この町を出る前にお花柄の手鏡をお土産に買った。あー楽しかった!



 ******


「ここも綺麗になったね」


「ジル様、お疲れでしょうに見回りですか?」


 教会もキレイになったな。朝早くの清掃はとても気持ちがいい。空気もキレイだし早朝は涼しく活動がしやすい。


「フラワーシャワーは美しくていいけど片付けが大変だな。雨が降らなくて良かったよ」


 雨が降ると片付けは大変だ。花びらが地面にくっつき取れなくなる。


「はい。先ほど観光に来ていた方も掃除を手伝ってくださって……。以前いらした貴族のお嬢様だと思われる方でした。可愛らしいお嬢さんでしたから覚えていませんか?」


 ……昨日パレードに来ていた子はやはりあの子だったのか! すごく楽しんでいる様子だった。バルコニーから見ていたから確信はなかった。くそ。もっと早く教会に来るべきだった。


ありがとうございます。


挿絵(By みてみん)

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