二年が経った
オフィーリアは14歳になった。
「姉様待ってよ!」
「こっちこっち!」
はぁはぁと息を整えるアンドリュー。
「はぁ、やっと追いついた……」
領地に来てから丸ニ年が経った! アンドリューの体調も良くなり、驚くほど元気になった。まだ安心は出来ないけれど食事の量も増えたし顔色も良いの。
お医者様が言うには王都は埃っぽくて、元々気管支の弱いアンドリューには辛い環境だったみたい。空気の良さって健康に繋がるんだとつくづく思ったし、領地って他の貴族の目もないから楽なんだわ! ストレスフリーよ。
そんな中でも遊んでばかりはいられなくて領地に着いてからすぐに教師が呼ばれてアンドリューと共に学んだ。アンドリューは身体が弱かったから本を読むことが多くて、私よりも二つ年下なのに授業についてこれるほど優秀なの!
私の点数はと言うと……
「上の下と言った感じですね。良くてAクラスに入れると思います」
教師が言った。Aクラスといっても一学年では関係なくて二学年になってからなんだけどね。一学年のうちはいろんな人と交流を持つためクラスは成績順ではない。
「Aクラスで下位にいるかBクラスで上位になるかどっちがいいと思う?」
難しい選択だわ。これを間違えると学園生活は厳しくなるわよ……アンドリューはAクラス確定だろうけど、私は凡人だもの……。
「もう少し努力してAクラスの下の上にいた方がいいと思うよ」
そう言う考えもあるのね! 下の上って考えるともう少し頑張れそうな気がする。アンドリューさすが賢い。
「分かった……頑張る!」
アンドリューは元気になってからは剣術まで習うようになった。ひ弱である事にコンプレックスを抱いているみたい。まさか走って私に追いつくようになるなんて。健康って大事ね。
「ここで何するの?」
「ピクニック! もうすぐ昼食を届けてもらえるの」
緩やかな流れのきれいな川のほとりだった。
「先に言ってよ! それなら植物図鑑を持ってくればよかった」
「また来れば良いでしょう? それよりも」
「ちょ。ちょっと何してるの! 人に見られたらどうするのさ」
タイツをガーターから外して足を出した。
「誰もいないもん」
そう言って川の水に足をつけた。
「気持ちいい……リューも足つかったら?」
「いや、僕はいい……」
と言って目線をあさっての方向にやる。
「なんでよ! 一人じゃ楽しくないわよ。ちゃんとタオルも持ってきているわよ」
「僕は見張っているから、姉さまは好きにしてて……」
せめてこっちを見て話したらどうなのよ! と思ったけれど、喧嘩するつもりはないからやめた。
「見張りなんていいのに。誰も来ないわよ」
ちゃぷちゃぷと足を上下に浸からせている。もう少しスカートを上げないと濡れちゃうわね。シミになると怒られちゃう。
空を見ながらちゃぷちゃぷと足を浸からせていると、人が近づく音が聞こえてきた。メイドたちが食事を持って来てくれたのでしょう。おなかがすいてきた!
「そろそろ上がって……ってなんて格好をしてるの! 姉さまは一応伯爵令嬢だよ! 足を丸出しにして……姉さまは露出狂なのか!」
露出狂って……少し太ももが見え隠れするくらいで大袈裟な……12歳に怒られる14歳って……
「姉さまはあと一年もしたら貴族学園に通って大人の仲間入りになるんだよ? こんな姿見られたら嫁の貰い手が無くなるんだからね!」
「……大袈裟ね、とにかくみんなが来るまでにタイツを履くからリューは見張ってて! それとも私がタイツを履くところ見ていたいの?」
と言うと顔を赤くさせて後ろを向いた。アンドリューはしっかりとしてきたわね。こんなに口うるさくなるとは思わなかったけれど元気になってよかった。それから木陰で昼食タイムとなった。それにしても青空の下で摂る食事は良いわね。
「ねぇ、帰りは町に寄っていかない?」
「いいけど、また買い食い?」
失礼な弟め!
「みんながどんな顔をして生活しているか見たいの。楽しそうに生活をしていると良いなって思って」
町に花を増やしたいと両親に言ったら、反対はされなかったけど難しいことだって言われた。生活もままならない人が中にはいるから余裕がないと反対されるかもしれないって。でも悪いことではないし、町の美観にも繋がるから数年計画になった。
庭師に相談して、今年咲いて来年また使い回しできるような花を選ぶ。春にはチューリップ、夏にはグラジオラスなど球根が増えてお金がかからなく、目を楽しませてくれるものを中心に……それと勝手に増えるだろうハーブも植えた。
ハーブに関しては大成功ですくすくと育って花を咲かせる種類もあるし、お茶でも楽しめたり料理にも使えると領民に人気。目下の野望はハーブ園を作りたい。そしてそのハーブでいろんな物を作りたい。ステンドグラスが美しい町には敵わないけれど、うちの領地も中々きれいに清掃されているわよね!
「あ、ゴミ……」
「……姉様、素手でゴミを拾うのやめてくれ」
「だって、町が綺麗だと気持ちがいいじゃないの! みんなだって綺麗にしてくれているし、私も協力したいのよ」
でも素手でゴミを拾っちゃダメよね。気をつけます。
「気持ちはわかるけど早く帰ろう。ピアノの練習あるだろう? サボるとまた手が動かなくなるよ」
「そうね、しっかりした弟がいて安心だわ。ミルクジェラート食べてから帰ろ」
「……また食べるのか。いいけど」
またって失礼ね! 少し歩いたからいいの!