ちょっと待った!
~ハリー視点~
は? 今なんて言った?
「あらぁ。オフィーリアちゃんったらやっぱりロワール子息と婚約するのね! 仲睦まじい感が出てたもの」
「家柄も、年齢もちょうど良いし、ビジネスでも良好な間柄なんだろう。オフィーリアちゃんが娘になってくれたら嬉しかったのにな。残念だが、喜ばしいことだ。あとでお祝いの言葉をかけに行こうか」
オフィーリアは俺のことが好き(だったはず)だ!
「カルメル伯爵、ご招待頂きありがとうございます。素晴らしい飾り付けですね。令嬢がいる家は華やかでいいですな。それと婚約おめでとうございます。オフィーリアちゃんももうそんな歳になったのですね」
オフィーリアの父親に父が話しかけていた。
「ありがとうございます。親から見るとまだ子供ですよ。婚約もしたことですから落ち着いてくれればいいんですけれど、のんびりしすぎてロワール家に迷惑が掛からないかと心配していますよ」
「オフィーリアちゃんが幸せそうで本当にお似合いですわね。サツマイモも人気急上昇で安泰ですわね。羨ましいですわ」
なんて話をしていた。
「ハリー君も楽しんでいってね」
「あ、はい」
楽しめるかっ! くそ、オフィーリアめ、何を考えているんだ! オフィーリアを探しているとアンドリューの姿を見つけた。
「やぁ、アンドリュー久しぶりだな。元気そうだけど具合はいいのか?!」
健康そうに見える肌艶、身長も伸びていて弱々しくオフィーリアの影に隠れていた昔のアンドリューの姿とは違った。
「これはこれは、ハリー殿ではないですか。お久しぶりです」
行儀良く頭を下げるアンドリュー。成長したな……
「見違えたぞ。領地の空気が肌に合っていたんだな」
「えぇ。おかげさまですっかり良くなりました。ハリー殿、本日は姉の誕生日と婚約発表会にお越しいただきありがとうございました。ハリー殿は変わらず男前ですが婚約者殿はいらっしゃらないのですか?」
昔はびくびくしながら俺と話していたのだが今は対等だと思っているのか? オフィーリアの金魚のフンのくせに。
「ははっ。残念ながら婚約者はいないんだ。幼い時に結婚を約束した子がいるからな」
「そういった令嬢がおられたんですね。さすがハリー殿です。良かったら姉に祝福の言葉でもかけてやってください。それでは僕はそろそろ失礼します」
「あぁ、呼び止めて悪かったな」
アンドリューとでは話にならないと思った俺はオフィーリアを探す。婚約したばかりで破棄させるのは世間体が良くないな……傷心したオフィーリアの心に寄り添うのが幼馴染としてベストだな。まずは様子を伺うか。会場の皆に声をかけている。もうすぐ俺にも声をかけてくるだろう。余裕のある態度で迎えてやろうか。
「グレイブス子爵・夫人・ご子息まで足を運んで頂き有難うございます。ジルベルト様のことは夫人とご子息はご存知だと思いますけれど子爵とは初めてですよね?」
オフィーリアとジルベルトが家族が揃った時に挨拶にやってきた。
「夫人とは以前、義母上の友人だと紹介されました。グレイブス子爵初めまして。私はジルベルト・ロワールと申します」
おい、俺は無視か! それともう義母上と呼んでいるのか?
「初めまして。噂には聞いているよ。サツマイモビジネスの立役者なんだろう? 妻も虜になっているよ。健康食材としても注目されていて今後も楽しみだね。オフィーリア嬢の事は幼い頃から知っているから婚約者ができたとなると感慨深いよ」
「恐れ入ります。今後もどうかオフィーリア共々よろしくお願いします」
なんだかムカつくな。こいつ絶対腹黒だろ。アンドリューに似た感じがするぞ。
「ご子息も今日は来てくれてありがとう」
「ご子息って……いつも通りハリーで良いよ。誕生日か。いつかの誕生日は家族だけでしたな。あれは領地に帰る前だったか?」
「懐かしいですね。そんな昔の話を覚えていてくれたのですね」
「もちろん。それからオフィーリアと婚約の約束をしただろう?」
「……は? してませんが……どなたかとお間違いじゃないですか?」
ありがとうございました。